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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
救明な季節☆
179/210

救殺

「くそっ、なんでこうなるんだよ!」


遠くから声が聞こえる。

頭の中のレーダーに映っているのは敵の姿。

それもここの職員が一人で外に来ているらしい。

こんな雪の中見回っているのだろう。

殺そうと右腕のレーザー砲を向ける。


「待てよ」


自分で自分に静止を言い渡す。

ここで殺さない方がいいんじゃないか。

捕まえて捕虜の場所を聞くべきだろう。

そうと決まれば行動は早い。

空からの援護射撃が俺のすぐ横で爆発する。

ヴォルニーエルの援護は心強いけど俺に当たりそうで怖いわ。

ヘリの護衛が当初の任務だった気がするがなんか今更別にいるか、俺。

って感じである。

遠くから持ってこられたのだろうミサイル車両がその車体を凍らせながらもミサイルを発射する。

対空機銃が大空へと叩きつけられるように放たれてゆく。

光を眺めつつ、ゆっくりと職員の後ろに回り込む。

油断している職員の手足を叩き姿勢を崩すと口を押える。


「動くな」


「――っ?」


職員が気が付いた時にはもう遅い。

首筋には俺のレーザ―砲の砲門が付きつけてある。

暴れたら死んでもらう。


「いいか、あばれるな。

 動くな、静かにしろ」


「…………」


必死で頷く職員の意思に抵抗が見えないと判断したところで本題を切り出す。

場所を聞くのだ。


「今から一つ尋ねる。

 何も言わないで場所を教えろ。

 いいな」


「こ、殺さないでくれ……」


「うるさい。

 帝国群の捕虜はどこにいる。

 早く答えろ」


レーザー砲をもっと深く職員の首にめり込ませる。

早く言わねぇか、こいつは。


「い、言う!

 言うから殺さないでくれ!

 地下三階から五階だよ!

 そこにたくさん収容されて――」


「もういいぞ」


首筋を軽くたたいて気絶させる。

雪にめり込んだ職員をほったらかしにして側にそびえる建物の壁を軽く叩く。

金属でレーダーで見る限り分厚さは二十センチってところか。

シエラ達も今頃は中に突入しているのだろう。

耳についている無線で教えてあげることにする。


『捕虜は地下三階から五階らしい』


と、な。

めったに使わないけどこういう時は情報の供給が勝利に繋がるかもしれない。

一応お知らせしておくだけお知らせだ。


「いくか」


そう聞いたら地下に向かうしか道は残っていない。

さっさと行って全員連れ帰って終わりにしようぜ早いことな。

寒いし。

空から降ってくる雪はまったくもってやむ気配がない。

壁に手をつける。

そして手のひらにイージスを集中させてゆく。

やがて壁は大きく凹んだかと思うと内側へと折れ曲がるようにして壊れた。

イージスの軌道を曲げる力を破壊に利用したのだ。


「お、波音」


「仁か。

 俺のさっきの話、聞いてたか?」


壁を壊した先には仁がいて、周りに転がる人間の首と真っ赤な地面から何をしていたのかがおおらかに分かる。

殺しまくってたんだろ、要するに。

仁自身の体にも大量の血痕がついてる。

やっぱり俺の知ってる仁じゃないのかな、とか思ってしまう。


「聞いてた。

 地下だろ?

 行こうぜ」


「聞いてるならあまり殺さずに行けよ……ったく」


「まーそういうな。

 なんかかかって来たから殺しただけなんだから」


しれっと悪びれずに仁はそういう。

首根っこを掴んでやろうか、とか思ったけど俺も正直大差ないわな。


「とりあえず向かおう。

 地下の捕虜の様子が気になるからな」


「おっけ。

 あ、波音。

 サンドイッチとかいる?」


「欲しい」


お腹が減っているわけじゃないぞ、決して。

あるにこしたことはないな、と思っているだけだ。


「じゃあとって来るわ。

 少しそこで待っておけよ」


「はいはい」


そういうと仁は空を覆う巨大戦艦へと戻っていく。

前まではぞろぞろ出てきた超常兵器級たちも今はすっかりとなりをひそめている。

一番多かったのはいつだったか。

確か装置を盗み出した帰りだった気がする。

あの時は本当にダメかと思ったもんな。

何がどうなって今があるのかなんて分からんね。


「…………」


黙って空を見上げる。

暗雲からちらちらと雪が舞い降りてきて俺の肩に積る。


「波音」


ゆらっと、背中から何かの気配を感じたかと思うと後ろを振り向く。

しかもそいつは俺の名前を呼んでた。


「誰だ……?」


気配はあるのに姿がない。

何処にいる。

レーダーで周りを見渡してみても見つからない。

となると、空耳、または幻覚の類ってことか。


「波音」


いや違う。

幻覚じゃない。

というか


「セズクかよ」


「いかにも」


いかにもじゃない。

何してるんだこんなところで。


「あ、波音じゃん。

 おっすおっす」


そのセズクの後ろからメイナが飛び出してくる。

あんたら二人でなにしてんの。


「二人だけかと思った?

 僕もいるよ」


シエラもいたし。


「なにしてんだ、こんなところで全員」


不思議に思って尋ねてみる。

すると三人とも変な顔をした。


「サンドイッチとって来たよ……ってん?

 全員おそろいじゃない、どしたのこれ」


仁が手にサンドイッチを持って帰ってきた。

それがな、俺にも分からんのよ。


「え、だって波音が私達を呼んだんじゃん?」


「へ?」


メイナの言葉、少し待った。

俺がお主らを呼んだ、だって?


「呼んでないぞ?」


「えっ?」


えっ、は俺のセリフだ。

呼んでない。

俺が使った呼びかけなんて帝国郡の捕虜がいる階数ぐらいだぞ。


「じゃあ誰が……?」


ここにきて情報操作か。

嫌な予感がする。


「敵以外にいないよ。

 ハニー、周りを見てごらん?」


セズクの言葉を聞いて全員が身構える。

なるほど、そういうことか。

俺達を取り囲むのは百人をも超える勢いの最終兵器モドキたち。

少年からおっさん、少女からおばさんまで数多い。

本格的に俺達を消しにかかったらしい。

ヴォルニーエルでもこの百人を相手には出来ないだろう規模だ。


「やるしかないと、そういう感じですかね?」


メイナがめんどくさいという表情を隠そうともせずに俺に聞く。

そういう感じですね。


「やるしかない。

 ねーさん、がんばろ」


シエラがメイナの肩をぽんぽんと叩く。

どう考えてもやるしかない雰囲気である。


「一人当たり二十人でいい?」


「え、俺もモドキだから波音にプラス十人ぐらいしといてくれない?」


「なんでやねん!

 俺よりもシエラとメイナにしとけや!」


「じゃあ僕が一、ねーさんが九で」


「いやよ。

 あんたが九よ」


そこで俺からの提案なんだが。


「セズクに十でどう?」


「えっ、ちょ、ハニー」


「賛成」


「私も」


「俺も」


ということでよろしくセズク。

セズクは結構嫌そうな顔をして俺を見た。

仕方ないなぁ……。


「――やってくれたらちゅーしたる」


「よし、僕頑張るよハニー」


もちろん嘘です。

するわけありません。

逃げます。


「じゃあ、待たせたな。

 かかってこいや!」


わざわざ話し合いが終わるまで待っててくれたのもありがたい。

セズクが三十人叩き潰すってことで話が一致した。

一斉にかかって来た敵は俺達を殺すつもりのようだ。

そのためにこんなに大人数でかかって来たんだろう。

まず俺にかかって来たのは少女だった。

俺と同じぐらいの年齢だろうか。


「お願いだから死んで!」


「嫌なこった!

 アホか!」


死にたくないからな。

少女の腹を蹴り飛ばし、俺から遠ざける。

後ろから来た男の腕を掴んで地面へと叩きつける。


「ッゴフ!」


地面に叩きつけられた時男の喉からそんな声が漏れ出る。

汚い声だな。

右手からナイフを持って挑んでくる男にレーザー砲を向ける。

そして光を放つとナイフごと丸ごと蒸発した男の下半身だけが地面に横たわる。


「っと、あぶね!」


どうでもいいけど俺の放ったレーザーが仁の頭を掠めたらしい。


「波音、気をつけろ!」


「すまん」


いやーだってそんなの分からないじゃないのよ。

また挑んでくる女の子を蹴り飛ばして次の男の首をねじ切る。

返り血を浴びないようにイージスで跳ね返しつつシエラの掴んでいた女の体を思いっきり横から蹴り飛ばす。

骨が折れる感覚が足からダイレクトに伝わる。

救うために殺すってんだからよくわからんな……。






                This story continues.


ありがとうございました。

ということであります。

どういうことですか。


いくらモドキでもこんなにいたらもうどうなの、となります。

まぁいいんです。

これで。


ではでは!

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