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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
破壊な季節☆
165/210

俺の必要性

「まーあれだ。

 死ぬな、終わり」


終わりかい。

それがためになんだ。

ガッギスさんあんたわざわざ俺の部屋まで乗り込んできたんですか。


「というか、シエラとメイナいないんだから意味ないでしょうが。

 呼んでこなきゃダメでしょうが」


「じゃあ僕が呼んでくるね☆

 待っててくれる?」


セズクがそういうと部屋から飛び出していく。

壊れて、扉がない部屋は本当にさびしく見える。

廊下に貯まっていた湿気が部屋の中に入ってくるし。

ここに集まるんだったら暑くなるからやめてほしい。


「分かったよ、兄さん!」


「まてや」


ガッギスさんあんた何をおっしゃった?

今セズクに向かって、兄さんと言ったんですか?


「いやそりゃだってほら。

 ね、ね?

 同じ人の魅力に気が付くだろう?

 でもその人の魅力に先に気が付いた人がいるだろう?

 先輩ってことでほら。

 兄貴だろう?」


はぁ。

まぁ……そうか。

確かに……そうなるのか。

複雑な心境を抱えたまま悩む。

なんていうか、なんていえばいい。

こういう時どんな顔をすればいいのか分からないの。


「呼んできたZE♪」


すごく微妙な空気の中、ようやくセズクさんがシエラとメイナを呼んできてくれた。

二人とも眠そうな顔をしている。

たたき起こされたからかシエラなんてまだ寝癖が直っていなかった。

その寝癖を抑えながらシエラは不機嫌そうに


「何」


俺を睨んできた。

何じゃねーんですよタコ。


「行くぞ。

 ほら、要塞に。

 壊しに」


「あー……。

 ねーさんは?」


「私?

 当然行くに決まってるでしょうに。

 行く、行きますよ。

 それに私は波音が心配だしねー」


そういうとシエラははっとした顔つきになった。


「まさか波音とねーさんそういう……?」


「ちげーよ馬鹿。

 早くガッギス挨拶してくれ。

 もう、早く行きたい。

 早く、はよ」


俺は手をほいほいと動かしてガッギスをせかした。

早くせい、はやく。


「えーっと。 

 あれだ。

 死ぬな。

 以上だ、ほら行けはよ」


何か釈然としない。

もっと映画みたいなものを期待したと思うけどこれが現実らしい。

釈然としないけども、挨拶をすまされたからにはいかなければならない。

俺はシエラとメイナをせかしてさっさと敵地に赴くことにした。

外へつながるエレベーターに乗ったまま上がるとマックスがスイッチを入れたんだろう。

勝手に上へと登って行く。


「いって目に入った砂」


そして、開いた扉から砂がぱらぱらと落ちてくる。

さーて出陣と行きますか。


「いくぞーシエラーメイナ―!」


「おー」


「行きますか」


「待ってハニー。

 ティッシュ持った?

 オヤツ持った?

 お弁当持った?

 僕の作ったお守り持った?」


「もったーじゃねぇよ!

 なんだよついてくるのかよ!」


正直ついてくるとは思ってた。

間違いないだろうと思ってたよ。

いやでもまさかさ。

本当に来るとは思わなかったんよ。

しかも小学生の遠足みたいなこと言ってるし。


「なにしてんの?

 早くいこ?」


「あれ?

 久しぶりじゃないかい、シエラ?」


「………」


シエラはそっぽを向くとセズクを通り過ぎて俺の裾を掴んだ。

くいくいと引っ張る。

はいはい、早く行こうな。


「やれやれ……。

 まだ怖がってるのかい、僕のこと」


「違う。

 気持ち悪いから寄りたくないだけ」


セズクはその言葉を聞いてもにこにこと笑っているままだった。

女の子にこれ言われたら俺凹むぞ。

三日ぐらい枕を涙で濡らすことになるぞ。


「僕は波音にだけ好かれてればそれでいいんだよ」


「…………」


シエラとセズクの会話が殺伐としている。

あれ、前に仲直りしたんじゃなかったっけか。

気のせいだったのか?

こいつら二人こんなに仲悪かったかしら。

若干険悪なムードを壊すようにメイナが口を挟む。


「まーまー。

 そーいわずに、ね?

 シエラもあんた、どうしたの。

 ほら、セズクもごめんね。

 今、こいつ眠いみたいで」


「………ん」


シエラはそういうと俺にまた早く行こうという眼遣いをした。

じゃあ、行くとするか。


「波音、おやつは……」


「いらねーってばかっ!」






しばらく飛ぶとすぐに要塞の前にたどり着くことが出来た。

鋼鉄の扉にたくさんの機銃が付いている。

むせ返るような血の匂いが風にのって漂ってきた。

地面には千を超える兵士達の死体が眠っているのだろう。

ヴォルニーエルの甲板で見たような残酷な一場面。

地面に落ちている小銃が物悲しく見える。

風が吹いて、破れた帝国郡の旗がひらひらと舞う。

崩れた戦車の砲台に錆が広がり長年行われている戦闘を象徴していた。


「……さっさと終わらせればいいんだろ?」


俺はそういって目の前に広がる鋼鉄の壁を睨みつけた。

ベルカ語で


『諦めて帰んな。

 お前らにここの攻略は不可能。

 お酒でも飲んでのんびり戦うか?』


と、煽り文句が書いてある。

嘗めてるのか。


「中にはまだ一万人ぐらいの兵士がいるね。

 完全なアーコロジーだから兵糧攻めも厳しいみたい。 

 まーそれも今日で終わり。

 全部壊して帰ろ?」


そういうとシエラは手に光を掴んで一歩を踏み出した。

と、どこからか銃声が響きシエラの髪の毛が切れて風に舞う。

スナイパーでもいるのだろう。

弾よりも銃声の方が遅かった。

相当な距離からのスナイピングと見た。


「俺から先に行くか?」


「いい。

 僕が先手切らせて」


風に消えて行った黒稀銀髪をシエラは目で追うとまた一歩踏み出した。

次は直進で殺しに来たのだろう。


「ん」


右手で弾を受け止めるとそれをぱらぱらと地面に落して見せる。

まさに最終兵器。

イージス使えよ。

そこでようやく相手が恐怖神シエラだと気が付いたらしい。

敵の要塞内で大きなサイレンが聞こえてあわただしくサーチライトなどが付き始めた。

全てのサーチライトがシエラを狙い線を超える数多くの砲門がシエラを捕えている。

すさまじいまでの殺気が要塞から溢れだし俺の体をひしひしと打っていた。

次にシエラが右手に持っていたのは戦車砲だった。

さっき朽ちていた味方だった戦車が撃つ弾。

右手の戦車砲に砲弾を込め砲門を要塞へと向ける。


「じゃあ、はじめる。

 撃つからね」


阻止するかのように何発も何発も叩き込んでくる敵の猛攻はすべてイージスが蹴散らしてしまっていた。

最終兵器が来たことにあわてる敵は要塞の中から色々と出してきた。

戦車とかヘリとか。

こりゃ並大抵の軍隊じゃ落とせないわけだわ。

バチバチ、と光を孕む右手の撃鉄が落ちた。

爆炎を後ろから吐き出して一本の光の筋となった戦車砲が要塞の装甲へとぶつかる。

鉄と鉄がぶつかり、中の爆薬が装甲をめくれ上がらせる。

通常ではありえない速度でぶつけられたためだろう。


「さーはじめよっか」


メイナは嬉しそうにシエラを超えるとこちらに向かってきている戦車の軍隊へと突き進んで行った。

その両手を大口径砲へと変えるとまず正面から来た一台に光を叩き込む。

爆発の勢いに押されるように後ろに続いてくる戦車にも光をぶち込んだ。

中の人間の悲鳴が鼓膜をつんざく。

同士討ちを恐れ、撃てない敵の間を軽々と飛躍するとメイナは次々と戦車へと死を振りまく。

戦闘神メイナの名前に負けない本気の戦い。

制圧のために空から戦闘ヘリが埋め尽くさんばかりにやってくる。

次は俺のターンかな。

俺が飛び出そうとしたとき、俺の上を飛び越えていくやつがいた。

あいつだ、セズク。


「まー波音は少し見てなって♪」


いや、やらせろよ。

セズクはシエラとメイナの戦いを見て我慢できなくなっていたんだと思う。

にやっと意地の悪い笑いを口元に張り付けて空へと飛ぶ。

右手はいつもの刀。

飛ぶヘリのローターへと刀を突きたて羽を切り落としていく。

飛ぶ力を無くしたヘリの本体が始めた落下を邪魔するように帯の部分を掴みとり次のヘリへと投げつけた。

ガラスの奥で顔がゆがむパイロットの恐怖の顔と共に爆発が広がり空と地上での大爆発が同時に起こった。

たくさん搭載されたロケット弾にも誘爆してさらに炎が広がる。

ここに俺とびこんでいいのかしらねぇ……。

俺いるのか、ここに。






               This story continues.


ありがとうございました!

波音の必要性……。

いや、いるはずです。

彼はここに居なければだめなんです。

だってほら主人公……。

ですよね。(どうですか?


ではではっ。

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