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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
力な季節☆
153/210

無数

「捕えろ!

 敵はおそらくモドキレベルだ!」


敵はそう言って俺に飛びかかってくる。

銃を持った男たちだったが銃を使おうとせずに素手で掴みかかってくる。

俺をガキで弱そうとか思ってるからだろう。


「逃げんなよ、クソガキ。

 お前なんかシエラやメイナと比べたらゴミみたいなもんなんだからな。

 できる限り手間取らせないでくれや」


それでもモドキとは信じているからか五人が俺の周りを取り囲むようにして迫ってきていた。

五人……か。

今の俺は相手から見てその程度の力しか持っていないように見えるんだろうな。


「そら、捕まえたぞ」


そんなことを考えていると俺は腕を掴まれた。

俺の腕を掴んだのは三十代ほどの男で屈強な筋肉を持ち無精ひげが生えている。


「よし、そのまま抑えてこっちに連れてこい」


「はいさ。

 へへへ、悪いな坊主」


俺の腕を掴んだ男が下衆のように笑い黄色い歯を見せつけて来る。

挙句の果てに汗臭いから不快指数が上昇する。


「あーうっさいもう」


一瞬、俺をとらえたとかそういう夢を見させてあげたけど終わり。

ここでさようならと行こうじゃねぇか。

俺は男が掴んだままの方の腕を思いっきり引っ張った。

ぶちぶちっと、何かが切れる音がして男のつんざく悲鳴が青空に広がる。


「あ、暴れ出したぞ!」


俺の腕を握り締めたままの男の手を引き剥がすと海に投げ捨てた。

血しぶきが俺の頬を赤く染め、血の匂いが次第に広がってゆく。


「撃て!

 誰か医療室まで運ぶんだ!」


五人の男たちが撃ち始めた銃が螺旋の空気を纏って俺に向かってくる。

すかさずイージスを展開してその先を逸らせる。

足元へと軌道を曲げられた銃弾が装甲に当たり火花を散らす。

頬についた血を人差し指で撫で取り、にちゃっとした感触を親指と人差し指とで味わう。

すげぇ、不健康な感じするけど軍隊なんだから体調管理はしっかりしているだろう。

銃弾をイージスの盾で避けながら兵士たちに近づいてゆく。

恐怖におそれだんだん近づいてくる兵士の銃を握り締め思いっきり鉄の部分を曲げてやった。


「あ、あわわ……」


腰を抜かして甲板に座り込む兵士を端に置いておいてほかの兵士に向かう。

次に格闘で挑んできた兵士のパンチを軽くいなして顔面に一発叩き込む。

噴き出た鼻血を浴びないように横に移動して足に蹴りを一発ぶち込んだ。

ボキッ、という嫌な音とともに男のズボンをも突き破って血でぬらぬらと輝く白い棒が顔をのぞかせる。

倒れ込んだ兵士を蹴り飛ばし、俺は小さく飛び上がった。


「くそっ、早く逃げろ!

 潜水してこの海域を離脱するんだよ!」


おそらく隊長だろう。

胸に付けた無線機に向かってがなり立てていた。

うるさい人を黙らせるには口をふさぐのに限る。

俺は人差し指を隊長に向けると銃の形に変えた。

頭をロックオンして、赤いレーザーを放つ。


「早くしろ!!

 食い止め――」


ぼたぼたっと隊長の鼻から血が流れだし意図が切れた人形のように隊長は甲板に倒れ込んだ。


「た、隊長!?」


あわてて他の兵士が駆け寄って安否を確認する。

その姿を眺め俺はこの潜水戦艦の主砲のところへ歩いた。

人が五人ほど横に並ぶよりもはるかに大きい。

やはりでかいのはロマンだ。


「何をする気だ!?

 早く殺せ!!」


俺の周りで火花を上げる銃弾を別に気にしないで俺は主砲を触る。

これぐらいなら制御できるだろう。

この潜水艦、俺がもらう。

そのためにはまず邪魔な奴らを排除しなきゃな。

俺は主砲の横から飛び出ると足に力を入れて一気に兵士たちに近づいた。

はらわたに拳を差し込み、内臓を引きずり出す。

頭をつぶし、飛び散る内臓を踏みつぶし次から次へと命を奪っていく。

既に殺しというものに俺は慣れてしまっていた。

人の命など一瞬で、その一瞬を俺はつぶすのが楽しくなっていた。


「うわぁぁぁぁ!!」


この悲鳴も、俺が出させているのだと思うと背筋がぞくぞくした。

シエラ達に人は殺すな、と言っていた自分がバカみたいに思えた。

あいつらが戦い続ける理由が分かったと思う。

この快感だ。

これを得たかったからなんだ。

人を殺しているときこそ自分が生きていると思える。

人を潰しているときこそ自分の存在が見えてくる。


「っと――」


飛んできたロケット弾を掴みとり、飛んできたところに投げ返す。

ばらばらの肉片になった兵士が飛び散り、甲板が血で洗われてゆく。

これだけ大きな潜水艦を動かすにはたくさんの人が必要だと思ったけど実際はそうでもないらしい。

思ったよりも早く兵士たちは俺の前に姿を見せなくなった。

全滅させてしまったのだろうか。


「もういねぇのかいな……」


レーダーを広げて潜水艦の中まで見通す。

生命反応はゼロか。

じゃあ終わりか。


「っち――。

 まーいいや。

 この潜水艦が手に入ったし――」


艦橋の中に入ろうとハッチをこじ開けたとき、海を泳ぐ三本の白い白線を見つけてしまった。

おそらく魚雷。

他の潜水艦から放たれた銛。

迎撃するにも距離が近すぎた。

潜水艦の舷側に魚雷がぶち当たると大きな水柱が起立した。

雨のように海水が頭から降りかかり、五十メートルほどの高さへ伸びた水柱が虹を描き出す。

もう一隻いるってことか。

この潜水艦が俺に奪われたと思って敵に渡すぐらいなら沈めちまえってことか。

三本起立した水柱はゆっくりと形を崩してゆき、細かい雨が甲板の血と混じる。

舷側を一方的に破られた潜水艦には海水がどんどんと流れ込み船体が傾き始める。

もう使えないな、せっかく奪い取ったのに。

沈んでゆく潜水艦を眺め、回復出来ないと分かった俺は飛び立ち空から魚雷を発射した敵を見つけようとする。

どこにいるかねぇ。

潜水艦は艦尾を塔のように高く上げ、その船体すべてを海の中へと沈めた。

ごめんね、ゆっくり休んでくれよな。

使ってやれなくてごめんよ。

と、海面を突き破るようにしてミサイルが五本俺に向かって飛んできた。

艦対空ミサイルの一種だろう。

潜水艦から発射できるタイプの。

五本それぞれが動物のようにぐにょぐにょと複雑な軌道を描いて俺に向かってくる。


「どこだ?」


五本のミサイルをレーザー銃に変形させた左腕を使って射抜き空中の爆発を眺めながら海面に探査のレーダー波を落す。

本来ならそれだけで映るはずだったが俺の頭のレーダーには何も映らなかった。

潜水艦が海面に潜った瞬間から映らなくなったときに思っていたんだけどパンソロジーレーダーはあれか。

水中は見えない感じなのか。


「光使って物を探査しているんだから水中は見えなくても仕方ないか……」


地上とかだと使いやすいのに水中だと見れないのが不自由だな。

まぁいい。


「適当にこの辺一帯吹き飛ばせば出てくるだろ」


こういう考えが出来るのが最終兵器のいいところだ。

何か面倒になれば吹き飛ばせばいい。

簡単だろう?


「もいっぱつ撃っとくかー」


そんな軽い気持ちで、俺は再び両腕を合体させた。

巨大な砲を作りだし、それを海へと向ける。


「どーせだから盛大に叩き込んでやるよ」


一撃で沈めれるぐらいにな。

俺は渦潮を起こしながら沈んで行った潜水戦艦を思い出して言った。

苦しむぐらいなら一撃の方がいいだろう。

死の恐怖を感じるまでもなく、海水に押し流され、鉄に潰され苦しむよりは。

一瞬で蒸発してしまった方がいいに決まってる。

それが俺が出来るせめてもの助け。


「じゃな、あばよ」


俺が腕にため込んでいた光を放出しようとしたとき、海面が盛り上がった。

膨大な量の海水を割って金属の船体が水上へと姿を現す。

続いて現れた主砲はもうすでに俺の方を向いていた。


「んっな――!?」


気を取られていた俺はその主砲が一瞬光ることを見逃していた。

続いて炸裂した対空砲弾が俺の視界を黒く埋め尽くすと鋭い痛みが手に走った。

手、というか銃に。

うっかりしていたためイージスを張り忘れていたのだ。

シエラも同じことでダメージを負っていたよな、確か。


「うっとおしい……」


効果ありとみた敵潜水艦の主砲三基が俺の方をすべて向く。

その潜水艦を叩き壊すため光をためはじめた俺の背後でまた黒く対空砲弾が展開された。

皮膚を切られる痛みが脳を突く。


「な……!?」


後ろを振り返った俺の目には二十を超える数の潜水戦艦が浮かび、俺に向かって主砲を向けていた。

面白い。

やってやろうじゃねぇか。






               This story continues.


連合郡どんだけ必死なんでしょうか。

そりゃ三人の最終兵器が敵だと怖いですけど。

ですけど、ここまでやるか普通。

しかも通常兵器。

超常兵器級か超極兵器級もってこい。


ではではっ。

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