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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
力な季節☆
152/210

潜水戦艦

「寂しいって言われても分からねぇよ俺もう……」


混乱が混乱を極める。

訳が分からない。


「うん、僕もだよ。

 でもねハニー。

 僕は僕として生きてきた。

 それに意味がないかって言われたら、あると思うんだ。

 だから僕はその意見には同意はするけど」


「……ごめん」


「謝らなくてもいいよ☆

 あ、僕ちょっと用事があるから別のところに――!」


そういってセズクが扉から出ようとしたとき、俺は爆発の衝撃を感じた。

びりびりと空気が震え、すかさず臨戦態勢にはいった体がベッドから飛び起きドアを吹き飛ばしたい。

黒煙を突き抜け走り出す。

シエラ達が扉をきちんと開けない理由が分かった気がした。


「ちょ、波音!?」


セズクの声が遥か遠くへ消え続いてサイレンが基地を埋め尽くし、頭の中をわんわんと鳴りたてる。

色々と危ないようだ。


『敵襲、敵襲!

 総員第一種戦闘配備!

 繰り返す、総員第一種戦闘配備!』


錆びたスピーカーから流れる音声が現実を伝え赤く、くるくると回るランプが非常事態を示している。

俺は廊下から外に出ると背中から翼を展開して、空に向かって飛び出していた。

仁を改造した連合郡が、ふざけやがって。

ん、改造したというかなんだ。

俺を初めから騙す気で来た連合郡か。

どっちにしろふざけんな。

パンソロジーレーダーを起動して敵の位置を掴もうと試行錯誤する。

どこにいやがるんだ、くそったれども。

燃え盛る帝国郡の基地を眺めながら首を右へ左へと振る。


「波音!」


声が聞こえたから上を見るとメイナが俺に並んで飛んでいた。

俺と同じく唐突に爆発が起こったからとりあえず外に出てみた口らしい。


「メイナ、どこだ敵は!

 全部ぶっ殺してやる」


自分の口からだとは思えないような暴言。

最終兵器になったからか俺の性格は変に大きくなっているようだった。

自分では制御できないような殺意が体の中を駆け巡っている。

何かを破壊したくてたまらなかった。


「えっ、あ、は、波音!?

 ちょ、あんたっ!」


メイナからは何の情報が手に入らないと思った俺はメイナの側をすぐに離れると別の帝国郡の施設上空に移動した。

ここらへんからぐるっと眺めて何が襲ってきたのかを確かめればいいんだ。

上空およそ三千メートル地点で目を見開き状況を確認する。


「敵がいないじゃねぇか……!」


がっでぃむ。

敵がいない、のにどうやって攻撃してきた。

ミサイル?

それならば噴煙が見えるはずだ。

遠距離射撃?

近くに戦艦などは見えなかった。

超常兵器級?

それならばどうしてベルカの光が見えない?

もっと上空を飛ぶ爆撃機か……?

エンジンの爆音は聞こえないぞ。

確認の意味も含めて俺が上を向いた瞬間空が青く光った。

次には太い青いレーザーが雲を破り地上まで一気に到達したかと思うと戦闘機が眠っているであろう格納庫を消し飛ばした。

俺の飛んでいるすぐ真横の位置だった。

手を伸ばせば届く距離。

イージスを俺が張っていれば少しでも被害が和らいだだろうに。

それなのに俺はとっさの判断が出来なかった。


「――っそ」


自分の判断の甘さに後悔を噛みしめる。

今のは助けれてあげれた。

それなのに俺は。


「波音、大丈夫!?」


燃え盛る格納庫をバックにシエラが焦った表情で俺の横にやってきた。

俺は軽く手を挙げて無事だと伝えると


「今の見たか?」


とシエラに聞いた。

シエラなら今の攻撃が何かわかるだろう。

毎回、連合の使ってくるレーザーを特定してきたのはシエラだしな。

今回はなんだ。

教えてくれよ博士。


「うん、おそらく超常兵器級がいる。

 攻撃が遠距離のものだからたぶんこの近くにはいないと思う。

 でも間違いなく攻撃パターンは超常兵器級特有のものだった。

 射程距離は五百キロぐらいだから近辺五百キロ四方を探せばいい


持ち前の冷静さでシエラは俺の欲しい情報をすらすらと答えてくれた。

五百キロぐらいならすぐに探せる。


「五百キロだな、わかった!

 シエラとメイナは基地にイージス張って守ってやってくれよ!」


くるりとシエラに背を向ける。


「え、まっ、波音は?」


「俺は、ぶっ殺してくる」


「へっ!?

 ちょ、波音!」


シエラの声を後ろに聞いて俺は五百キロメートルほどにパンソロジーレーダーの手を伸ばした。

どこらへんにいるのか、これですぐにわかる。

超常兵器級なんて大体でかいんだからさ。

一発で見つかるだろう。

そう思ってレーダーの手だけをひたすら伸ばしていた。

だが、見つからない。

焦りだけが高ぶってゆく。


「っ、また来る!」


空が光ったと思うと一本のレーザーが空から降り注いできていた。

軽く直径三十メートルはあるであろう光が帝国郡の基地に向かって降り落ちる。

だが、その先には最強の盾を持った最終兵器、恐怖神が立っていた。


「邪魔」


そう言ったのかどうかは分からない。

でも、シエラはまるで目の前のごみを払うようにレーザーを目の前で粉砕した。

ばらばらに砕けた光が帝国郡の基地の周りに雨のように降り注いでゆく。

地面にぶつかった光は土煙を巻き上げ、帝国郡の基地を覆い隠した。


「さすがだな、あいつは」


長いこと最終兵器をしていただけあるわ。

俺もあんなふうに早いこと力を極めて守らなきゃ。

全部を。

もう誰も二度と悲しませない。

絶対に。


「ん……?」


また一発の光が空から降り注いできた。

その時一瞬だけだが、レーダーの端になにかが映った気がした。

大きさから五百メートルを超えるもの。

撃つ時だけ見える影。

そんな大きなものが一瞬で俺のレーダーから消えるわけが……。


「ははーん、そうか」


俺はすべてが頭の中でつながった気がした。

つまり、隠れることができればいいのだ。

ここは地上じゃない。

海なのだ。

この意味が分かるだろうか。


「潜水艦か」


それがわかったら話は別だ。

さっそくレーダーに反応があったところへ急行する。

五百キロという長距離も最終兵器になった俺からしたらすぐだった。

二十分ほどでレーダーに反応があった場所にたどり着く。


「このあたりだよなぁ……」


レーダーを水中まで伸ばそうとか思ったが面倒だな。

今の俺は最終兵器なんだ。

この力を生かすとしよう。


「自分でも制御できるかわかんねーけどなぁ」


俺は両腕を組み合わせると意識を集中した。

メイナに教わったつけ刃の知識で両腕を使って銃を組み立ててゆく。

超光増幅装置に、安定装置。

レーザーを撃つのに必須なものを考え、結合する。

巨大な砲門を備え、光を展開する。

バチバチと電撃のようなものを纏わせ、水中でも威力を失わないように添加する。


「ここら辺でいいかな」


俺は完成した銃を自分で惚れ惚れと眺めた。

両腕がくっついた巨大な銃はギアがむき出しになり火花が散っている。

奇妙な模様もドクドク、と心臓が鳴るたびに光りそれが海面に反射してきらめいていた。

つけ刃でもここまで行けるもんなんか。

ふっふふ。


「沈め」


俺は銃口を下、つまり海面に向けた。

ゆっくりと力をため込み、光を孕ませる。


「おらっ!」


俺はそう言ってため込んだ力を放った。

海面が大きくうねり、蒸発した水が蒸気となって立ち昇る。

海中で金属のようなものがこすれた音がしたかと思うとうねる海面を突き破ってクジラのようなものが姿を現した。

水を大きく跳ね飛ばし、日光のもとに現れた鋼鉄の鈍い輝きが反射する。

音波を吸収する黒い塗料に、船体についた二対の潜舵の片一方が無くなっていた。

俺の攻撃をぎりぎりで躱したらしい。

割れた船殻からはオイルのようなものが漏れて海に血のように広がっている。

甲板には大量のミサイル発射口が並び、ガゴンと防水を兼ねた蓋が開く。

そして艦尾にはヴォルニーエルにもあった巨大なレーザー砲塔が一基くっついていた。

明らかに奪い取ってつけたといった感じでそこだけ雰囲気が違う。

ベルカの技術はレーザー砲塔だけか。


「超常兵器級の兵装を付けたでっけぇ潜水艦か」


俺が目を細めて冷静に分析していると、潜水艦の甲板が忙しくなり始めた。

装甲が反転して中から対空機銃が現れ俺の方を向く。

明らかに俺を殺しにかかってるな、面白い。

水を滴らせながら機銃の砲身が身をめぐらせる。

巨大な砲塔が装甲を割りながら現れるとぐいっとその身をもたげた。

パッと分析しただけでも四一センチはありそうな大口径砲。

まさに潜水戦艦とでもいえばいいのかこれは。

三連装のすらっとした砲身に、出っ張った照準器が左右に一つずつ。

大昔の大戦から戻ってきたようなそんな身なりの砲塔だ。

それが全部で三基ならんでいる。

前に二つ、後ろに一つ。

全てが旋回して俺の方を向いている。

奥まで入れそうな砲口の中では重さが一トンを超える砲弾が装填されいつでも発射される状況が出来ているに違いない。

このまま眺め続けていてもいいけども……。


「ロマンの塊を壊すのは気が引けるけど敵なら仕方ないわな」


ぼそっと呟くと俺は弾を吐き出しはじめ対空機銃の弾に埋まり始めた空を駆け、敵潜水艦の甲板に降り立った。


「敵が来たぞ!

 応戦しろ!!」


中に乗ってた人間たちが応戦するため真ん中に切り立った艦橋から次々と現れる。

これは楽しめそうだ。






               This story continues.


ありがとうございます。

いやぁまさかまたこんなおいらの趣味もりもりな内容になるとは。

いやー予想外でした。

いやーほんと。

いやーいやいやいや。


ではではっ。

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