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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
救明な季節☆
178/210

救艦

帝国郡本部を出航して二時間が経過した。

あらかた落ち着いたかと思われるが現実はそんなことない。

時速五百キロほどの巡航速度で飛行するヴォルニーエルの甲板は案の定慌ただしかった。

あちこちで今回の作戦で使うヘリの整備を点検している人間で溢れている。

元々ヴォルニーエルは戦艦で、艦載機を積む仕様にはなっていない。

そこに無理やりヘリを係留しているのだから不具合は発生してもおかしくない。

よって目を離せる時間も少ない。

整備兵は手にパンを持ち、あちこちをあわただしく走っているのだった。


「暇やね」


ぼーっとその風景を眺めてメイナがぼやく。

戦わなけりゃ俺達は暇をただ持て余すだけなのだからもっともだ。


「そうだね」


俺は適当に返事を返して俺に大きく影を落とす艦橋を見上げた。

くるくると回るレーダーと、様々な機材が取り付けられている。

元々はもっとシンプルなデザインだったのだろうが帝国郡が使えるようにするにあたってさまざまな改造を施されているに違いない。

元々で動かせるにこしたことはないんだろうけどな。

このヴォルニーエルは一人で動かせるようになっているとか聞く。


「波音、暇だね」


「そうだな」


こんな大きなの一人で動かせるとか、つまりどういうことなんだよって感じだわ。

北極大陸につくまでが暇なんだよな。

敵もくる気配が見えない。

最終兵器が三人いるって分かっているから、とか。

まー俺達に恐れをなしたんだろうな。


「敵、来ないね」


「ね」


シエラが横に来た。

こいつも暇を持て余してるんだな。

暇なんですよねぇ……。

本当に。

オイルの匂いがつーんと鼻につく。

そういえばガソリンスタンドの匂い好きだったりしない?

俺好きなんだけど。

あれ、おなか減ってるときにかぐとすごい空腹刺激されるよね。


「敵、来た?」


「来ないだろ。

 来たらヴォルニーエルの警報が鳴るって」


「だよなぁ」


そうなのだよ。

シエラの言うとおり敵が来たら警報が鳴るんだよ。

ならないんだよな。

まったくもって。

ジョンの操艦が、巧みなのだろう。

連合のレーダーを潜り抜けて潜り抜けてしてんだろうな。


「ハニー。

あれ、分かる?」


びっくりしたなあ、もう。

横にいつの間にかホモ野郎が立っていた。

太陽の光の加減で金髪がさらに擦れたような色になっている。


「あれ?」


セズクが指す方向を目を細めて眺める。

雨雲がゴロゴロと表面に雷を這わせながら立ち上っていた。

一雨来そうな天気である。


「あの雲は雪雲。

雨じゃないよ」


心でも読んだのかってぐらい正確なツッコミ入れてきたな。

雪なのかどうかとか言われても分からんよ。

それに雪雲なんてあまり聞かないしな。


「セズク……ね。

雪を溶けないように優しく包み込む風。

それには僕は一生なれないんだろうね」


いきなりどないしたの。

俺に見せさせた意味って何なの。

セズクは意味ありげにそう呟いて空を見上げる。

その横顔はすごい寂しそうだった。

とか、言うと思ったか。

何が言いたいのか分からんかったわお主。

大きな雪雲は目の前いっぱいに広がりヴォルニーエルはゆっくりと雪雲の中へ船体を沈めていっていた。

すぐに雪が空気中を舞い始める。

空気が冷え、口から吐く息が白く見える。


「…………冷たいね」


セズクが降ってきた雪を手のひらにのせてぼやく。

雪だからな。

セズクの手に取った雪はすぐに体温で溶けて水になる。

ずっと寂しそうな表情を浮かべたままセズクは降り続ける雪を眺めていた。






雪が降るようになって三時間。

ずっと全力で飛ばしていたヴォルニーエルは北極大陸にたどり着いたようだった。

予定通りの時間だ。


『野郎ども、おはよう。

 元気か?

 俺は元気だ』


放送がスピーカーから鳴り響き全艦に響き渡る。

ジョンの図太い声だ。

腹の奥から何かがこみ上げそうな感じがするわ。


『あと一時間したら敵の基地につく。

 準備はいいか?』


結局何もないままここまで来ちゃった。

何もないのに越したことはないんだけど……。

と、警報が鳴り響いた。

敵襲の警報。

短く、長く、短く、長く。

敵だな。


「暇終わり。

 行くぞ」


役目を果たさにゃならんからな。

ヴォルニーエルのレーダーと頭の中のレーダーを同期して、敵の位置を確認する。

百キロ彼方に敵の機影がある。

数は二十ほど。

ミサイルなどを吊り下げていることから攻撃機だってことが一発で分かる。

ミサイルを撃たせちゃならんのよね。


「前から一基づつ食いつぶせばいいだろ。

 行くぞ、シエラ、メイナ」


「俺もいるけどな」


いつのまにか仁もいたし。

セズクも……あれ?

セズクはいない。

何だ、相手にしなかったから拗ねてるのかね。

飛んでしばらくすると目の前に黒い粒粒が宙を飛んでいるのが見えた。

六枚の主翼に二枚の尾翼。

間違いない、連合郡の戦闘機だ。

まず戦闘を飛んでいる戦闘機に俺は掴みかかった。

ぐらりと姿勢を崩した戦闘機に取りついたまま翼に手を突き刺す。

燃料が血のように溢れ出してきて、空気中に散る。

服につかないようにして身をかわしながら主翼をぶちりと、もぎ取った。

恐怖の表情を浮かべるパイロットのガラスをかち割り、仲の人間を引きずり出す。


「パラシュートは持ってるか」


恐怖で歯をガチガチならすパイロットの首元を掴んだまま聞く。

返事がない。


「パラシュートは持ってるかどうか聞いてるんだよ」


早く答えろよ。

このまま手を離してもいいんだぞ。

いらいらさせやがる。

口を開かずにパイロットは首を盾に何度も振る。

持ってるならいい。

パイロットのパラシュートが効く高度であるのを確認するとぽいっと上に投げた。

別に、ただの気まぐれだよ。

今回は殺したい気分じゃなかっただけ。

落ちていく戦闘機をしばらく目で追うと次の戦闘機に取り掛かる。

戦闘機の先の部分を手で掴み、レーザーにした右手を向ける。

ミサイルを狙い、二発ほど放つ。

すぐに爆発したミサイルが主翼ごと戦闘機を横に弾き飛ばした。

黒煙を曳きながら高度を急激に落としていく戦闘機は下の山に落ちるのだろう。

コックピットからパイロットが飛び出すのを見届けて次に取り掛かる。

シエラも仁もメイナもいる。

あっというまに戦闘機は数を減らしていった。






それからも敵は断続的に攻撃を仕掛けてきた。

だがすべて俺達が跳ね除ける。

見事に守ってみせる。

ヴォルニーエルの周りを警戒しながら辺りを見渡す。

雪がしきりと振る雪雲の下、真っ黒にそびえる建物が見えてきた。

すごく大きな施設だ。


『まずヴォルニーエルが突入し、的抵抗勢力を叩き潰す。

 安全を確保したらヘリ部隊が降下しろ』


敵施設ではサイレンがあわただしく鳴り響き、対空砲火の砲門がこちらをに向かって弾を吐き出し始めた。

"イージス"がある以上この戦艦がやられることはないだろう。


『攻撃開始!』


ヴォルニーエルの艦底の砲台が旋回する。

砲身を敵施設へと向け、ギアの音だけが響く。

血管のように浮き出た光の線が砲塔へと取り込まれてゆく。

砲身に光るオレンジ色の光が輝きを増したかと思うと、光波共震砲の光が敵施設へと延びていった。

溶けて折れる敵施設の砲台などが開戦の合図だった。

俺はヴォルニーエルから離れると地上へと降り立つ。

この施設のどこに味方が収容されているのかを確かめなければならない。

地図とかあるとうれしいんだけどな。

ここに収容された捕虜は北極大陸に沈められた超極兵器級の一隻を探すために駆り出されるらしい。

その超極兵器級は巨大でヴォルニーエルよりもでかいんだとか。

何て名前だったかな。

ネメシエル……だったかな。

それを探すために駆り出されているのだから……。

帝国郡がヴォルニーエルを手に入れている今連合からしたら上回る力が欲しいはずだ。

だからこの施設は作られた……というのがジョンから聞いた話だ。

或のかどうか分からないネメシエルを探す連合郡の職員も乙なものだなと、思う。

まぁ、今は別にいい。


「探すか……味方」






                This story continues.


ありがとうございました!

聞いたことある人には聞いたことのあるものです。

ネメシエル、いやまさか。

怪盗にも出てくるのかな。


あの戦艦が。

いやいやいや……。

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