ホモ追加
「…………」
「まーあくまでも俺の意見だ、これは。
お前がどう思おうが勝手だけどな。
でもな、やっぱりお前は変わらない。
そう簡単には変われない。
人って言うのはじわじわと変わっていくもんだと思うぜ?
例外もあるけどな。
大きな衝撃を与えられた時とか、人は変わる。
それも急に、躊躇うことなく」
すっかり黙り込んでしまった俺に補足するようにマックスは言葉を繋げる。
頭を撫でるのをやめてマックスは操縦桿を握る。
ここらへんで少し進路を変えるのだろう。
操縦桿曲がり機体が左へと傾く。
「簡単に自分を捨てることが出来るほど大きな衝撃があれば。
人は変わることが出来るんだって俺は思う。
少佐、お前もそうなのか?」
問いには答えずじっとうつむき続ける。
自分を変えるほどの衝撃、仁がいた。
俺には大きすぎる衝撃だったわけで。
あのおかげで俺は人間をやめたい、やめたいって思った。
苦しかったから。
自分ではどうしようもないことだったから。
「シンファクシ――元帥だって昔は泣き虫だったんだぜ?」
ずっと黙っている俺に話す機会を与えようとしたのだろう。
マックスが笑いながら俺にそう伝えてくる。
昔話は趣味じゃなさそうなのにな。
「へ?」
「笑えるだろう?」
咥えたタバコを灰皿へ捨てるとマックスは少し笑いながらそう言ってきた。
あの人が?
とても泣き虫の元帥なんて想像がつかない。
「あの人、今二八だけどな。
あ、秘密な、年齢ばらしたこと秘密な。
まだ戦争してなかった頃、俺達は学校に通ってた。
そんで、その学校で姉貴に好きな人が出来たんだ」
マックスは「秘密だからな、年齢のこと」と念押しして来る。
分かってるから続き言えや。
「泣きながら告白したらOKもらえたらしくて。
めっちゃ喜んで俺とかに報告してきてた。
んで……だ。
その人が死んだんだ」
い、いきなりこれまたハードだな……。
セズク、みたいな感じか。
あいつも恋人に死なれたんだっけか……。
「それまで些細なことで泣いてた姉貴がな。
泣かなくなった。
まったく、泣かなくなったんだ」
マックスは深刻だろ、と付け足すと操縦桿をもとに戻す。
緑色のランプがついて進路がまた固定される。
あの人も泣いていたのか。
人間やめた感じがするけどな、あの人も。
「まぁでも正直。
少佐、お前は人間をやめれないと思う。
でもその方がずっと素敵だ。
だから、やめないでほしい。
人間の友人が少なくなるなんて寂しいからな」
そういってマックスは機内のマイクをオンにした。
「もうそろそろ着陸するぞ。
席に座ってシートベルトを締めてくれ」
もう基地はそこまで来ているみたいだった。
俺も座席の奥にまで座り込みシートベルトを締める。
俺達の乗った輸送機はゆっくりと高度を下げて行った。
「ついだー!」
腰が痛い。
長いこと座っていたせいだ。
難しい話もたくさんしたし。
俺は地面に降り立ったとき足場の悪さに苛立たされた。
ただの砂地が押し固められているだけだ。
それに建物という建物が存在していない。
あるのは管制塔跡だと思われる一本の折れてくたびれた塔のみ。
殺風景というより他なかった。
ここが最前線の基地ねぇ……。
風で舞う砂埃が目に入って痛い。
「んーっうー!!」
荷台から降りてきたメイナも腰を伸ばしてあくびをする。
長い髪を跳ねさせたシエラはあくびを何回も発動している。
輸送機の中でもぐっすりと寝ていたみたいだ。
「ほら、さっさと基地の中に入るぞ。
最前線らしいからなここ」
「うーい」
マックスはそういうと歩いて折れた管制塔の所へ向かっていく。
これが基地とかいうと泣くぞ俺は。
「よーし、下がってろ。
輸送機から離れるなよ」
マックスはそういうと管制塔の中へ入っていった。
「なに。
ここが基地?」
シエラがそう呟いて輸送機のふくらみに腰かける。
「あれ?
二人とも来たことなかったっけ?
ここ、地下が基地になってるんだよ?」
一瞬時が止まった。
いやいやいや。
ないわ、ない。
顔に出した森はないがメイナは俺の表情を信じていないと分析したのだろう。
「今に分かるって。
マックスが今ボタン押してるから」
マックスは管制塔から戻ってくると足元の砂を払い始める。
「あったあった」
独り言をつぶやくとマックスは足元の砂を完全に払い地面をぐいっと押し込んだ。
すると足元ががくん、と沈み込む。
「なに!?」
「だから地下にあるんだって」
メイナの言葉通りどんどんと足元が地面の中へと沈んでいく。
輸送機の周辺が丸ごとエレベーターになっていたらしい。
エレベーターがしばらく下がると、入り口に新たなエレベーターが蓋をする0。
入ってきていた陽光が消え、代わりに電気が付く。
壁は鉄でできていて分厚い。
爆撃にも耐えれるように装甲になっているのだろう。
「少佐はここに来るの初めてだっけか」
マックスは俺を見ると「どうだ?」と首を傾けて見せた。
どうって言われても。
俺はマックスの顔を見たまま分からないというそぶりをしてみせた。
「ここは最前線。
だからって装備が強いとかは一切ないけどな。
本部ほど大きくもない。
あくまで補強、補充、修理工場的な意味合いが強い。
戦力もそれほど置いてないみたいだしな……」
マックスがそう言い終わると同時に目の前が開けた。
一言で例えると、大きな体育館のような感じだ。
その体育館に戦闘機や輸送機、ミサイルなどが並んでいる。
空母をまるまる地面の中に埋め込んだという表現の方が正しいかもしれないな。
これでそれほど、なんだから驚く。
下手すれば一小国を滅ぼせるレベルだぞ。
帝国群って兵力不足じゃないのかよ……。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。
基地司令がお待ちです。
今案内します」
女の人が俺達に頭を下げるとついてくるように、とサインを送ってきた。
全員が女の人についていく途中で俺はきょろきょろをとあたりを見渡してみる。
整備している人もいれば雑誌を読んでいる人もいてまー何とも。
素晴らしいぐらいに自由に生きてるな、ここの人は。
立ち並ぶ戦闘機などの間を潜り抜け体育館の裏みたいなところに案内されたかと思うと
「こちらです」
と女の人に扉を指された。
『基地司令のお部屋』と掘られたプレートが並ぶ金属製の扉。
マックスは女の人にお礼を言うと
「はいるぞー!
ガッギス、おいはいるぞー!」
扉をがんがん叩き、足で蹴って開けた。
どうやらこの世には扉をまともに開けれるやつはそういないらしい。
俺達はマックスの後ろに並びながら入る。
仲では禿げたおっさんが基地司令の椅子に座ってタバコをふかしていた。
しかもサングラスかけていて怖い。
やくざじゃねぇかこれは。
「おー来たか」
「ひさしぶりー。
また一段とはげてんなー」
マックスはガッギスとか言うやつの前に立つと机に座る。
「久しぶりだな。
また本土のエロ本とかを運んできてくれたかと思うと嬉しいね」
「おいおい、金はもらうからな?」
「わかってるって」
二人は握手して再会を喜び合うとようやく俺達に気が付いたらしい。
「えっと、メイナは覚えてる。
残りのお二人さんはなんて名前かな?」
シエラは俺から先に言えよ、と目で伝えてきた。
じゃあ遠慮なく俺から。
「永久波音、少佐です。
よろしく」
「シエラ・F・Dです。
よろしく」
「ここの基地司令、ガッギス・マクドネルだ。
いやー噂の最終兵器の残りがあんたらか。
敵のくそったれラードグリー要塞を吹っ飛ばしに来てくれたんだろう?」
まぁ……そうだわな。
俺は素直に頷く。
ガッギスはにかっと笑うと手を差し出してきた。
握手をしようということだろう。
俺は手を差し出してガッギスの大きな手を握った。
と、グイッと手を引き寄せられ頬にキスされる。
「っぁ!?」
びっくりしてガッギスを突き飛ばそうとしてもこの強靭な男はびくともしなかった。
なんだこいつなんなんだ!
「あーそうだ、言い忘れていた。
ガッギスな、ホモやねん」
「早く言えやぁああああああ!!!!」
とりあえずシエラとメイナに助けを求めてみるも二人とも知らんぷり。
むしろ基地司令室の中を荒らしている。
マックスもマックスで知らないふり。
というかなんでマックスは絡まれないんだよ、おい。
「いやはや予想していたよりかわいいなーおい!
マックス、こいつかわいいぞ!
俺のものにしたい!」
「やめてぇえ!!!
放して!!!」
「うっはー!!」
よし、こいつ殺す。
俺は自分の右手をレーザー砲へと変えた。
銃口を敵の頭へ突きつけ「放せ」と一言言い放つ。
ガッギスは固まったが
「んもー!
そんなところもかーわーいーいーっ」
とさらに強く抱きしめてきやがった。
だー!!
もううっとおしい!
なんなんだよくそ!
ガッディム!!
「ほら、とりあえず離せガッギス。
仕事が終わった後にいっぱいぎゅーでもちゅーでもすればいいだろうに」
マックスはそういうとガッギスのはげ頭をポンポンと叩いた。
ガッギスは納得がいかないといった表情をしたが
「仕事が終わった後に好きにすればいい」
というシエラの言葉にうれしそうに頷いた。
まてや。
死ぬぞ。
「さて、仕事の話をしよう」
「もういろいろとまてやおい」
「ラードグリー要塞だが……」
「話聞けや」
ホモはあいつだけで十分だってのに!!!
This story continues.
ありがとうございました。
どうするんでしょうね、波音。
というか、セズク。
おい、セズク。
取られるぞ。
やばいぞ。
がんばれ。