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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
救明な季節☆
180/210

救囚

「おらどうしたぁ!」


次々と襲い掛かってくる敵を食いちぎるように撃破する。

攻撃が甘いし、遅い。

それでよくモドキが務まるものだ。


「っくそ!

 この化け物どもめ!」


そう言いながらおっさんが自分の手をナイフに変えて近接戦闘を挑んでくる。

一般人からしたらお前の方がよっぽど化け物だと思うわけですがそれは。

ナイフを右に躱してひじ打ちを顔面に叩き込む。


「いいから道を開けろ!

 ただ味方を助けたいだけなんだ俺達は!」


仁が敵に呼びかけるが当然聞く耳なんて持つわけがない。

敵は我先にと次々と攻撃を加えてくる。


「俺達を裏切ったお前が一体何を言ってんだよ!

 お前のせいで俺達がこういうことになってんだぞ!」


仁の顔を張り倒すようにモドキたちのツッコミが入る。

黙り込んだ仁をフォローするようにセズクが後ろから仁を蹴り飛ばした。


「ほら、動きを止めてると死ぬよ」


彼なりの優しさなんだろう。

多分、たぶんな。

それにしても……。


「倒しても倒してもキリがないぞ!

 シエラ、メイナ、仁、ここは頼んでもいいか?」


俺は敵のレーザーをイージスで跳ね返しながら聞いた。

三人は頷くとまた戦いに戻っていく。

「セズク、行くぞ。

 ついて来てくれ」


「ハニーと一緒ならどこまでも」


「味方を助けに行くんだぞ?」


たまに思うのがお主、目的をはき違えてねーかってことだよな。

作戦に支障がないなら別にいいんだけども。

敵の隙間を見つけると俺はイージスを展開しながら目の前の壁へと突っ込んだ。

コンクリートが吹き飛び大きな穴が開く。

捕虜の場所は地下だったよな。

場所をしっかりと思い出してセズクをつれて向かう。

床に穴を開け、一つ下へ。

また穴を開けて一つ下へ。


『あーあー、少佐、聞こえるか?

 こちらヴォルニーエル。

 そろそろ救助隊をおろしても大丈夫か?』


『こちらセズク。

 まったくもって今はやめた方がいいです。

 最終兵器のモドキたちが大量に発生してまして』


『うおっ、マジか』


ジョンはそういうと無線を切ってしまった。

マジとか司令が使うなよ。

気分は最近の若者かあんたは。


「ラスト、行くぞセズク。

 上から敵が来ないかだけ見張っておいてくれ」


「分かった♪

 早いことやっちゃってね」


レーザーを構えて床へと何発も何発も放つ。

穴が開いた床が一つ下の階に落ちるととそこは地下三階。

あの人からの情報が正しければ味方達はここに収容されているはずだ。

調度俺達が落ちたのは大きな広場のような場所のど真ん中だった。

全員が同じ囚人服を身に纏っており、手足には鎖が付いている。

唯一の楽しみであるお昼ご飯時で賑わっていた空気が一瞬にして冷める。

天井を壊して降りてきた俺もセズクもここの人達からしたらそりゃ驚くわな。

食器とスプーンを持って後ずさりする人もいる中、一人のおっさんがおずおずと俺達に近づいてきた。

しげしげと眺めて俺の少佐の紋章に目をやる。


「その服……。

 あんたら、帝国郡か?」


心配そうに俺の顔をおっさんは覗いてくる。


「そうだよ」


答えた瞬間おっさんの顔つきが変わった。

嬉しそうに後ろを振り返り大声で呼びかける。


「みんな!

 シンファクシ様が!

 元帥が、助けをよこしてくれたぞ!

 これで……これで帰れる!」


歓声が広間を覆った。

俺とセズクが思わず耳を防ぐぐらいに大きな歓声だった。


「妻と子供に会えるのか……?」


「ようやくこの地獄から抜け出せるのか……!」


「両親の顔が見れる……」


「同級生は元気かなぁ……?」


さまざまな声があちこちから沸き起こり全員が手足についた鎖をものともせずにはしゃぐ。


「俺達をすぐにここから出してくれ!

 頼む!」


俺にすがるように集まってくる囚人達に見せつけるように片腕を俺はレーザーに変えた。

沸きおごると同じぐらい急に消えた歓声が静かになった地下室を跳ねまわる。


「いいよ。

 助けるから、少しだけ話を聞いてほしい。

 今からヘリを呼ぶ。

 列を整理して、並ぶようにして待つこと」


「待つのはいいけど……。

 ヘリまでどうやって?」


おっさんが不安そうに見つめる中俺はセズクと目があった。

そして静かに頷いてくる。

うん、そうだよな。

それしかないな。


「今から天井をぶち抜く。

 離れておいた方がいいと思うよ」


「!?」


驚いた表情のおっさんとその周りの人達。

ざわめきが静かに広がり、それは笑いに変わった。


「ここは三十センチの鋼鉄で覆われた牢獄だぜ?

 そんな簡単に破れるわけねぇだろ。

 そりゃ、天井をあんたは破って来たかもしれねぇがよ。

 無茶ってもんには変わりがな――」


三十センチもあるのかよ。

聞いてないですよ、元帥それは。


「それに上には土の防御壁。

 それも特大のもんが乗っかってやがる。

 それら全部吹き飛ばせるなんてありえないぜ。

 まー噂に聞くネメシエルとやらの主砲なら楽勝なんだろうけどな」


「少佐、あんたが何者かは分からないがそんなことできるわけ……」


あーうるさい。


「波音はただの兵器じゃないよ。

 あんたらはずっと地下にいたから知らないだろうけど。

 伝説の三つの死、そのうちの一人だよ、彼は」


「三つの死だ?

 おいおい、あんちゃん、何を……」


二人は言い合いを始めてしまう。

シエラから教えてもらったあれを使う時だろう。

大型ナクナニア光放出砲、だっけか。

蝶空要塞戦艦に搭載された副砲。

俺達最終兵器が放てる最強の武器。

うまいこと、撃てるといいんだけどな。

自分の中の記憶を呼び起こしシエラの姿を想像する。

大型ナクナニア光放出砲、大型ナクナニア光放出砲、大型ナクナニア光放出砲……。

自分の中での武装タレットを呼び起こしその兵器を探してゆく。

そして、見つける。

眠っていたフォルダを。


「こいつか」


ぼそりと口に出して両手を空へと掲げる。

そして目を瞑る。

何が起こっているのか、そんなもの見なくても分かる。

頭の中に浮き出てくるメーター。

おそらく、出力、安定さ。

目を閉じていてもレーダーが勝手に周りを読み込み頭の中に情報を送ってくれる。

人間離れした自分の体を、客観的に見つめなおす。

四つの砲門を抱え、背中には二つのナクナニア光加速器が付いている。

衝撃でふきとばないように足は地面をロックしているし、腰からは足だけでは足りない衝撃を吸収するためにワイヤーが地面にめり込んでいる。

この姿をみて化け物って言わない奴はそりゃいないわな。


「頭抱えてしゃがんでろ」


自分の目の前で回る七つのひし形がエネルギーを蓄え、混ぜ込んでゆく。

空間を圧縮し、プラズマを孕んだ砲門が開く。

七つのひし形、ライフリングの回転が速くなってゆく。


「行くぞ」


抱えていた暴れん坊の手を離したようなそんな感触だった。

目の前が真っ白になり、自分の体ががくんと後ろへ持っていかれる。

自分自身何が起こったのか全く理解できない、そんな光景が広がる。

そして光が去った時、天井はぽっかりと消え去っていた。


「ば、化け物……か」


誰かがその言葉を口にする。

もう否定もしない。

化け物だよ、俺は。


『少佐か!?

 一体何をしたんだ!?

 収容所の一角が消し飛んだぞ!?』


「はい、俺です。

 えっと、捕虜を見つけました。

 今すぐにヘリを送ってください。

 穴、あるでしょ?

 ヘリが同時に二機は着陸できると思います。

 では」


あとはここにいる人間が全員逃げてくれればそれで終わり。

任務は完了だ。

シエラとメイナのところに戻ろう。


「セズク、行こう」


この場の空気が痛かった。

耐えれなかった。

誰もが俺を好奇心の目で見てくるのが。

どうでもいいって思っていたはずなのに。


「ハニー……」


「いいから。

 何も言わなくていいから。

 俺がちょっと……見せすぎただけだから」


うん。

だから何も言わないでくれ。

頼むから。







               This story continues.


ありがとうございました。

化け物、ね。

厳しい一言です。


でもしかたないのかな、とか。

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