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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
思出の季節☆
190/210

斜陽

「はーおなかいっぱいになりましたー」


「そ、そいつぁ……。

 なんとも……よかったな」


机の上に並んでいる皿の数を数える。

一、二、三……。

全部で一四枚。

このうち三枚が俺。

残りがアリルさんだ。

食べ過ぎぃ。


「ふー久しぶりにこんなに食べました……。

 やっぱりレストランで食べるとおいしいですねぇ」


なんていえばいいんだこれ。

とりあえずお会計をしてまた次のデートスポットへ行くしかない。


「じゃあ、アリルは車戻っといてくれ。

 俺はお金払ってからいくから……」


「え、自分で食べた分ぐらい自分で出しますよ……?」


「いやいいよ。

 うん、俺が最終兵器になる前から稼いだ貯金があるから」


「え、でも……」


「いいからきにすんな。

 はよ戻っとけ」


「…………はい」


アリルを先に車に帰してからお会計を頼む。


「お会計一万五千八百になりますー」


やる気のないレジ店員にそう言われて改めてあいつめっちゃくったな、と思ってしまったのだった。

いちまんごせんはっぴゃくて。

ステーキ六枚も食べてたらそれぐらいになるか……なるな。






「次はどこに行くんです?」


車の中でアリルが話しかけてくる。

食べ物だったらたぶんまたこいつがたくさん食べるよな。

となると……。


「買い物でも行くか?」


「ほんとですか!?

 何の買い物です?」


「お主の服とか?」


「ふ、服……ですか?」


アリルは両手をひらひらとさせた。

ん?

え、いらないのかなぁ。


「え、いらないの?」


「いや、あのそういうわけではなくて……。

 その……私お金もないですし……。

 それに、あの……」


「いいよ。

 俺が買ってやる」


「えっ、あっ、えっ?」


「俺が買ってやるよ」


「へ、あ、あのっ……えっ?」


俺はそういうわけで車を服屋さんへと向かわせた。

と言ってもナビで探したところ近隣には服屋さんがないためにデパートに自動的になったけどもな。

デパートの駐車場に車を止めた後テナントへと向かう。


「あの……本当にいいんですか?

 えっと、私お金一応一万ぐらいなら……」


「いいよ。

 今まで彼氏らしいこともしてやれてなかったんだし。

 これぐらいさせてくれ」


そういうと俺はアリルに先に店に入るように促す。

アリルは少し心配そうな顔をしたまま店の中におずおずと入っていく。


「これとかどうだ?」


俺はとりあえず手始めに店の入り口にあった綺麗なかわいい服をアリルに見せてやった。

すこしピンクが入ったかわいい女の子ものである。


「えー、もっと黒とかがいいですよー私はー 」


そう言いながらもアリルは俺の手から服を取り、自分の体に重ね合わせた。

そして首をかしげる。


「似合うと思うぜ?」


割りとな。

アリルは服をもとに戻すと他の服の物色をはじめた。

黒ね、探してみるか。

とりあえず黒いところへ行って一枚手に取ってみる。


「ふーむ……」


すこし、大人っぽいなぁ。

大人っぽすぎるか。

まるでOLが着るようなスーツである。

これはアウトだな。

そんな感じであちこちを見ているといつの間にかアリルが横に来て様子を眺めていた。


「……どした?」


「私こんなの似合いますかね……?」


そう言って心配そうに俺に渡してきたのは黒のパーカーだった。

男物に見えなくもないが大きさ的に女物なのだろう。


「着てみてや」


アリルなら似合うと思う。

そして案の定似合ってた。


「ほら、籠に入れろ」


「えっ、あの、でも……」


「いいから。

 なんか働きまくってたせいで貯金がな。

 一等地に家立てれるぐらい貯まってたからさ」


「じゃあ……甘えちゃいますよ?」


「おうよ。

 どんとこい。

 あ、でもな。

 さすがに万超えられると――」


「じゃあこれと、これと……。

 あっ、これもいいですねっ」


聞けよ!

話!

でもまぁ――。

なんていうか、こんなふうに笑ってる顔もあんまり見ないしな。

というか。

ATMだよな今の状態、俺。

いや、いいんだけども。

俺がいいって言ってるし。


「戦争中でかわいいのあまり買えなくて。

 ここにこんなにかわいいのあるならすぐに来ればよかったです!

 ああ、これもかわっいい!

 ありえないですね!!」


「おう」


買い物に対する女性のこういう誠意ってすごいよな。

よくバーゲンセールとかでハッスルする、略してハッするしてるおばさんみるけども。

あれってこうやって若い時から経験積むからなんだな……。






というわけでお会計を済ませて車に戻る。

ん?

ああ、お金ね。

それが、あんまりかからなかった。

色々籠にぽいぽい入れてたけどレジに通す前にもう一度自分で考えていた。

ほんでいるものと要らないものに分けていた。

最終的に残ったのは俺が一番初めに進めた黒い服。

あれ一枚だけだった。

なんていうか。

いい女だよな。

買い物だけで二時間ほど費やして時刻は今午後四時。

日没が始まるのは今の時期、大体午後五時だから、少しコンビニにでもよって。

おやつ買って山頂待機だな。

そんなわけで車をコンビニに走らせる。

当然支払いは俺いただきました。

ポイントカードが溜まっていくから選ぶコンビニはいつも一緒。

ちらっとレシート見たら大体八千円ぐらい貯まってた。

なんでこんなに。

まぁ、さておき。

山頂までのキツイ坂道を運転して登る。


「夕日眺めるんですか?」


「そうよ。

 俺が好きだからね。

 いやか?」


「いえ。

 私も大好きですから」


「ならよかった。

 いやならいやって言ってくれていいんだからな?」


そこで会話が切れ、運転に集中する。

五分ほど山を登ると美しい森の中、開けた場所にたどり着いた。

今日の夕焼けスポットである。

俺達のほかには誰も姿がなく、二人っきりだと言えた。


「ふーついた」


サイドブレーキを引いてギアをパーキングに入れる。

疲れた。


「…………あの時も夕日見てましたよね、私達」


「あの時ってあれか。

 初デートのときでいいんだよな」


「そうですよ。

 初デートのときです。

 あの時もこうやって――」


白い光がゆっくりと赤い色へと変わっていく。

それに従い帝国群の街もゆっくりと赤色に染まっていく。

白い建物は赤くなり、ガラスが光を反射してキラキラと輝いていた。

昼と夕方、そして夜の境目。


「一緒にいたんですよね、私達」


「…………」


俺の手の上にアリルの手が乗せられた。

一瞬ビビッて手を引きそうになってしまったが、男永久波音。

それぐらいでビビるようではいけないのだよな。


「いたな、うん」


あんときもちゅーしかけたんよね。

いや、駄目だったけども。

おっさんたちのせいで。

詩乃と遥と……。

詩乃以外全員死んじまったんだろうな……。

彩も、あの空襲の時から姿を見ない。

どこに行ったのやら。


「私達――。

 これからもこうやって出来るんですかね?」


「………………」


答えは、分からない。

俺に言われても分からんよ、そんなもの。


「波音君。

 最後の戦い……行くんですよね?」


「ああ。

 いく、行かなきゃならん」


運転席のシートを倒して夕焼けよりも天井を眺める。

アリルの手が乗っている左手が熱い。


「私としては……やっぱり……」


「ああ。

 行ってほしくないよな――。

 でもな、俺は兵器で。

 逆に言えばこの戦いさえ終われば――」


「あなたは兵器じゃない!」


突然大きな声をアリルがあげてびっくりした。

アリルの顔はシートを倒してる今右後ろしか見えないがたぶん激しい顔をしていると思う。

肩が息に合わせて上下している。


「波音君……。

 あなたは兵器じゃないんですよ……!

 私の大事な人なんです。

 そして私のことを愛してくれる数少ない人なんです」


「………………」


夕日の光が真っ赤に変わり、俺の方を振り向いたアリルの顔半分が赤く染まる。

左の目から流れていた涙が夕日を閉じ込めたようにきらめき、服の上に落ちた。


「だから――」


「…………」


アリルはがばっと俺に抱き着いてくると胸に顔を摺り寄せてくる。

俺はゆっくりと両手でアリルの頭を撫でてやる。


「だから――。

 もっと、自分を大事にしてくださいよ……」


「……うん」


沈んでゆく夕日は半分ほどまで沈んでいた。

アリルの金髪もその光に沿って色を変えてゆく。

俺の胸でなきじゃくる彼女をどうしていいのか分からず俺は頭を撫で続けることしかできなかった。






               This story continues.


ありがとうございました。

うんにゃ、なんといいますか。

先週は忙しくて更新できなんですいません。

とりあえず今週はこれでありまする。

ではでは。

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