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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
救明な季節☆
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救声

「おい、起きろ」


朝。

目を開けるとシエラの顔が目の前にあった。

久しぶりに見た気がするわ。


「今日の任務は大変と聞く。

 手を引っ張るなよ、波音?」


手……?

手を引っ張る……ん?

ああ、足。

足ね。


「……ん。

 ねっむた……」


窓の外はまだ暗い。

体内時計的に考えるとまだ朝の五時ぐらいじゃなかろうか。

そんな早くから起こして一体何になるのかと問い詰めたいわ。

もう少し眠らせてくれよぉ。

んっとにもー。


「起きろ」


無駄だろ。

待てよ。


「始まるの十二時からだろー?

 今何時だよ。

 寝かせろよ」


布団を引っ張って頭からかぶる。

ほんとに眠いのだ。

結局、寝たのも遅かったしな。


「朝十時半。

 起きて」


シエラは表情を変えないで俺の頭を叩く。

十時半?

冗談だろ。


「カーテン閉めて寝てるからそうなる」


うっそ。

じゃあ、マジな話か。

俺は飛び起きて携帯の電源を入れた。

携帯のデジタル時計はしっかりと十の数字を刻んでいる。

その横の数字は三十二、の数字を刻んでいて並べて読むと十時半。


「うそぉおお!?」


「ほんと」


シエラがそう言ってくるのを片耳で流して洗面所に飛びついた。

んああ、やばすぎぃ。

間に合わんよ下手したらー!

最終兵器の俺が遅れたら全体の士気にもかかるやろうに。

まじかよくそぉ。

戦争に行ったら体が硝煙や血で臭くなるから前もってお風呂に入っておく。


「シエラ。 

 ちょっと出てってくれ」


「なんで」


「風呂。

 今から入るから」


「っお、え?

 あ、うん」


シエラはくるっと背を向けて俺の脱ぐところを見ないようにしながら部屋の外へと出ていく。

シエラが出て行ったのを確認すると鍵を閉め、風呂場へ行く。

ずっと前にセズクに壊された扉はとっくに直っていて、うっすらと壁に凹んだ痕が残るのみになっていた。

パジャマにしているパーカーを脱いで端に固めて置いておく。

バスタオルと、軍服がちゃんとかかっているのを確認してお風呂へ突入。

……の前に。

鏡があったからその前でマッチョポーズを決めてみる。


「ふん」


おお。


「はぁっ」


イケメン。

細マッチョ。

OK,入ろう。

多分なんだけど男に生まれたからには誰もがやると思う。

鏡の前でのムキムキポーズ。

これをやらねば男じゃないと、そう思うよ俺は。

ドアをしっかりと閉めて念のための鍵を掛ける。

バルブを捻ると頭からあっついお湯を浴びて眠気を覚ます。

排水溝に眠気が汚れたお湯と共に流れてゆく。

北極大陸だなんて、また寒いところに……。

どうせ作るなら南の島のリゾート地とかにしてくれればよかったのになぁ。

敵にはとことんやさしくない連合だ。

シャワーを浴びながら歯磨き粉のついた歯ブラシを口に突っ込む。

ミントの味が鼻を通り抜ける。

十分ほどしゃかしゃかしながら体を流すと風呂場から出てバスタオルを腰に巻く。

髪の毛がべったりとおでこにくっついてきてうっとおしい。

乾いたバスタオルをもう一枚繰り出して頭をがしがしと拭く。


「っはー!」


ドライヤーで適当に乾かして側にかけてある軍服を着込む。

肩の少佐を示す紋章を指で軽くなぞるとドアがどんどんと叩かれる。


「はいはい、今行きますよ」


どなたなのよ。

扉を開けると頭の下に揺れる金髪が一人。


「おはようございます~」


アリルさんだ。

朝から元気ですね、どないしたんですか。

なにやら幸せそうで何よりだと思う。


「私、波音君にお弁当作って来たんです。

 はいっ」


お、おべ……?

おいしそうだ。

確かに北極大陸に行くまでに弁当を食べる機会なんてたくさんある。

でもヴォルニーエルの中には食堂が……ん。

まぁいいや。


「おーいただくよ。

 ありがとう」


文句なんて言えんわな。

頑張って作ってきてくれたのだ。

それを受け取らないなんて男としてどうなんだ。


「波音君」


「ん?」


「気を付けて……くださいね?」


「わーってるよ」


アリルの頭を撫でて「いってくる」と一言かける。


「いってらっしゃいです」


そんな俺にアリルは最高の笑顔をくれた。

もう一回頭を撫でて、アリルの差し出す弁当を受け取るとヴォルニーエルの近くへと歩いて行くことにした。






海は静かに揺れていた。

潮の香りが空気と混じり、何隻かの漁船が漁に出ているのが分かる。

帝国郡本部は基地、というよりかは巨大な一つの街。

そこに住んでいる民間人も多い。

空を飛ぶ戦闘機の爆音が鼓膜を揺らす。

わいわいと、人の量が多くなり目の前に巨大な戦艦の艦橋が鎮座している。

全長一キロを超える巨大戦艦が二隻も桟橋に横に並んでいるのは圧巻というより他ない。

その二隻が挟んでいる桟橋の上に軍人がびしっと整列していた。

檀上にはシンファクシが立っていてマイクを持っている。

ヴォルニーエルの甲板を見てみるとたくさんのヘリが係留されていた。

どれもこれも大型のプロペラを二基備える帝国郡の特殊ヘリだ。


『あーあー本日は晴天なり』


突如間抜けな元帥の声が響き渡る。

ざわざわと騒いでいた兵士達は一斉に口を閉じてシンファクシの方を見た。

それだけみんなに敬われている存在なのだ。

にしてもそんな間抜けな言葉でいいのか元帥。


『いやー。

 晴れましたね』


そうですね。

すごい綺麗に晴れましたね。


『マイクテスト終わり。

 ごほん。

 諸君、おはよう』


ざっ、と全員が元帥に敬礼する。

元帥もその敬礼に答え、挨拶を続ける。


『諸君、ついにこの時が来た。

 失われた人を取り戻すのだ。

 昨日まで諸君の隣にいた人物をこの手で取り戻せ。

 今までの数々の作戦はこのためにあったのだ。

 今こそ進軍しろ、捻りつぶせ。

 そして思い出させるのだ。

 勝つのは我々は帝国郡なのだと。

 上に振り上げた拳を今こそ振り下ろす時だ。

 重厚な力を薄汚い奴らの横顔に殴りつけるのだ。

 取り戻すのだ、我々の友を。

 何としてでも。

 邪魔するなら殺せ、躊躇うな。

 殺されるなら殺してからだ。

 これは戦争ではない。

 ただ取られたものを取り返しに行くだけなのだ。

 返してもらうのだ、我々の抜かれた牙を。

一隻の超極兵器級。

 そして三人の最終兵器。

 負ける気がするか?

負けるわけがない、我々が。

三人の死は敵にとっては死だろう。

だが我々にとってはこの上ない生なのだ』


照れる。

シエラもメイナも二人して照れてる。

そこまで希望を掛けられると正直がんばろう、って思います。

それになんか元帥かっこいいです。


『いいか。

 ため込んだ力を放つのだ諸君。

 万全の力、そしてフィールド。

 すべて用意した。

 生きるも死ぬも、恨みっこなしだ。

 隣のやつの顔をよく見ておけ。

 誰一人として死んではならない。

 いいな!

 いっぱい暴れてこい!』


シンファクシはそういって檀上から降りた。

大地を震わせるような歓声が兵士達から沸き起こった。

確かにかっこよかったもん、演説。

がっしりと心に来た。

勇みよく歩き出して全員がヴォルニーエルに乗り込んでゆく。


「あ、少佐。

 やっと見つけましたよ。

 こちらをどうぞ。

 元帥からの正式指令状だそうです」


その様子を眺めていたら俺と同い年だろう子に紙を渡された。

お礼を言って受け取り中に目を通す。

俺とメイナ、シエラに、仁。

そしてセズク。

この五人のメンバーは万能の体制で何事にも対処できるようにしろ、とのこと。

了解しましたよ、元帥殿。


「波音。

 艦長室であいさつしにいこや」


くいくい、と袖がメイナに引っ張られる。

そうだな。

行くとしよう。

艦長室は飛べばすぐにたどり着く。

翼を展開して、艦長室の窓からお邪魔します。

鍵が閉められていなかったので遠慮なく入らせていただきます。

中にいたのはなんともまたごつい一人の男。


「ジョン!」


「おお、少佐か。

 それにシエラにメイナ。

 懐かしいメンツばかりだな」


いや、あんたの方が懐かしいよ。

俺はジョンの手を握ると「おひさひさ!」とあいさつを交わした。


「ん?  

 シエラ……?

 ぶふっ!」


ああ、ジョン!

こいつまだシエラが艦隊戦の後に服なくてからに色々なこと覚えてるのか!

根本的に何かしらが弱すぎるだろ!


「とにかくだ。

 うん、よろしく頼むよ」


鼻にティッシュを詰めながらジョンはにこにこと俺達を眺めるのだった。






               This story continues.


遅れてすいません!

ありがとうございました!

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