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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
力な季節☆
151/210

寂しい

「え、そんな、え?

 僕のハニーが。

 え、そんな、えっ?

 モドキに、って、え?

 嘘やん?

 これってあれでしょ?

 僕を驚かせる罠なんでしょ?

 どこか端っこの方にカメラがあって。

 それで僕が驚いてうわああってなった瞬間にこう。

 ドッキリでしたーみたいなパターンなんだろう?」


セズクは俺の体を叩きながらそう一気にまくしたてる。

鳩が豆鉄砲食らったようにまん丸の目をして驚きの表情で頬がぴくぴく痙攣している。

少し落ち着いてもらおうと俺は無言の時間を設けた。


「………」


「ハニー……一体どうして……。

 ドッキリ――なんだろう?」


「……………」


「人間であることをそんな簡単にやめていいと思う!?

 ハニー、まだ間に合う。

 それが、モドキの細胞なら。

 まだ間に合うから、バカな考えは――」


このまま黙っていたらセズクはクールダウンする所か余計にヒートアップするわ。

なんでこっちの可能性を考えておかなかったんだ、俺のバカ。

仕方ないから真実を話すことにする。

というかもともと真実を話すつもりだったのにセズクが話し始めるからわけわからんことになる。

やれやれ、まったく。

とりあえず言葉の頭は否定から入ることにした。


「残念ながら違う。

 これはドッキリじゃない。

 現実で本当のお話なんだ」


そういいながらまた手の形を変えてみせる。

俺の手の銃はゆっくりとその形を崩し、近代的なレーザー銃へ。

ギアとギアが噛みあい、幾何学模様の浮かぶ銃へと姿を変える。

さらにそこでレーザー銃からナイフへとその形を変えて見せた。

我ながら鮮やかな変化である。


「――っ!」


「な?

 もう、冗談じゃないところまで来ちまったんだよ。セズク。

 聞いてくれるか、俺の話」


と言ってみたものの、さすがにセズクも俺のことが嫌いになっただろう。

こんな人間離れしちまった俺を好きになってくれる人の方が珍しいんであって。

いくらセズクでもこれには耐えきれないだろう。

だって、普通嫌だもんな。

好きだった人が兵器だったとか。

俺だったら考えるだけで涙が出る。

ただの偏見。

そう言われたらそれまでだ。

でも拒絶されたらされたで受け入れる。

兵器だから嫌われても平気、なんちゃって。


「………ハニー」


案の定、セズクは信じられないといった眼差しを俺に向けている。

今、こうやって俺を拒絶する第一歩に入っている。

もう戻れない。

セズクの前で姿を変えてしまったのだから。


「……ごめん」


この謝罪はセズクにあてたもの。

人間をやめ、兵器に成り下がってしまった俺の。

それでも俺に好感を抱いていてくれたであろう男に対する謝罪だ。

セズクはため息をつくと


「なんで謝るのさ☆

 波音は笑顔が一番かわいいんだよ?」


はじけるような笑顔を俺に向けた。


「――セズク?」


「なっちゃったらなっちゃったで仕方ないじゃないかー♪

 そんなんで謝らなくていいんだよ?

 僕が君のことを愛しているのは大自然の摂理。

 神が僕に与えたことなんだからさ☆」


予想していたより真逆の答え。

今度は俺が驚きの表情でセズクを見る番だった。

セズクは金髪の髪の毛をさらっと撫で、後ろで結んだ髪をつまんで遊び始める。

驚きが消えた眼差しは暖かい。


「…………」


「だから不安で、悲しい目で僕を見るのやめてくれないかな。

 僕に嫌われる心配なんてしなくていいんだよ?

 僕は君のことを本当に大好きなんだから。

 波音。

 愛してるよ」


そんなに愛してる愛してる言うな。

言われてるこっちの方が恥ずかしくなってきたわ。

赤面した顔をセズクに見せないようにしてベットに飛び込んだ。

そして、ベットから


「ありがと」


と俺は言うと布団を頭からかぶる。

この状態で最終兵器だったってことを明かそうと思う。

また面を見て話すとあいつ「愛してる」って言ってくるに決まってるからな。

素敵な笑顔で。

俺はホモじゃねぇから別に惚れたりはしないけども。

もし女だったら誰でも一発で惚れてるんじゃないか。


「でも一応教えて?

 どうしてその体になったのか」


「……うん」


というか俺は何回同じ話をすればいいんだ。

セズクに対して俺は全く同じ説明をアリル達と同じようにした。

仁が裏切ったことから初めてのんびりずんべんだらりと。

あることないことを付け足しはしなかったけど結構はしょった。


「ん、わかったよ波音。

 仁が……ね。

 まさかとは思っていたけど当たるなんて」


セズクは顎を撫で、天井を睨む。

消えかけた蛍光灯が残りの力を振り絞って光る暗さが整ったホモ野郎の顔を照らす。


「波音が力を持った……か。

 僕はいったいどうすればいいんだろうね、考えてみたけど」


そういえばその話だったな。

セズクは引退したいとかなんとか。


「セズクはセズクだろ。

 どうするもこうするもない。

 今迄みたいに俺に、みんなに接してくれれば――」


「でも、波音は力を持った。

 僕は波音を守るのが半ば生きがいみたいになっててね。

 正直言ってね。

 波音が僕を抜かすのは怖かった。

 僕を不必要だと思う時がいつか来るとは思っていたけど。

 僕はモドキで、波音が人である限りその時は来ないと信じてた。

 圧倒的な身体能力差があるからね。

 でも……」


セズクはそういうと立ち上がり俺のベッドの端に腰掛けた。

足元らへんの布団が沈み込みばねがギッと鳴く。

もそもそとセズクはそのまま靴を脱ぐと俺のベッドに入って来た。


「ちょ、なにしてん!」


「え、添い寝」


「アホか、死ね!」


深刻そうな顔をしたかと思うとこれかいね!

なんやねん、何を話そうとしてたんやこいつはー!


「いいから続きを話せやバカ!」


俺の素足をさすさすしているセズクの頭をはたく。


「あー気持ちいい。

 すべすべしてる」


「うるさい!

 いいから続き言えって!」


すべすべとか知らしどうでもええわ。

続き言えや。


「これで×××してほしいよ、僕は」


「死ね!」


放送禁止用語入りました。

修正により×になります。


「んなこたどうでもいいから早く続き言えって!

 しつこいぞいい加減に!」


俺はセズクの掴んでいる足を思いつきり上にあげて離れると続きを話すように促す。


「うぬ……。

 話したらすりすりしていい?」


セズクは俺の足を物欲しげに眺めそう切り出してくる。

ダメに決まってんだろアホか。


「改めて聞いてくるな、答えはダメ。

 NOだ。

 でも話せいいから話せ。

 そして足を離せいいから離せ」


いつの間にかまたセズクは俺の足を掴んでさわさわしていた。

おさわり禁止って書かないとこいつは触り続けるんじゃないんかね。


「あのね、波音」


「うん」


「僕もうやめようとおもってぇ」


「なんだその口調」


「クスクス……。

 真剣になるけど――」


初めからなっていてくれ。


「僕はどうしたらいいのかもう分からないんだ」


いつかの俺と同じ悩みを抱えてるな。

奇遇だな、セズク。

俺も実は何をどうすればいいのか全く分からないんだ。

でも前々から思っていたことがあって。

考えていたことがあって。


「なぁ。

 俺さ、思うんだけどさ」


「んー?」


「すりすりやめろ。

 人生を生きるのにさ。

 いちいち目標を、意味を持たないとダメなのかな」


セズクのすりすりがぴたりと止み、二つの目が俺の顔を眺めはじめる。

何か、言ってはいけないことを言ってしまったのか?


「波音……」


でももう止まらなかった。

ずっと抱いていた考えをセズクに言いたくて仕方なかった。


「だってそう思わないか?

 何か必ず意味を持たなきゃだめなの?

 俺はこれをやるために。

 私はこれをやるために。

 そうやって自分が生きると決めた道のせいで視野が狭まってるかもしれないんだよ?

 それだったら俺はふらふらとして、そして視野が広いままに行きたい。

 あいまいな人生かもしれないけどわざわざ意味を持たせるよりはマシ。

 俺は俺の生きたいように生きるし、運命なんか信じたくもない。

 意味を持たせることに意味なんてないって、そう思うんだけど俺」


一気にまくしたて俺は空気を吸った。

酸欠不足で倒れるところだった危ない。

セズクはこれだけの言葉をぶつけられ、目をぱしぱしと開いたり閉じたりする。


「ごめん。

 あくまでも俺の考えだからセズクは別に……」


「天才か。

 さすがだよハニー」


「へ?」


「意味なんていらない。

 もっともだと思ったよ僕今」


「お、おう。

 だろ?

 だから自分の生きたいように生きればいいじゃん。

 あくせく生きるよりそっちの方がずっと楽しい」


まさか受け入れられるとは思ってもいなかった。

てっきり反対しかもらわないと思っていただけに。


「でもね……?」


「ん?」


俺はベッドから顔を出してセズクの顔を見た。

まだ何か言うつもりか。


「でも……それはそれで寂しいと思うよ」


そういってセズクはベットから立ち上がり俺をじっと見た。

もう、また分からなくなっちまったじゃねぇかっ。

どうすればいいんだよ。

くそう。






                This story continues.


ありがとうございました。

どうしてこの二人がそろうとこうホモホモしくなるんでしょうね。

なぜでしょう。


というかあれですか。

片方がホモだからどうあがいてもホモになるんですかね。

なんだ、ホモか。

なら仕方ない。

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