表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
思出の季節☆
192/210

誘拐

燃え盛る一台の車を眺めつつ、ブレーキを踏む。

アリルにここから動くな、とだけ言って俺は車を降りた。

夜の闇に燃える一台の車ともう一台、運転手だけを殺した車がある。

その車の近くまで歩いていく。


「マークとかがあったら楽なんだけどなぁ」


車の前まで行くととりあえず運転席のドアを開けた。

ドアにもたれ掛かっていた運転手の冷たい体が倒れてくる。

ブレーキを踏んでいる方の足をブレーキから外さないようにしながらギアをパーキングにいれ、サイドブレーキを引いた。

死体を仰向けにして紋章か何かを探すが完全にパーカーで、私服のために何も見つからない。

車の中からなんか文書とか見つからねぇかな。

運転席から離れて後部座席のドアを開ける。

何丁かの銃と傘が座席の下に落ちていて、空になったお菓子の袋には使用済みのティッシュが詰められていた。

手がかりっぽい手がかりは無し。

参ったな。

体を後部座席から引っこ抜こうとしたとき


「っああああ!!」


俺の後ろから鉄の棒を持った男が襲い掛かってきた。

イージスの展開も間に合わず背中を鋭い痛みが突き抜ける。


「この!

このやろぉ!!」


また振り上げられた鉄の棒が振り下ろされるよりも前に体を捻って座席の下に逃げ込むと同時に体を反転させ、足を曲げる。


「っうぁぁぁぁあ!」


俺を外した鉄の棒は座席の椅子を叩きほこりがわっと、舞い上がる。

そのほこりに乗じて俺は相手が振り下ろした反動で膠着する一瞬を狙って思いっきり足の裏で相手を蹴飛ばした。


「あぶねぇだろうがこのやろー!」


吹っ飛んでいった相手を捕まえて首を掴み、持ち上げる。

当然、殺しては意味がないために力を抜きつつだ。

相手は自分が俺みたいな子供に持ち上げられてるのが理解できないらしい。

目を白黒させて口から泡を吹いている。

そして俺が掴んでいる手をしきりに攻撃してくる。


「がっ、あっ……」


段々相手の顔がどす黒くなっていき抵抗が緩くなってゆく。

そうしたところで俺は手を離し、相手を地面に落とした。


「がっ、がっは、げほっげほっ!」


せき込む相手の手足を車から引っ張り出してきた縄で縛り地面に転がす。

冷たいアスファルトの上で空を見上げる形になった相手の視界に俺の顔がにゅっと生えただろう。


「うわぁあ!」


悲鳴を上げると相手は手で顔を覆うとしたらしい。

だけども手は縄で縛られているから結果ビクンビクンと地面で這いずり回るだけとなりましたとさ。


「おい」


俺は男に話しかけると地面によいしょ、と座った。

どこから来たのかを聞きたいからな。


「うゎあああ!!!」


「うるせぇ黙れ!」


男は俺の顔を見て恐怖し、奥歯と奥歯をカチカチならせて震えている。

こっちが見ててすがすがしくなるほどの怯えっぷりだ。

楽しい。


「なぁ、おい。

 お主どこの軍隊に所属してる?

 帝国?連合?」


率直に聞いてやるぜ。

どっから来たのかさっさと答えろ。

変に痛めつけるというか、こう、拷問とかはしたくない。

心が痛む。


「うあっ、ひぃっ……」


答えようと口を開くものの、男の喉から出てくるのは怯えた声だけだった。

少しいらっとする。

こっちは、お主のせいで彼女とのデートを邪魔されてるわけなんですよ。

早く答えてくださいませんかね。


「はよー。

 答えてくれ頼むよ」


「あ、ああ……れ、れ……」


「れ?」


「れんこん!」


「………………」


OK、死にたいらしい。

この状況でその言葉が吐けるってことはまだまだ余裕があるってことだよな。

片方の腕ぐらい行っても大丈夫だろこれ。

男の片方の腕を掴むと力を込め、ギリギリッ、と締め上げる。


「いだいだいだいだいだい!!」


「はよ言えや!」


「言う言う!!

 連合だよ!!

 連合です!!

 今回はアリル嬢を攫えって任務だったんです!!

 痛い!!

 早く離して!!!

 早く!!!!!」


「お疲れ様」


俺は手を離してやるとそのまま車の中に縛ったままの男を放り込む。


「おい!!

 ほどけよこれ!!」


さてと。

とりあえずシンファクシにはこのことを説明しておかないと。

俺が再び自分の車に乗り込もうとしたとき俺の車が急発進した。


「っ!?」


助手席を見るとアリル。

運転席には別の男が。

あいつ以外にも他のやつがいたのか、クソ!


「待てこら!」


最終兵器から逃げれると思うなよ!

走り出して追いつこうとしたとき顔を横から思いっきり殴られた。


「!?」


「ほどいていってくれたっていいじゃなーい?」


「――てめぇ!」


次の瞬間腹にキツイ蹴りを一発喰らって俺の体が山肌に打ちつけられる。

鈍い痛みが鉄棒とは比にならないぐらいにこみ上げてきて思わずうめき声をあげてしまった。


「おりゃああ!!」


男はそういいながら岩肌にいる俺に向かって突き飛んでくる。

俺は冷静にイージスを展開して相手を防ぐ。


「……へっ」


笑った、だと?


「それで?

 勝った?

 つもり?」


そういうと男は右手を俺のイージスの幕に突き刺した。

突如、強い発光。

そして、男の右手がぬるりと俺の喉元にまで伸びてきた。


「なっ、はっ!?」


「あんたの姉貴の技。

 おぼえてないのかしら?」


ラウナの……。

あのクソ姉貴ぃ――。

ほんとろくなことしねぇあのクソ野郎だけは本当にもう。


「ほら。

 あんた死ぬのよ?」


その言葉を聞いて背筋がぞくっとした。

ここで俺が死ぬ――。

いや。


「死んでたまるかよ!」


俺は男がイージスに手を挟まれているのを確認するとそのまま男を山肌へと叩きつけた。

体を起こし、アリルの乗る車が向かって行った方を追いかける。

頼む、まだだ。

まだそこにいるんだろ。


「まーちなさいってばぁ!!」


「邪魔だ!」


相手が伸ばしてきた足を掴んで地面に頭から突き落とす。

コンクリートにめり込む寸前、相手は体勢を立て直すと今度は俺の胸元を掴む。


「駄目よ。

 あんたはあっちにはいかせれないの」


「どけ。

 死にたいのか」


どす黒い声で相手を威嚇するばあいつは全然こわくないわーといった顔だ。

そりゃ怖くないだろうにふざけやんな。


「ほら。

 あんたのかわいい彼女はもう帰ってこない」


そういってあいつが指差した方には流れ星が一つ見える。

上から下へ、落ちる流れ星じゃない。

下から上へ。

つまり昇って行っている。

その向う先は連合群の本部――。


「まだ間に合うだろうが!

 だから、頼むからどいてくれ!」


「……だめ」


そういうと相手は俺をぎゅっと抱きしめてきた。

変に温もりが伝わってきて――キモい!

俺よりも大きい体のやつにしかもオカマにぎゅっとされるなんてキモすぎてやばい。

泣きそうになる。

これならやっぱり俺はセズクの方がいい。

かといってセズクの方がいいってわけじゃないけども。


「放せ!

 何するんだよホモか!?」


「うるさい。

 最後ぐらい静かにしたら?」


その言葉を聞いて俺は手足が固まり、背筋が凍るような感じがした。

えっと……。


「……さいご?」


つまりどういう……。

まさか。

いや。

嘘だろ。


「ああ、いい人生だったわ」


男はそういうと目を瞑る。

俺を抱きしめたまま。

もがいてももがいても相手の力が強くて。

それに時間もなかった。


「ちょ、おま――!」


刹那、俺の視界を真っ白な光が覆った。

そして爆音、爆風。

俺は地面が迫ってくるのを視界にとらえていたが鈍い音と共に地面に体がぶつかる鈍痛とで意識を手放した。






               This story continues.


ありがとうございました。

さー最後です。

最後の章に入ります。

長い物語のお付き合い。

本当にここまで読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ