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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
回帰な季節☆
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「……はあ。

 もう何がどうなるのか分からねぇな シエラ」


「ん?」


俺の横に立つ最終兵器は首をかしげた。

それに表情も昔と比べてかなり豊かになったように思う。


「いや、全てがだよ。

 実は俺が最終兵器でさ。

 記憶が偽りのものだとか。

 自分が何すればいいのか、とかさ」


「まぁ……そうだね。

 僕もこの遺跡が見つからなければまだここで寝てたと思うもん」


そりゃ間違いねぇわ。

俺はははん、と鼻でシエラを笑い飛ばし空を見上げた。

あの時と何もかわんねぇな。

街の明かりに薄れている星。

綺麗っていうか、すごい寂しいものだ。

何百光年も先からわざわざ来た光は誰にも見届けられないんだろうな。


「なー。

 シエラ、俺って何をするべきだと思う?」


さっき自分の心の中で決めたことがあった。

この戦争を終わらせること。

人の命を奪う怪盗になること。


「……さあ。

 僕は波音を守るって決めた。

 だからこれだけ僕は守るよ、自分の中では」


シエラはそういって俺の胸をつついた。

心臓ってことを言ってるのだろう。

俺もやり返してやりたかったがやり返すと死ぬ。

間違いなく死ぬ。


「そうか……」


決まっているんだもんな、自分の中で。

俺も……決めたから。

歪む、とかそういうことじゃない。

最終兵器に生まれたんだ俺は。

ならばその使命を全うするまでだ。


「最終兵器。

 僕達は何かを終わらせるために生きてる」


シエラは自分の入っていた遺跡を触りながら言葉を述べる。

ベルカの超光技術が枯れた模様となり遺跡の壁に張りついていた。

生きてたらシエラや、メイナの羽みたいに紫とかの光が走るのだろう。

俺はシエラの遺跡をさらりと撫でた。


「何かを終わらせるために。

 それが僕達最終兵器。

 そのための力」


こいつも俺となんやかんやで同じ風に考えてたのか。

そりゃまぁ、そうだよな。

力を与えられた理由を考えるよな。


「なんか、そういうもんか」


「うん」


シエラはにこっと笑った。

昔に比べてまぁ、よく笑うようになったな。

人間味が増したとでも言えばいいのか。


「分かんねぇようで分かるような……」


「なにかをな、波音。

 終わらせる」


それが何かっていうのはさっき自分で決めたからな。

ここからはぶれない。


「はいはい。

 ここにきてよかったのかね、俺は」


そろそろ、帰るかといった雰囲気に包まれ始める。

強いて言うなら夕方の五時に似た雰囲気だ。

寂しいけどもそれは仕方のないこと。

夜空に光る星が薄れ、東の空が明るくなってきたように思う。

もう、夜明けがくる。


「さぁ」


シエラは俺の問いに首をすくめた。

そりゃ知るわけないな。

俺が悪かったよ。

自分の家があった所に帰ってくる。

携帯で時間を見ると朝の五時を指していた。

一晩中ここにいてしまったんだぜ。

家の残骸を足で寄せてその上に座る。


「なにしてんの」


シエラが不思議だ、というような目を向けてきた。

なにしてるもなにも、なんていうか。


「休憩だよ、休憩」


「最終兵器なのに疲れるとか」


やかましいわ。

俺だって疲れるときは疲れるんだよ。

全くもう。

こいつはアホ。


「まーそういうなや。

 少しだけ待ってくれよ。

 見たいんだよ、空」


せがんだ。

偽りとはいえ生まれ故郷だ。

少しゆっくりして行きたかった。

空気がおいしいしな。


「ふー……。

 なら、僕先帰ってるよ」


シエラはやれやれといったように呆れ顔を浮かべた。

早く帰って眠りにつきたいのだろう。

疲れているに違いないからな。


「はいはい、そうしろそうしろ」


「じゃあまた後で」


台風並の暴風が顔を殴りつけると、翼を生やしたシエラは空へと一筋の光となって昇ってゆく。

そして、一瞬にして視界から消えた。

はやいな。

そんなに眠いのか。


「よっこらせつこ」


コンクリートの上に乗っかっていたゴミを払い、腰を下ろす。

ゆったりと瓦礫の上に腰掛けて空を見上げた。

穏やかな風が吹いて俺の髪がもさもさとなびく。

空は幻想的な、星と太陽の朱い光が最高に美しい時間となっていた。

夜明けの時間は俺、結構好きなんだ。

夕焼けと朝焼けって、一日の区切りの境界線だからからかなぁ。

アリルと一緒に夕焼けをみたのもそう言えばこんな空だった。

たまには会いにいってやらにゃあな。

今からも俺を好きでいてくれるなら色々と振り回すだろうから。

でもあの人のラスボス感がな、やばいよ。

俺を殺す気で来てやがるからな。

苦手とかじゃなくて純粋に尻に敷かれてる感じがすごい。

それに、なんだ。

き、キスもしたことだしよ。

余計に恥ずかしさを増すというか何というか言いにくいな。

あー恥ずかしい。

こんなロマンチックになれるのはひさしぶりだった。

それだけに……な。


「うざいんだよ」


俺を取り囲むおよそ四十の影に聞こえるような声量で零した。

びくっとしたように四十の影が持つ銃口が俺を捉える。

何だってんだ。


「T・Dだな?」


影は人間の姿となり、一人の兵士となって俺に話しかけてきた。

分かってるからこそ俺の周りにいるんだろうがお主ら。

白々しい。


「そうだよ、めんどくせぇな」


分かってんなら聞くなや。

俺は中年のおっさんを睨みつけた。

ふざけやがる。


「ここでおとなしく捕らわれてもらうわけには行かないか?」


おっさんは俺の目を見てそう述べる。

あのさ、お主らは俺をバカにしてるのか?

なぁ。


「ふざけんなよ、おっさん」


瓦礫から降りて、少し手と足を震えさせる。


「……残念だ」


お主らの人生が、残念だなと俺は思うよ。

おっさんの指がパチンとコングを鳴らした。

どこに行っても戦闘か。

もう、普通に生きるのは諦めた。

耳に響き始めた銃声よりもはやく、俺は身を伏せた。

身を伏せた勢いで近くにいた兵士の足を掴み引っ張る。

倒れてきた兵士の顔をグーで殴り飛ばす。

吹き飛んだ兵士は戦闘不能だろう。

イージスを張り、銃弾から身を守ると同時にコンクリートを包み込む。

これをあいつ等に向けて投げつけてやるのだ。

浮くコンクリートを見て、兵士たちが後ずさりする。


「それだけ高い戦闘力を持っているというのに。

……まったくもって残念だ」


あ?

あのおっさんなに言ってんだか。

呆れながら命を盗み取ろうとした時だ。

ズキン、とした痛みが腹の中を駆け巡る。

と、痛みで咳き込む。

俺の口から赤い、血が吹き出してきた。


「……へ?」


口の中に残るのは鉄の味。

本当に俺が吐血したのか……?

疑問は激痛となり帰ってきた。

ずしん、と背中でコンクリート片が落ちる。


「っ……は……!」


膝を折り、地面に顔をつける。

痛みで息ができない。

腹の奥からこみ上げる何かが口から塊となって飛び出す。

状況的にまずい、と本能が告げる。

翼を生やして空へと逃げようとする。


「――……っあ!」


背中から生えているはずの翼は、なぜか地面に転がっていた。

なにしやがった、あの野郎……!

痛みが腹と背中から攻めてくる。

最終兵器になってから感じなかった感覚。

それがずきずきと、全身の動きが止まるほどの強さで俺に噛みついてきた。

こんなに、痛みって強いのか。

殺してやる。

殺してやる、殺してやる。


「……っめぇ!」


右腕をレーザー砲に変えておっさんへと向ける。

すぐに俺の右腕が発射した光でおっさんの顔はもげて消える、はずだった。

だが。


「……へ?」


俺の右腕の先についたレーザー砲光を放たない。

それどころか強制的にどこからか引っ張られたように腕が引っ張られる。

骨が折れる鈍い音と、激痛。

息を吐くとともに口に砂が入ってきた。


「ごほっ、ごほっ――はぁ、はぁ……」


血の塊が咳と一緒に飛び出してくる。

地面にまき散らされた自分の血が視界に入ってくる。


「……やれやれ。

 無駄な抵抗をするからそうなるんだ」


「はぁ……はぁ……」


何をしてきたのかは分からない。

それでも、俺は戦意を失ってはいなかった。

おっさんが持っているものを見せつけられるまでは。


「これに見覚えがあるだろう?」


おっさんがそういって取り出したのは四角くて黒い箱。

フラッシュバックするように頭に蘇ってきたのはハイライトでのシエラ達。


「――っ!」


そんな……。






               This story continues.


ありがとうございました。

波音、まさかのこういう展開です。



いやはや。

どうするんでしょうね(おい)


ではでは!

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