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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
救明な季節☆
175/210

救援

沈黙になった元帥に俺はもう一度言葉を投げかける。


「俺が、殺します」


仁がもし俺達を裏切るようならば。

その時が来ないことを祈るが来ない可能性はゼロとは言えない。

だから俺が責任を持って殺す。


「……そうか」


元帥はぽつりと漏らしてメガネを外す。

目頭を揉んで疲れをほぐすとシンファクシは息をほっと吐いた。


「分かった。

 お前がそういうのなら仁の復帰を認めよう。

 そう、それと仕事の話がしたい。

 あとで私の部屋にきて――」


「本当にいいんですか?」


ケツにあるセズクの手を払って元帥にそう聞く。

話を遮られた元帥は驚きもしないで静かに目を瞑った。


「いいと言っているだろう。

 あとで私の部屋に来るように。

 以上」


さっさと言葉を切ると元帥はセズクの部屋から出て行った。


「いい加減揉むのやめろバカ!」


「えーいいじゃないか♪

 減るもんじゃないことだしね♪」


「減る!」


「減らないよー」


うるさいもうこいつ。

何とかしてくれ。

減るわ。

がりがりと精神エネルギーが減っていくんだ。

毎回のように言うけどなんで男にケツを揉まれにゃならんのだよ。

がっかりした感じしか残ってないよ俺の中ではよ。


「いいから。

 もう俺ちょっと元帥のところ行くから。

 ちょ、もー!」


また引き留められたし。


「波音」


「何!?」


後ろを振り向くとすっごい笑顔のセズクが立っていた。

何だ、怖い。


「愛してる」


「はいはい」


もう行くぞ俺は。

あほらしいまったく。







「元帥。

 入ってもいいですか?」


元帥室の部屋の扉を三回ノックして叩く。

中からすぐに返事は返ってきた。


「うむ。

 入ってくれ」


では遠慮なく。

扉を開けて元帥のお部屋に入らせてもらう。

前に入った時と比べて部屋の様子は一変していた。

あちこちに書類が積み上げられて地図が広がっている。

ついさっきまで会議をしていた形跡がまだはっきりと残っていた。


「仕事の話と聞いたのですが」


元帥に椅子に座るよう言われて少し遠慮がちに椅子に腰かける。


「コーヒーでも飲むか?」


長く、なるのだろうか。


「じゃあ、あの、コーヒーを。

 砂糖とミルクたっぷりでお願いします」


「……ん?

 ああ、私が入れるのか」


「へ?」


「てっきり少佐が淹れてくれるのかと……」


ああ。

俺がコーヒーを出してどうするんですか元帥。

元帥は部屋の片隅に


「おい、メイナ―。

 いるか?」


と呼びかけた。


「んにょ、いますよー」


なんでやねん。

紙の束がバサッと跳ね除けられて中から頭が出てくる。

手にはいくつかのオヤツが握り締められており何かを与えられてここにいるんだろうな、というのがよく分かる。

黒稀銀髪がよく映える髪の毛がふりふりと揺れる。


「おお、よかった。

 コーヒーを二つ頼む」


「ほいさ」


紙の山を飛び越えて最終兵器は部屋の片隅にあるコーヒーメーカーへと駆けよる。

棚の中からコップを二つ取り出すとポットのお湯をコップへ注ぎ込みコーヒーメーカーのコーヒーを注ぎ込んでいく。

薄すぎるコーヒーになるんじゃないかなぁ、それ。


「はい、波音」


「お、おう。

 あ、砂糖とミルクたっぷり頼む」


持ってこられたコーヒーに添えられていた砂糖とミルクをとりあえず投下してスプーンでかきまわす。

真っ黒の飲み物が茶色に変色していく。


「それで、話っていうのは」


「うむ。

 実はな、つい最近連合が乱れてきた。

 一気にそろそろ蹴りをつけたいんだ」


「……はあ」


あまりにも急な話だった。

確かに最近連合は足並みが揃っていない。

要塞を落しに行ったときだって援軍があってもいいものだろう。

だが援軍どころか戦うことすら放棄した部隊もあった。


「続けても?」


「どうぞ……あちっ」


そして苦い。


「メイナ、あと砂糖四本ぐらいお願い」


「おっけー」


元帥は地図を持ってきて俺の前に置く。

赤が連合の範囲、青が帝国の範囲だな。

何度も何度も描きなおされたものらしい。

赤と青が混ざって、境界線が紫色になっている場所が多々見える。


「これが分かるな。

 見て分かる通り青が我らが帝国郡。

 赤が敵、連合郡だ。

 この戦線を維持しているものが敵にあって我が方には少ない」


「はい、波音」


メイナが手渡してきた砂糖を受け取りコーヒーにまた投下する。

三本目を入れてスプーンで混ぜる。


「何か特殊な兵器があるってことですよね?」


「そうだ」


敵にあって我が方に少ないもの。

技術とかいろいろありすぎて逆に検討が付かない。


「では少佐、問おう。

 我が帝国郡には最終兵器が三体所属している。

 にもかかわらず――。

 我々が連合を圧倒できないのはなぜだと思う?」


え。

深刻そうな表情をした元帥は俺にそう聞いてきた。

俺の考えでいいのかなぁ。


「おそらく絶対的な数が少ないんじゃないかなー……と」


「そうその通りだ」


見事に正解してしまった。

俺を指差して元帥はその通りだ、と付け加える。


「お前たち最終兵器は攻撃するのには向いている。

 だが、そこをずーっと制圧するのには不向きすぎるわけだ。

 ヴォルニーエルとマースズカエルもだ。

 単体では何の役目も果たせないことが多い」


俺の後ろにメイナがやってきて椅子の背もたれに腕を乗せる。

何か言いたそうな顔をしているが邪魔はしてこない。

俺もメイナに習っておとなしく話の続きを促す。


「だが前線から崩そうにも如何せん兵力が足りなすぎる。

 そこで、だ。

 今度はお前たちにこいつらを盗んできてほしい」


シンファクシはそういうと連合郡の施設の写真と場所を机の上に並べた。

北極大陸のほぼ中央に位置する建物。

書類には捕虜収監所、と書かれている。


「元帥、これって……」


「うむ。

 ここに捕虜になった沢山の兵士が集められている。

 こいつらを取り返したいんだ」


なるほど……。


「具体的にどの程度の兵力で攻めるんです?」


作戦プランは元帥のことだから大丈夫だろう。

収容されている兵士の数が気になるところだがここもきっと元帥が想定済みだろう。

何より俺はこの北極大陸に行くまでの過程が心配だ。

思いっきり連合郡のレーダー網をかいくぐるためだ。

俺達三人で行ってもいいのだがそうなると捕虜を運ぶことが出来ない。


「ヴォルニーエル一隻だ。

 お前たちが今回担当するのはヴォルニーエルの援護。

 敵勢力の排除だ。

 要するに目についたものすべてを破壊してくれて構わない。

 今回は場所が場所なため、ヴォルニーエルにはヘリを積む。

 四十機程度のヘリだ」


もう一枚資料をめくると輸送ヘリの資料が載っていた。

適当にぱらぱらと読み、置きなおす。


「そのヘリも守らないとダメってことですね」


「そうだ。

 できるか?

 ここに収容されている捕虜の中には大佐クラスも多い。

 全員から好かれている上司もいる。

 そいつらを取り返し、再び兵力を増強したいんだよ。

 兵力を増強したところで我々は連合郡本部へと攻め込む。

 そして一気に叩き潰す。

 本部さえやってしまえばあとは各個撃破だ。

 分かるか?」


「流れは読めました。

 了解です。

 ただ、元帥。

 気を付けてほしいのは敵の兵器……。

 仁です。

 今回俺達についてくれた仁はおそらく量産されていると思われます。

 ですから、それだけは特に気を付けるように言っておいてください。

 一般人ではかなわないと思いますから」


「……そうだな。

 作戦開始時刻は明日の昼十二時だ。

 ヴォルニーエルにて出航する。

 少佐、済まないな。

 苦労をかける」






               This story continues.


ありがとうございました。

作戦開始です。

さーてさて。

終わりが見えてきたのではないでしょうか。


ではでは!

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