デートですね
ほんで。
大体一時間待たされた。
正直酷いと思うんすよ。
いや、知ってる。
女性の用意がやたら長いのは知ってる。
せやけど一時間もかかるとは思わなかった。
だけど一時間待ったかいはあったと思う。
俺に向かって歩いてきたアリルは今まで見た中でも一番綺麗だった。
「お、お待たせしました!」
どうですかね?と俺に見せてくる。
すごい可愛い服装、としか言えないのが俺としてはすごい残念だ。
「むっちゃ待った」
あえて服にはなにも言わずにすごい待ってたとだけ伝える。
アリルは頭を下げると
「ごめんなさい」
と、拗ねたように言った。
やれやれすぐに拗ねるんだから。
「服似合ってんよ」
とりあえずの心からの言葉を投げる。
するとアリルはころっと打って変わってご機嫌な顔をして
「えへへ、でしょう?」
とまた俺に服を見せびらかしてきた。
いかにも女の子!といった感じの服だ。
女の子だから当然なんだけども。
あーだから、俺に服の説明をさせるんじゃないよ!
なんてーんだ、あのスカートについたふりふりのやつ。
えーと、あーフリル?
とかなんかよーわからんのよね。
要するにそういう女子っぽさが沢山詰まっているということだ。
「じゃあとりあえず行きますか」
俺はアリルに片手を差し出すとそっとウインクしてみる。
「はいっ!」
元気な返事をと共に片手に温もりを携えた手が乗っかる。
アリルの顔を見てから俺達は歩き始めた。
今回のデートコースは車で一時間ほどの所。
高い山のてっぺんだ。
その途中には色んな町がある。
とりあえず大都会なのだとりあえずここらへんは。
帝国郡の基地を基準に成り立っている町だけども。
アメーバのように広がっている町を八時間ぐらい飯食べたりして抜ける。
日が沈むそのとき俺とアリルは山のてっぺんにいる。
そして夕日をな、また眺めようという提案だ。
初めてのデートとほとんど一緒だけどあの時はピクニックだったし。
今回は違う。
食べ歩きがメインだ。
「にしても、何でいくんです?」
アリルがいい質問をした。
確かに歩いていくには大変だ。
答えよう。
「あれだよ」
帝国郡の建物から出たら外に一台、ジープが止まっていた。
機関銃もついていて一目で軍用車だと分かる仕組みである。
「え、ほ、ほんとですか……?」
「うん」
本当も本当ですよ。
この一時間俺が何もしていなかったと思ったら大間違いである。
シンファクシに頼んで一台貸してもらったのだよ。
当然運転は俺がします。
アリルはさせられない。
危ない。
事故する。
「まぁ、乗れよ」
俺はアリルの前に回ると助手席のドアを開けた。
アリルはなんか少し嬉しそうにジープに乗り込む。
スカートなどがはみ出していないのを確認してからドアを閉め俺は運転席に乗り込んだ。
キーを差し込み、捻り込む。
重いエンジン音が響くとマフラーから黒い煙が吐き出されたのが見えた。
エンジンがかかったのを確認してブレーキを踏みながらサイドブレーキを外す。
「実は私ずっと前からこれ乗ってみたかったんです!」
アリルはシートベルトを装着しながらはにかむ。
お、本当か。
なら俺は相当運がいいらしい。
普通の車とかあるって……言われたけども。
あえてこっちを選んだのは俺が乗りたかったからだ。
「ふふふ。
知ってたさ、だからこれをチョイスしたのさ」
当然嘘であり偶然の一致である。
知ったかぶりをしたかっただけである。
面白いだろう。
「さすが波音君です!
私について知らないことなんてないんじゃないですか?」
うーん、それは……。
「さすがにあると思う。
でもまぁ、分からないことはそのうちでいいからね。
のんびりと教えてくれれば」
「はいです!」
俺はアリルが頷いたのを合図にアクセルをゆっくりと踏んだ。
タコメーターの速度を表す針が動き始める。
人を跳ねないように注意せねば。
基地の道路をゆっくりと走りそのままのんびりと時速四十キロのスピードで進む。
基地のゲートを抜けてからは公道のスピードである時速六十キロまで加速。
もう十時だというのに車の数は少ない。
前に起きた連合群の襲撃による建物の損害は色濃く残っており崩れている建物も数多く見受けられた。
だが住んでいる人はみんなニコニコとしていた。
活気にあふれ、空を飛ぶ帝国群の戦闘機に手を振っている。
「波音君」
「ん?」
信号が赤になり、ブレーキを踏む。
完全に停止したとき、アリルが俺に話しかけてくる。
「最終決戦にやっぱり波音君も参加するんですよね?」
「そりゃ……するよ。
だって俺は兵器だから」
アリルは参加してほしくないのだろう。
「ですが――」
信号が青になり、この話題は終わった。
それから話すことは全く今までとは関係のないことばかり。
あえてアリルがその話題を避けているのは分かった。
俺も避けていたかった。
そんなわけでとりあえず第一の目的地、博物館にたどり着いた。
「博物館ですか。
へー波音君らしくないですね?」
「失礼な。
これでも一応俺は博識な方だと自負しているんだぜ?」
この博物館は様々なものが置いてある、とネットには書かれてあった。
どれぐらいさまざまなのがあるのか詳しくは書いていなかったが入れば分かるだろ精神で入ってみた。
「えっと……これは……」
アリルが入って一歩戸惑う。
なんだ、どうし――。
「あー。
これはいかんでしょう」
R18もいいところだ。
えっちだねぇ……の方の意味じゃない。
非常によろしくない方の意味だ。
人体の構造とかそういうのが割と生々しい。
「アリル、先に行こう。
ここはやばい」
違うところ行きましょう。
博物館の奥に進むと、今度は古代遺跡の類が沢山置いてあった。
そうそう、こういうのが欲しいんですよ俺は。
のんびりした時間が流れてゆく。
『ベルカ世界連邦帝国はかつて世界中を――』
流れるテレビの説明音声を聞きながらガラスケースの中に眠る遺跡を眺める。
と、ポケットがもぞもぞと動いた。
「に」
ひっぱり出してみるとなんだルファーである。
なんか懐かしいか、ルファー。
どうだ?
「にー」
ルファーは俺の頭の上に昇るとぽよんぽよんとそこで跳ねる。
俺の目の前に広がる遺跡たちはベルカのもの。
錆びもせず、今も機能を保ち続けているらしい。
だが、それが何なのかなんて到底分からないらしい。
超古代文明、ね。
何ともまた素晴らしいものだと思う。
博物館でしばらく色々と眺める。
帝国群の歴史、古代ベルカの歴史。
戦争による被害者。
戦争の兵器。
その兵器の所に俺の名前があった。
アリルはわざとだろうか。
俺の名前を見ないようにしていたと思う。
そんなこんなで博物館で二時間ほど会話と知識を楽しむ。
外に出るとむわっとした熱気と共にお腹が減っていたことに気が付く。
車に戻ると一気にエアコンを入れた。
暑い暑い、たまりませんわ。
やれやれである。
公道を走らせ次の目的地に行く前にどこかレストランを探さないと。
「あ、波音君!
あそこ行きましょうよ!」
アリルが指した先はファミレス。
そんなんでいいのか、と逆に俺は思ったけどアリルが予想以上にうれしそうだったからファミレスの駐車場に車を止める。
ファミレスの中はクーラーが効いていてすでに家族連れが沢山いた。
おいしそうなハンバーグの匂いでお腹がきゅっと縮こまる。
「いらっしゃいませー!
何人――あっ、これは。
帝国軍人さまでいらっしゃいましたか!」
「二名でお願いします」
「はい、ただいま。
二名、帝国軍人様招待です!」
なんか恥ずかしいなこれ。
何食べようかね。
ほっかりした椅子に座るとメニューを眺める。
「何食べる?」
「んー……。
私はハンバーグと……」
と?
「これとこれとこれとこれと……」
色々と待って。
This story continues.
ありがとうございました!
波音平気だしこれぐらいりあじゅさせてあげてください。
出ないとかわいそうかなーとか思ってますけどすげーいらいらしますなぜ。