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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
破壊な季節☆
167/210

浪漫砲

襲いかかってきた三人目の攻撃をぎりぎりのタイミングで避ける。

ナイフの先が俺の首があったところをかっ切る。

こっええのなんのって。

額すれすれを通った刃の切れ味はどれも一級を超えるものだろう。

俺もナイフ使えるっちゃ使えるけど銃の方が好きだからあんまりナイフは使わない。

俺の隙を突いて飛びかかってきた三人目の口に右手の銃口を突っ込む。


「動いてんじゃねぇよ、亡霊野郎!」


その言葉を吐くと同時に銃口の光をぶちかます。

首から上を消し飛ばした光はそのまま直進して壁に刺さり見えなくなる。

血が鼓動と連動して首筋から溢れる。

血の泉が俺の足元に広がる。

なんだよ……。

仁のコピーばっかり俺に当ててきやがって。

仁は連合群にやられたんだ。

俺の様々なことを知っていた仁はもういないんだ。

目の前に倒れている二つの仁も仁じゃない。

そう思っているってのに……!


「ひどい殺し方するじゃんよ。

 ちょっと前までは一緒に泥棒してたってのになぁ」


「っ……」


俺のすぐ後ろに立っていた仁の囁き。

バカにするな。

制御出来ないぐらい大きな怒りが沸き起こる。

俺の知ってる仁は……!

俺の親友は……!


「こんなやつじゃない!」


後ろに立っていた仁に蹴りをかますが避けられる。

間合いを取ったつもりなのだろう。

次に飛び込んできた仁の右腕が砲となり俺の額めがけぶっ放してくる。

右へぎりぎりの所で避け仁の腕を掴む。

自分の腕が掴まれているというのに仁は余裕の表情でこう俺に告げる。


「お前の記憶の中の仁は俺だ」


「違う」


そんなわけない。

怒りに身を任せて仁の腕を引きちぎり、肉体を床に叩きつける。

痛みに顔を歪めながらも薄笑いを浮かべた親友の顔が今は憎い。

違う。

お主は絶対に、絶対に仁じゃない。


「……ふふっ」


「笑うな!」


俺の心を見透かすように笑う親友の顔。

それは紛れもない仁で。

でも、仁じゃなくて。

そんな俺をバカにするように仁は笑っていた。


「哀れだな、お前は」  


「…………」


「哀れ、哀れだな」と繰り返しながら笑う仁の顔を吹き飛ばす。

俺の顔に返り血が付き、手にぬるっとした血の感触が残っている。

何度殺せばいい。

親友を、何回殺せばいいんだ。

なぁ。

頼む、仁。


――教えてくれ。


地面に転がっている親友の歯を踏む潰すと俺は地面にぺたんと腰を着いた。

酷い疲れが全身を蝕み、喉が水を求めていた。

頬を手で撫でる。

ぬるっとした感じがして頬に血が付く。

でも、期待していた水分は流れていなかった。


「いたぞ!

 ぶっ殺せ!」


「死ね、最終兵器!」


俺の後ろの扉から銃弾が俺目掛けて飛翔する。

仁の血でぬるつく右手を差し出すとイージスが盾を張った。

面白くもない。

重い足を使って立ち上がる。

銃弾をばらまいてくる兵士に一歩、一歩近寄る。


「うおおおおお!!」


恐怖に切り裂かれながらも撤退を許されていない兵士は雄叫びをあげて絶え間なく銃火を閃かせ通る見込みのない鉛玉を俺へと向け続けた。

それが凄く哀れに見える。


「……逃げろよ」


凝固しない、仁の血はもう俺の手のひらと同じ温度になっていた。

兵士のヘルメットを掴み、少し力を入れる。

メキメキっと鉄がひしゃげはじめる。


「た、助けてくれ!」


近くにいる別の兵士に助けを求めるが別の兵士は別の兵士で動けない。

死の恐怖に塗り固められた表情が心地よかった。

……はずだった。

突如浮かんできたのは、仁。

さっき殺した三人の仁の表情と言葉だった。


「哀れだなぁ、お前は」


空耳とは思えないはっきりとした声が俺の動きを止めた。

ヘルメットを掴んでいる兵士を離し、一言言う。


「逃げろ」


と。

最終兵器になってから思ったこともない。

でも、昔の俺なら思っていて、口にしていた言葉。


「殺したくない」


ベルカ語で兵士達にそう呼びかける。

連合の兵士達は顔を見合わせると我先にと逃げ始めた。

兵士達の乗ったエレベーターのドアが閉まるまで俺はその場から動かなかった。


「ますます亡霊じゃねぇかよ……」


そばに落ちていた瓦礫に腰を下ろし、頭を抑える。

なんなんだよもう……。

自分で命名しておいて、いざ亡霊になられるとこんなにわびしいもんだったとな。

俺は両腕を大口径光波共震砲に変える。

一つ上の階にもきっと兵士はいるのだろう。

天井に穴を開けてその中へと飛び込む。


「あら、ハニー。

 奇遇だね」


いやぁ……。

セズクは自分の右腕についた血を払いながら俺ににっこり微笑んできた。

こいつがここにいるってことはもうこの階は全滅ってことでよろしいでしょうか。


「生命反応なし。

 敵の全滅を確認……っと」


俺が作った天井の穴からメイナがおりてきた。

服はボロボロだったがかろうじて胸とデリケートゾーンは大丈夫であった。

なんでそううまいこと隠れるんかいねぇ。

神様は時にいじわるである。

前までは普通にぽろんだったじゃんよ。

神様もだいぶケチになったものだ。


「なに波音つまらなそうな顔してるの?」


俺の後ろから出てきたシエラが俺の顔を覗き込んで言う。

つまらなそうじゃない。

つまらないんだよ!


「ほんで、これいつ使う?」


シエラは俺の気持ちを完全無視してどん、と俺の前に原子爆弾を置いた。

あー、なんか使いたいって言ってたもんな。


「今使っちゃう?」


セズクはそういって原子爆弾をこんこんと叩いた。


「どっちにしろこの要塞は吹き飛ばす必要があるんでしょ?」


メイナはそういうとあくびを一つした。

まったくもって手ごたえがなかった、といった感じである。

流石最終兵器。


「そう……だわな。

 うん、たぶん吹き飛ばさにゃならんだろう。

 そっちの方がシンファクシも喜ぶんでない?」


なんか、残しとけって命令受けてた気がしないでもない。

でもまぁ別にいいだろ。

あってもどうせ変わらないんだから。


「じゃあ、僕が吹き飛ばす」


「どうぞどうぞ」


シエラが自ら吹き飛ばしたいと言ったから譲る。

こいつに任せときゃ何とかなるだろ。

生命反応がないんなら別になくてもいいよな。

仁の死体も見なくて済む。

こんな嫌なところなくなってしまえばいい。


「あー波音。

 大型ナクナニア光放出砲ってわかる?

 というか、覚えてる?」


聞いた覚えのない武装だな。

なんじゃそりゃ。


「超空要塞戦艦の副砲。

 おそらく私達最終兵器が繰り出せる最強の武装」


「とりあえず外に出ようよ♪

 そっからでも遅くはないだろう?」


長そうな説明はセズクのおかげでカットされた。

この中に人がいないならいつまでもここにいる意味はないからな。






そんなわけで外へ出てきた。

外はすでにあちこちから黒煙が立っていて硝煙のにおいと何かが焼ける匂いで充満していた。

犬を一匹つれてきたらここで倒れるんじゃなかろうか。


「波音。

 大型ナクナニア光放出砲やってみて」


やってみてって言われてもなぁ……。

とりあえず要塞の真正面に来るように立つ。


「覚えてるはず。

 これは私達最終兵器の記憶の根幹にプログラミングされたものだから。

 絶対に忘れてない」


急に言われて何とかなるもんなのかよ。

気合か?

何でもそれで通すのか?


「大型ナクナニア光放出砲……」


ぼそっと口に出してみる。

……いや、ごめん覚えてないわ。


「じゃあ僕がやる。

 見てて」


俺を見ていて煩わしく思ったらしい。

シエラは俺を押しのけるとメイナの所へ行くように指差した。

ほんと、なんかすいません。

シエラはすうっと、息を吐くと両腕をおろした。

その両腕が大きく膨らみ、やがて円柱に変わる。

シエラの両足が変わり地面にしっかりとめり込む。

肩から大きな砲身が四本突出し、シエラの肩、わきの下を通る。

四角い砲門は俺は初めて見た。

そのシャッターが開くと排熱機構なのだろう。

砲身の横が大きく開き中身が見える。

五本の小さな円が砲門の前へと展開される。

それらはゆっくりとまわり始める。


「なに、ロマン?」


「これは超空要塞戦艦に搭載された副砲。

 大型ナクナニア光放出砲の機構を最終兵器サイズにしたものだよん。

 まー私達が扱える最強の武装。

 撃つのに時間かかるし、その間なんも出来ないからめったに使わないんだけどね。

 波音も最終兵器になったらこれを知っておいた方がいいかなって。

 ずっと前からシエラは言ってたよ?」


これが……。

前に見たヴォルニーエルの主砲と何か似ている。

イージスが幕を張り、赤と青の光の筋が鼓動する。

回転する小さな円の輝きが増してゆき四角い砲門がバチバチと、プラズマを孕む。


「さようなら」


そう聞こえなかったがシエラの口はそう動いていた。

次の瞬間強い光が俺の目を付き差し劈くような轟音が鼓膜を蹴り倒していた。

全てが収まった時。

目の前には何も、何も。

今まで要塞があった場所には何もなかった。






                This story continues.


ありがとうございました。

波音が感傷に浸ってる暇もなくこれですよ。

はじめからそれ使えよって話ですよね。

まったくもってその通りだと思います。


でもすごい威力の代わりに反撃も何もできなくなりますからたぶん

シエラもメイナもこれが好きじゃないんです。


超空要塞戦艦は……そうですね。

分かる人にはわかると思われます。


では!

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