表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
回帰な季節☆
172/210

これだもん。

「そもそも、だ。

 お主は一体何なんだ?」


これはもう全員の総意見じゃないかと思う。

誰もかもが思うことだ。

思わない奴はいない、と断言出来るわ。

俺を殺しにきたかと思うと助けてくれたり。

なにがしたいのかもう分からん。

それに、会ってきた仁はみんな記憶を共有してるしな。


「あー……えーと。

 すまん、それ以外で頼む」


仁は申し訳無さそうに頭をポリポリと掻いた。

これだもんよー。

肝心なところが分かりやしない。

答えたくない理由でもあるんだろう。


「えー……それはないわ」


こういう文句の一つも言いたくなる。

だって、ありえへんやろ。


「すまんて」


仁は手を合わせてごめん、と重ねる。

すまんやないわー。

本当にもう。


「じゃあ別の質問。

 何で連合潰すのがお主の新しい目標になった?

 今まで、連合の命令で動いてたんじゃないのか?」


これも気になる事の一つだ。

一体全体、なんの気まぐれなんだか。

敵サイドにいた奴が仲間になる展開なんてアニメやマンガでは多い。

でも実際のところ現実はそうはいかない。

それだけに、仁のこの行動は驚きが強い。

ここで受け入れてもまたすぐに裏切るんじゃないかっていう


「ん、簡単さ。

 連合が俺にとって都合の悪い所になった。

 本当にそれだけだ。

 まー逃げるににげれねぇのは明らかだけどな」


えらいまた軽い理由だなぁ。

案の定の不安定要素しかない帰還だ。


「都合の悪い……ねぇ」


となると仁を追ってやってくるやつも多いんじゃないか。

追跡とかそこらへんが気になってくる。


「あー追跡とか心配してる?

 そこらへんは大丈夫、ジャミングもレーダーも今は連合使えないはずだから。

 俺がちょっと細工をしてきたからな」


そこらへんは抜け目がないんだな。

流石である。


「まぁ、とりあえずだ。

 T・D、俺は帰ってきた。

 受け入れてもらえるのか?」


「まぁ……。

 俺が帰ってきてくれって言ってよ。

 ほんで、帰ってきてくれたんだからそりゃな」


「お、本当か。

 さんきゅー」


仁はお礼を俺に言うと足元にコンクリート片を蹴飛ばして俺に手を差し出してきた。

なんだ、いまさら握手か。

悪くない……けどな。

覚えてるかなぁ、仁。

俺は仁の差し出した手を握る。

変に生暖かい手の温度も紛れもない仁の物で――。

俺が殺したのにもかかわらずこうして生きてるってのもまた頭がくらくらする状況だ。

相手を裏切って来たのはまたあいまいな理由。

なら俺達を裏切るのもまたあいまいな理由。

だが、俺達を裏切ることは許さない。

許すわけにはいかない。

だから


「でも、忘れんなよ。

 今の俺には仁、お主なんてすぐに殺せるってこと。

 裏切るならすぐに殺すからな」


と、死を宣告しておく。

仁は驚いたように俺を眺めた。

何か言いたそうな表情だ。

なんだよ、気になるな。


「なんか言いたいことあるなら言えよ」


でないと俺がむしゃくしゃして仕方ないわ。

何を言うとしてるのかぐらい教えてほしいものだ。

仁は口を開くと恐る恐る俺に話しかけてくる。


「T・Dは、変わったな。

 なんてーかよ。

 お前は昔絶対に殺すなんて言わなかったし……。

 いや、冗談では言ってたけど本当に殺すという意味では言わなかったし。

 それだけにな……なんか末恐ろしいというかよ。

 そんな簡単に捨てれるもんなんだな、って思ってな」


はぁ。

まーそれは誰のせいかってのをよく考えてほしいもんだけども。

マックスからも同じこと言われたから何とも言えない。

そんなに俺は昔と比べて変わったかねぇ。

それに俺はまだ、なにも捨ててないぞ。

だからなにも変わってないと思うけど……。

マックスにも言われたという事は変わってしまったのかな。

最終兵器になる前、俺は、殺すなんて言わなかった。

それは力が伴わない殺す、はかっこわるいだけだからだ。


「はぁ……」


自分から言えって言ったくせにいざ言われると俺は何も言えなくなってしまった。

ため息しかつけなかった。


「なぁ、 T・D。

 ここってあそこだよな?

 シエラの……」


流石にこの話題を振り続けるのはまずいと感づいたらしい。

仁は話題を逸らそうとあわてた様子で俺に話の転換を求めた。

俺も俺でこの話は今したくなかったから喜んで受ける事にする。

お互いがお互いの心の地雷を探しながらさまよっているような会話だ。


「ん?

 ああ、そうさ。

 その通りだ。

 俺達の始まりの地だ。 

 全てのな」


ここから全部はじまったもんよ。

仁が行こうと誘い、俺はその誘いに乗ったのだ。

いや、それも偶然というよりかは必然だろうな、と思う。

全部仕組まれたんじゃないかなーって。

確めたいけども確かめたらそれはそれで負けな気がする。


「あの時、俺が誘わなかったらこうはならなかったのかもしれないな」


仁は俺の横に座ると空を見上げた。

俺と一緒に空でも見るのか?

ん?


「きれいな星空だなー。

 なぁ、T・D。

 俺、色々と終わりにしたいんだ、もう。

 お前をそうしちゃったのは俺だろ」


「………………」


仁は俺の横に座りながら笑う。

よく分かってるじゃねぇか。

俺の中では答えは出てるがあえて口には出さずに肯定も否定もしない。

あいまいに笑ってはぐらかすだけにする。

なんだかんだで俺も……分からんもん自分で。


「なんで黙ってんだよ。

 なぁT・D、なぁ」


「……さあ。

 是とも非とも言いたくないだけだ」


「言えよ」


「やだよ。

 アホか」


仁はため息をついてやれやれと手を挙げた。

アメリカンなしぐさをしやがってからにこいつは。

俺の横に座りながらぽつぽつになった街の明かりを眺める。

はー。

何とも言えないこの無情感。

ああ、無情。


「とりあえず、さぁ。

 帝国郡に戻ろうと思うけど……。

 お前も来るん……だよな?」


仲間になったんだもんな。

別に俺についてきてもいいけど元帥が激怒しないかどうかが心配だ。

あそこまで本部をぼろぼろにしたのは仁だしな。

下手をすれば仁は元帥に殺されかねない。


「まあ、そうなるな。

 一緒に行く、しかないわな。

 でもなー。

 正直な」


仁はそこで声を低くした。

表情は少しこわばり、体をすくめる。

何かを怖がっているのか?


「なんだ、なんか気に入らんことでもあんのか?」


「いや……セズクが怖くてな……」


元帥よりも確かにそっちの心配した方がいいな。

確かに。

仁は俺を殺す気で来たんだからそれ相応のお返しが来ると見て間違いないだろう。


「そんなの、いってみにゃ分からんからなぁ。

 とりあえず行くだけ行こうや。

 ほんで、また何か言われたら言い返せばいいだけの話だろ?」


少し嫌がる仁を連れて、俺は背中の翼を広げた。






暑苦しい空気がのどを詰まらせる。

朝日とともにあがってゆく気温にはせいげんなんてないんじゃないか、と思わせるには相応しい。

仁と話ながらのんびりと時間をかけて帰った今。

帝国群本部にはガッギスと、シエラ達が朝ご飯を用意して待ってくれていた。

そしてガッギスの横ではセズクさんがこれまたすごくいい笑顔で立っていた。

なんでいるんですか、先生。


「早いお帰りだね♪」


そしてこの笑顔である。

死にかけていたというのにもう笑えるのか。

みんな俺の顔を見て「おかえり」と言ってから横にいる人物の顔を見て顔を強張らせる。

そりゃ、みんなそうだろうな。

だって仁だもの。

この大惨劇を引き起こした張本人。

しかも誰もが俺が殺したことを知ってるから余計に驚きなのだろう。

殺した張本人と殺された張本人が並んで立ってること自体がおかしいのだ。

並んで立っていてなんでお前そんなに笑ってられるの? といった表情である。


「えーと?」


仁が一言目を発したときにまず過剰に反応したのはセズクだった。

仁に襲い掛かり馬乗りになって首元に刀を突きつける。

それは一瞬の出来事。

だれもセズクを止めることは出来ないかっただろう。

シエラとメイナですら一瞬びくっとしただけで反応出来てなかったもん。

それだけセズクの今の反応はすごいものだった。


「何しに来た?」


殺気と憎しみを前面に押し出して歯を食いしばった表情。

いつものハンサムイケメンとは大きく逸れた表情に恐怖を覚えるぐらいだった。






               This story continues.


ありがとうございました。

セズクのマジキチ顔。

見てみたいですね。

本当に、見てみたいです。


きっといい意味でイケメンなんでしょうね……。

イケメンは何してもイケメンですもの。

素敵です。


ではでは、読んでいただきありがとうございました!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ