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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
思出の季節☆
188/210

思い出づくり

夜中、ふと目が覚めた。

もぞもぞと隣でなんかが動いたからだ。

目が覚めて豆電球のオレンジの明かりと窓から入ってくる明かりとの二つで部屋の中はうっすらと見通せる。

俺の隣ね。

――ん?

隣?

おかしい。

俺はソファーの上で眠っていたはず……。

しばらく混乱して、電気の位置などからどうやら床に落ちて、そこで眠ってしまったのだと理解する。

俺案外眠り浅い方なんだけどな。

なんで目が覚めなかったんだろ。

となると隣でモゾモゾ動くやつも気になる。


「にー……」


なんだ俺のペットか。

だけどその声は机の上から聞こえる。

となると……。


「………………」


アリルかー。

なんでや、おかしいやろ。

ベットに運んだやろがい。

すやすやと気持ちよさそーに眠ってるし。

起こすに起こせないじゃねーかよ。

俺はため息を静かに吐き出すと右手でそっとアリルの髪に触ってみた。

頭を撫でてやったこともないっけ、そう言えば。

ちゅーは、あるけども……よ。

そっから先に行く気力というか、度胸はない。


「…………ん」


びっくりしてアリルの頭から手を離す。

へたれなんですわ、知ってると思うけど。

自分の彼女、つまり自分の女なんだから別にいいかなとか思うけど実行にはとても移せない系男子ですどうも。

アリルが完全に眠っているのを確認してまたそっと手を伸ばし頭を撫でる。

さらさらした髪の毛は俺のみたいに指に絡み付かない。

こうやって見ると本当に美人だな、って思う。

下心から言うとまー……。

恥ずかしいけども、胸も、うん。

そこそこあるし。

いつもアリルには愛を貰ってるが俺はアリルにあまり与えたことがないなって、思う。

デートらしいデートもしたことがない。

あれ、俺って酷くないか。


「………………」


彼氏として最低点の所に位置していると思う。

あれだ。

アリル起きたらちょっとデート連れていこう。

きれいな夕日を見せたあの時みたいなそんなのんびりしたデートにしよう。

いつも心配かけてるし……。

なんか死亡フラグビンビンに自分からたててる気がするが死ぬわけにはいかないから安心して欲しい。

そうと決まれば明日はデートと洒落こもう。

帝国郡のこの街もデートぐらい……できるよな。

アリルの頭をもう一度撫でるとそっとおでこにキスをした。

一度経験したらもうキスなんて恥ずかしくなくなるな。


「うー……」


うなされてるのかね、さっきから。

暑いのかアリルは汗をかいているようだった。

うなされてるのもあるだろう。

少し離れた方がいいよな、暑いんだろうし。

体をよじって遠くへ行こうとしたらアリルは俺の左腕を掴んでぐいっと引き寄せた。

はい、ちょっとまってねー。

むにっとやわらかいのが腕に当たっているのがよく分かる。

一瞬で頭がぽっとして、ほっぺたが熱くなる。

お、お、お、落ち着け波音。

あの、えと、ごほん。

ただの脂肪や、お腹のむにっと同じや。

腕に当たってるのはお腹だお腹。

けして胸とかじゃぁぁああああ。

落ち着け永久波音。

なんてことはない。

これは試練。

これは獣か否かを確かめるだけの罠なんだそうなんだ。

ここで惑わされてたまるものか。

いやでもこれ胸だからってぁああああ。

逆らえないなんて卑怯だくそ。

むにむにしてるな、それはわかった。

思ったよりも柔らかい。

となると欲望が湧いてくるのだ。

湯水のごとく。

今回の場合は揉んでみたい……っていうこの何とも言えないあほらしさ。


「………………」


いかんいかん。

邪念だ、邪念。

駄目駄目。

落ち着くんだ、いいか。

いくら彼氏だからってやっていいことと駄目なことがある。

それにまだ一応俺は高校一年生、いやもう二年生か。

なんだから。

アリルも高校二年生。

あれ、別にこれいいんじゃ……いやあかんって。

いいか、永久波音。

いいか。

落ち着くんだ。


「………………」


あかん、この左腕を抜かないことには落ち着けない。

というか歳の差カップルってレベルじゃないぞ俺達は。

俺の方がよく考えたら五千歳ぐらい上なんだから。

それに俺の方がふけるのが早いし……。

いやでもそんな俺でいいって言ってくれたんだから……。


「………………」


俺は歳をとらないのにアリルは歳をとるのか――。

なんかいたたまれないなぁ。

悪いことをする気がする。

いいのかな、こいつはこれで。

アリルの寝顔を見て、考える。

こいつが歳をとっていくのをひたすら見続けるのか、俺は……。

周りの人間が歳をとって。

そして死んでいく。

………………。

そっか、まじめに考えたことなかったな。

今まで考える時間なんてなかったもん。

自分が愛してる人が死んで行って……。

俺だけが生きてるのか。

そのうち、俺のことを愛してくれる人はいなくなって。

死ぬことができないままずっと生き続ける。

それが兵器ってことか。

今生きてるうちに大事にしてやらにゃなぁ……。

それをしみじみと実感する。

かぎりある命を大事にしなきゃならんってことよな。

そしてアリルが生きてるうちに思い出をたくさん残して。

俺を愛して正解だったと、言うように思ってもらえるようにしたい。

だから。

明日は、デートに誘おう。

そんでたくさん笑ってもらおう。

一日楽しかったと思ってもらおう。

そしてまだ一言も言ってない言葉とか。

そんな言葉を言おう。

いきなりだけど驚かれないかな。

ちゃんと一緒に行ってくれるかな……。






「んー……」


朝。

俺はアリルよりも早く目を覚ました。

時計を見ると朝の七時。

軍人ならもう少し早く起きて訓練とかに励んでいるはずが俺の場合免除というこの素晴らしさ。

とりあえずこいつを起こさないとな。


「起きろ」


「んー……やー……」


やーじゃねぇ。

起きろ。


「起きろおらー」


揺さぶる。

そこまでされて起きない人はいない、おそらく。


「んぅ……んえ?

 波音、波音君?

 えっ?」


え、じゃないわ。

おはようだ。


「おはようお姫様。

 もう朝の七時ですことよ」


「嘘っ!?

 えっ、それになんで私ここに、えっ?」


「いや俺が聞きたいけどもね。

 とりあえずなんだ……そのー……」


ここで、俺はふとしたいたずらを思いついた。


「いやーアリル。

 あのな、俺な。

お主があんなに激しくするやつだと思ってなかったよ……」


少し照れながらそう言ってみた。

もちろん冗談である。

当然そういった経験はしていない。

し。

まだ俺は初めてを貫いている。


「え、ええっ!?!?

 わ、私……えっと、ええっ!?」


案の定アリルは頭の先っぽまで真っ赤になってくれた。

この反応が非常に面白くて楽しい。

すぐに本気にするからなーこいつ。


「冗談だよ、冗談。

 分かるだろうに」


そしてすぐにネタばらし。


「もー……。

 波音君ひどいですよぅ……」


アリルはむすっとふてくされるとそっぽを向く。

あー拗ねた。


「まーなんていうか。

 楽しいからついついいじめてまうんよすまんの」


「知りません。

 バカ」


「ごめんて。

 なー、今日さ、暇?」


俺はアリルの近くに行くと耳の側でそっとささやく。


「デートしない?」


とぼそっと言ってみた。


「はっ、へっ? 

 えっ? 

 で、デートですか?」


「うん、デート」


とまぁ、こんなキャラらしくないことをしたところで本当の調子になるわけもなく。

大人しくいつものキャラに戻ろう。

らしくないことをしても疲れるだけだからな。

アリルはぽかーんとした顔をしたまま首をかしげて


「デートですか?」


ともう一度繰り返した。


「デートだよ。

 うん。

 なんていうか、思い出が欲しくてな。

 それに、長いこと寂しい思いさせてるだろうし……。

 色々と話したいしな」


「わ、わかりました。

 えっと、じゃあちょっと着替えてくるので……。

 髪の毛もやりたいですし……!」


「待ってる。

 早く行って来い」






               This story continues.


ありがとうございました。

最後の章の前の一息、といったところです。

何だかんだで波音もアリルのこと愛してるんだなーって思いますね。

たぶん。

愛って素晴らしいなって思います。


では。

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