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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
終堕な季節☆☆
200/210

恋切

「T・Dあぶねぇぞ!」


仁に言われて慌てて頭を下げる。

俺の頭の上を銃弾が飛び、土をえぐりとった。

飛び散る土を見ながらアリルがどこにいるのかを思う。

ここにいるのは間違いない。

だけどこんなに大きく巨大なハイライトからいかにしてアリルを見つけ出すのか。

ただ宛もなく突っ込むだけでは俺が負ける。

見つからないまま終わるだろう。

戦場をくぐり抜けなんとかハイライトの建物の壁へとたどり着くことができた。


「仁、少し下がってろ」


右腕をレーザー砲へ変え壁をぶち抜いて中にはいる。

電気もつけられていない真っ暗な建物の中は戦場だと言うのに静まり返っていた。


「なー仁。

 どうやってアリル探そう……」


そこで先ほどの疑問を仁にぶつけてみたところ


「監視室だ!

監視室のカメラを使えば良い!」


そう答えてくれた。

なるほどね。

やはり天才か。

俺と仁はこそこそと隠れながら監視室へと向かう。

途中で哨戒している敵に遭遇したため後ろからこっそり殴り倒して服を奪った。

ついでにカードキーも貰っておく。


「お前帝国よりも連合の方が似合うぜ」


「冗談きついぞおい」


仁の冗談に適当に答えて先を急ぐ。

これでカメラの下を通ってもばれはしないだろう。

仁は服を着なくて良いのか聞いたところ別に必要ないらしい。

細工を施してカメラに自分の姿が映らないようになっているとか。


「俺のも作ってくれればよかったのに」


「生憎時間がなくてな。

悪い悪い」


「ちぇー。

あ、監視室分かるか?」


「んー。

一個上の階だな。

もうすぐそこだ」


腕時計型のパソコンを見ながら仁は上を指差した。

そばにある階段を登って少し行ったところが監視室のようだった。


「中は?」


こっそり扉のそばまでいって中を覗きこむ。

人はおらず、一台のロボットが作業をしているだけだった。


「おーけー、仁。

 目閉じてろ。

 眩しいから」


謝ってロボットと機器をぶち抜かないように調整しながら頭をレーザー撃ちぬく。


「流石」


「だろ」


こうして監視室を奪うと、俺はロボットをどかせて椅子に座った。


「どこにいるか分かるか?」


監視室には大量の小さなモニターが並んでおり数えてみたところだな。

横に二五の縦に八の合計二百か。

二百のモニターが目の前でチカチカしてやがる。

そのうちいくつかは壊れて砂嵐を映すだけになっているが――。

うん、こんな大量の情報の中からアリルを見つけ出すなんて………。


「いたぞ!」


俺が右から順番に見ているうちに圧倒間に仁は俺の探し物を見つけていた。


「さすがだな」


思いのほか簡単だったらしい。

仁が指差した先のモニターを見てみるが小さくてよく見えない。


「拡大出来るか?」


「任せろ」


仁がキーボードを少しいじるとアリルだけがうつっているモニターが拡大表示された。


「アリル!」


アリルの体には何本ものチューブが繋がれていた。

そのチューブはアリルの欲しく白い腕に、首に、足に。

刺さっていた。

口と鼻を覆うように酸素マスクが取り付けてある。

実際何が起こっているのかなんて知る訳もなく何をされているのかなんて理解できなかった。


「仁、この部屋どこだ!」


「五階の……研究施設だな。

 熱源反応はない。

T・D、残念だが……」


「嘘だ。

 ふざけんな!」


熱源反応がない?

アリルが死んだ?

じゃあこのチューブは何なんだよ。

アリルを治そうとしているのか。


「とにかく行ってみる!

 仁はここで待っててくれ!」


「お、おい!」


監視室から走って外へと飛び出す。

この階は二階だから、五階まで思いっきり走る。

五階になった瞬間一気に階が広くなった。

数々の部屋が沢山並んでおり、もっと確認してから来ればよかったと下唇を噛む。

扉を一枚開き中を見てみたところ少しぽかんとなった。

どうやらすべての部屋がつながっていたらしい。

冷静に状況を分析してる暇じゃない。


「アリル!」


アリルは部屋の真ん中にある水槽のようなものの中に入っていた。

これはずーっと前に見たことがある。

仁が攫われたときだったか、記憶はすごく薄いが博士が一人いて。

博士が自分にESSPX細胞を注入して。

違う、その前だ。

確かその時――いや。

これは仁があの時入っていた水槽なんじゃないか。

頭の中がさーっと冷たくなったような気がした。


「おい!

 アリル!」


水槽に駆け寄って中を覗き込む。

チューブが邪魔だ。

引っぺがし、アリルを水槽から引きずり出そうとする。

水槽のガラスを割り、中にたまっていた液体を全て流し出した。

それからアリルの顔にくっついている酸素マスクを引っぺがす。

と、ここまでやって気が付いた。

アリルが裸なんですが。

慌てて、上を脱いでアリルに着せてやる。


「おい!

 大丈夫か、おい!」


アリルの体を揺さぶり、安否を確かめる。

しばらくゆすっても起きない。


「頼むよ……。

 起きてくれよ」


一人は嫌だよ。

チューブがくっついていたところが赤くなっており白い肌に傷を残していた。

何勝手にやってやがるんだ畜生が。

人の女に。

怒りがこみ上げる。

胸の底から憎悪がこみ上げ、止まらなかった。

この研究所を全て消し飛ばしてやる。

連合も許さない。


「ん……う……」


「アリル!」


「はの……くん?」


アリルの目が少し開いて俺を見つけると、はっきりと定まった焦点が俺の瞳の中を見つめてきた。


「そうだぞ。

 助けに来たんだ。

 もう安心しろ」


「――げて」


「は?」


「逃げて」


いきなり何を言っているんだこいつは。

せっかく助けに来たのに逃げるやつがいるかよ。


「ほら、一緒ににげ――」


ずきん、とした痛みが胸を通った。

咳をしたら口から赤い塊が出てきた。


「波音君!」


「…………アリル?」


アリルを離すことなく自分の胸に目をやる。

金属の色をしたナイフが胸から伸びており、その先はアリルの右腕にまでつながっていた。

アリルに、刺されたのか、俺。

一、二歩後ろに下がってもう一度せき込む。


「いやぁあ!

 波音君!」


「なん――これ」


ナイフを抜き去ったアリルの目が紫色に変わってゆく。

俺を好きと言ってくれた、あの目が。

最終兵器と同じ、紫色に。

全てを悟った。

連合群が彼女に何をしたのかを。


「波音君!

 波音君っ!」


普通の人間ならばここで死んでいただろう。

だが、俺は最終兵器。

気絶することも許されない。

最終兵器の再生能力ですぐに痛みは和らいでいくがそれでも理解できない心は痛み続けていた。


「波音君――はの……」


「大丈夫……大丈夫だから……」


アリルは俺の名前を呼んでいたが突然、頭を垂れ動かなくなった。


「アリル!?」


おい。

何だよ。

今度は用心するためにイージスを張りながら近づく。

アリルの側に近づき、顔を覗きこんだ。


「アリル……?」


その瞬間アリルの瞳が開いた。

瞳の色は青じゃない。

紫。


「波音君……。

 助けて――」


瞳から涙が一滴零れたかと思うとアリルが俺に襲いかかってきた。

その手は赤く熱を放つブレードのようになっておりそれが両腕で俺に向かってきている。


「っち!」


俺も手を刃に変え右手で両腕の力を受け止めた。

右にアリルの刃を弾きいつもの癖でそのまま首を削ぎ落しそうになって慌てて自分で制止する。

その隙にアリルに思いっきり懐に攻め込まれ軍服のネクタイを切られた。

イージスを張りつつ、引き続きアリルの攻撃をいなす。

これがアリルの意思とは思えない。

きっと――。


「T・D!

 こっちだ!」


仁の声が聞こえ、アリルの攻撃を避けたついでに仁を探す。

扉の方で手を振っている。

アリルの攻撃を避けた拍子に手のブレードが機材に当たり機材を丸ごと断ち切る。


「地下にこのまま向かうんだ!

 地下にアリルを操ってる機械がある!

 AIだ!」


「よっしゃおらぁ!

 仁、案内してくれ!

 アリルは俺が抑える!」






               This story continues.


ありがとうございます。

祝・200話です。

何気長いけどこれだけ続けてこれたのはみなさんのおかげです。

深く感謝するとともにもうすぐ終わるこのお話を。

最後までお楽しみください。


では。

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