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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
力な季節☆
154/210

強さ

再び煌めいた主砲の砲門の軸線から逸れるため横に移動する。

俺がさっきまで浮いていたところに黒い対空砲弾の霧が広がる。

破片で相手を傷つけるんだっけか、あれ。

いやらしいなぁ、おい。


「っと……」


飛んできた砲弾のスピードをイージスで殺し、砲弾を手に掴む。

大体一トンぐらいだろうか。

これぐらいだったら、まだ全然余裕でもてるな。

砲弾を片手でぽんぽんしながら一隻に狙いを定め放り投げる。


「っし。

 ストライクか」


見事に命中し、炎上、爆発する一隻の潜水艦が二本に折れて流れ込む海水の勢いと比例して沈んでゆく。

救援ボートの赤が二つほど出てきて、必死で沈む潜水艦が起こす渦潮から逃れようとしている。


「―――痛」


その沈むさまを眺めているとこうなるんだよ。

右手に走った鋭い痛み、でっかい砲弾が来たのを感じ取れなかったのだ。

なんというか、油断しすぎだなぁ。

右手に突き刺さった大きな破片を左手で掴みずるんと引き抜く。

すぐに傷は治癒を初めあっという間に塞がり、消えてゆく。


「無駄だって言ってんのになぁ。

 いっそのこと全部スクリューだけ破壊するか」


それも面白いな。

二十隻の潜水艦をシンファクシへのお土産にでもするか。

こんな最新鋭の潜水艦帝国郡にはないだろ。

どいつから破壊してやろうか、と思いながら眺めていると海面に浮かぶ二十隻のうちの一隻が潜ってゆく。

青い海を波立たせゆっくりと、海面から消えて行った。

逃げたのだろうか。


「っぶね」


右で弾けた対空砲火を避けて移動すると狙ったかのように一斉に潜水艦達から弾幕が展開された。

潜水艦の甲板のハッチが開き、中の白い弾頭がきらりと光る。

ミサイルだ。

火山の噴火のように白い煙が立ち上ると煙を裂いてたくさんのミサイルが俺に向かって飛んできた。。

数は……分からない。

五十を超えることは確かだろう。


「………」


手をレーザーマシンガンに変えて、ミサイルが飛んでくる方向へと向ける。

自動追尾をオンにして、全ミサイルにターゲットをロックオンした。

すかさずレーザーを放ち向かってくる槍を撃墜する。

弾頭を射抜き、爆発させその爆発をかいくぐってやってくる槍をまたぶち壊す。


「っりゃぁああ!」


飛んできた一発のミサイルの弾頭周辺を掴みぶん回す。

ミリミリと鋼鉄がひしゃげ、バットのようにして球を打つ。

バットが別のミサイルに命中すると命中したミサイルは弾頭へと電気を通達し信管が爆発するべく火花を起こした。

広がる爆風と炎に飲まれ、一瞬視界が奪われる。

その隙をかいくぐってミサイルが俺の尻に食いつこうと牙をむいた。

そうはさせない。

痛いの嫌だし。

さっき掴んでいたミサイルの残骸をばらまき、迎撃態勢を整える。

俺だけを狙っていたミサイルの頭に破片が食い込み爆発を促す。


「埒があかねぇな……」


一人ぼそっと呟くと俺は海面すれすれまで急降下した。

当然俺を狙っているミサイルも降りてきて海面を俺と一緒に飛ぶ。

追いつかれるか、追いつかれないかのギリギリのところを保ったまま敵のところへと向かって行く。

今頃相手の艦橋では大騒ぎだろう。

たくさんのミサイルをつれた俺が突っ込んでくるんだから。

機銃迎撃の光が海面を食い荒らす。

右に、左によけながらイージスを展開して機銃の弾の先を俺の後ろへと変えた。

機銃の嵐は俺の後ろをついてくるミサイル郡に必然的に向かうことになる。

雨に自ら突っ込んだミサイルたちは弾頭を射抜かれ爆発することとなった。

秒速五百キロもの高性能の火薬は性能を発揮し衝撃波で海面を泡立たせながら後ろのミサイルたちをも巻き込んだ。

引き続いて五つほどの爆発が起こり数が減ってゆく。


「あーうっとおしい!!」


ほんのり感じる熱さが俺の神経を苛立たせた。

こんなもんで死ぬわけないだろうが。

うっとおしいことを。

イライラが加速してゆく。

でも、スクリューだけを残して破壊すると自分で決めてしまったからレーザーが撃てない。


『波音、聞こえる?』


もう、いいかな壊して。 

そう思っていた矢先シエラの声が頭の中に響いてきた。

無線機がなくても通信が出来るのか。


「ああ。

 やり方が分からんからこうやって話しかけるけど聞こえてるぞ。

 お主は聞こえてるのか?」


頭の中での通信なんてヴォルニーエル以来だ。

あの通りにやってれば聞こえると思いたい。


『聞こえる。

 シンファクシからなんだけど。

 潜水艦欲しいんだと』


「はあ」


『全部あまり壊さずに持って来いと』


「はい」


『手伝う?』


「いい。

 自分の力試してみたい」


『そう。

 じゃあ、僕はまた基地の防衛に戻る』


ぶちっという音がして通信が切れた。

元帥も同じことを考えていたのか。

やっぱりこの潜水艦は大きな戦力になるよな。

敵の対空砲火をかいくぐりながら分析する。

砲弾の破片を避けながら敵潜水艦に向かった。

再び敵潜水艦の甲板が開きミサイルが飛んでくる。

クソ邪魔なことを。

ミサイルが俺を追尾するより早く俺は敵潜水艦の甲板に降り立った。


「来たぞ!

 捕まえろ!!」


あっちもあっちで俺を捕まえたいらしい。

俺は敵兵の売ってくる豆鉄砲には構わずに艦尾に向かう。


「な、何をするつもりだあいつは!?」


プロペラのようなものが海面から少しだけ露出して金属のきらめきを残していた。

こいつを破壊すれば動けなくなるんだぜこの船。

愉快だろ?


「っと……」


服がぬれるのに構わずプロペラを右手で掴む。

そしてゆっくりと外へ向けて捻じ曲げていく。


「スクリューを――!」


ぐるぐるとスクリューの羽を捩じる。

軸の部分に巻きつけるようにすると一枚目は水をかく役目を失った。

その調子で二枚目、三枚目と捩じってゆく。


「や、やめろ!」


兵士たちが恐れるように銃を撃ってくるがもう俺にとっては怖くない。

イージスという盾がある限り俺に銃なんてもう当たらない。

別の潜水艦の主砲も味方の上にいる以上撃ってはこれない。

味方を傷つけないで俺だけを撃つなんてことは到底無理だからだろう。

甲板上にいるだけでこれなんだから簡単なもんだ。

全てのスクリューの班を捩じってしまうと次に移るためにターゲットを定める。

このまま浮いていたらやられると感じたのだろう。

全艦が一斉に海へと沈んでゆく。

俺の下に浮かんでいる潜水艦は移動が出来なくても、水中に潜る機能はまだ破壊していない。

兵士たちが艦内へと退避していくのを見て俺は地面、潜水艦の装甲へと思いっきり腕を突き刺した。

鋼鉄がケーキのようにねじれ大きな穴が開く。

オイルが噴き出すように漏れ始め、俺の顔に血のようにかかる。

これでこの潜水艦は潜れないだろう。

今度こそ次に取り掛かる。

俺は一度空に飛ぶと海面に目をこらした。

まるでクジラのように推進二十メートルほどのところを潜水艦の巨体が進んでいる。


「服の代えだけだけ用意してもらうんだったなぁ」


びしょびしょのズボンのすそをつまみべっとりと張り付いてくる気持ち悪さに顔をしかめる。

濡らすんじゃなかった。

息を精いっぱいまで吸い込みとめると俺はまた急降下をはじめた。

目標は水中の潜水艦。

顔が冷たい海水に触れるとすぐに敵の潜水艦の装甲にたどり着く。

二十メートルの水なんてあってないようなもんだった。

人間だったら確実にこんな無茶はしてないけどな。

最終兵器なんだしこれぐらいやっても大丈夫だろう。

水をかきまわし、うねる気泡を後ろに押し出して潜水艦のスクリューが回っている。

吸い込まれそうになるのをこらえながら回るプロペラに俺は右手を突き刺した。

すこしちくっとした痛みが走ったが俺の腕よりもスクリューの方が被害の方が大きい。

俺の腕という障害で羽が次々とはじけ飛びこの潜水艦のスピードはゆっくりと落ち始めた。

そのまま艦尾を掴み空中へと引っ張り出す。

今頃潜水艦の中では艦長を含め人間が青ざめた顔で何が起こっているのか理解できないままなされるがままになっているだろう。

こやっぱり最終兵器ってのは悪くない。

この力、手に入れて正解だった。

仁を殺した連合郡。

俺がこの手で。

命を刈り取ってやる。

海面を突きだして潜水艦を空中に引っ張り出す。

下を向いた魚雷刊から五そりと魚雷が抜け落ちる。

主砲が重さに逆らえないまま下を向き後部の砲門の先がバルジにあたって鈍い音を立てる。

潜水艦を一人で持ち上げ装甲に穴をあけると俺は手を放した。

海面に落ちた哀れな鋼鉄のクジラは海水を大きく巻き上げて白い水柱を立ち上げる。


「やあ、ハニー」


ふっと、頬に風を感じて横を見るとセズクがにこにこと飛んでいた。

何をしに来たんだろう。


「手伝いはいらないって言ったんだけど……」


「違うよ。

 僕は君を止めに来たんだよハニー」


どういうことだ?





               This story continues.


ありがとうございました。

セズク何しに来た。

波音のスーパー無双タイムじゃないのかっ。

邪魔しに来たのか。

それとも彼なりに考えが?


ではではっ。

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