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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
力な季節☆
150/210

セズクの弱さ

「ってことはあれだよな。 

 レーザー使いこなせてるメイナとかセズクとかは頭よすぎるってことだよな」


「……そうなるんですかね」


訓練の後俺はアリルと一緒に部屋に変えるべく廊下を歩いていた。

もうすっかり外は暗くなり星が空にちりばめられている。

頬をアリルに触られたことでいつのまに切ったのか分からないけど頬から血が出ていたことに気が付いた。

血が出てるってことは結構近いところで切ったらしい。

最終兵器になった俺はすぐに治癒するからな。


「じっとしていてくださいね」


「あ、うん……。

 でも俺最終兵器だから――」


反論しようと思った俺をアリルは睨みつけバックから絆創膏を取り出した。


「じっとしていてくださいね」


「はい」


にこにこしながら絆創膏を俺の顔に貼り付けるアリル。

なんかうれしそうだが、俺は腹の中で恐怖に怯¥えているわ。

怖いわ、あんたやっぱり。

最終兵器に勝てる少女として世界記録に登録されてもいいと思う。


「はいっ、できましたよ」


「おう、さんきゅー」


頬に張り付いた絆創膏を手で触る。

もうたぶん下の皮膚の傷はふさがり血すら出てないと思うがアリルがこうしたかったんだろうから構わない。

なんか照れくさいじゃないか、ほら。


「……んう。

 波音君、ん」


「ん?」


自分のほっぺをなでなでしているとアリルが俺に向かって何かを訴えてきた。

何だ?

なんか、してほしいことでもあるのだろうか。


「どしたん?」


分からんもんはわからんから聞くしかない。

沈黙だけがどどっと溢れて、廊下には俺とアリルが歩く音が響く。

沈黙が痛い。

アリルは顔を真っ赤にしてるし、何すればいいのかわからないしで。

気まずい。

そのまま歩いてもうアリルの部屋の前まで来てしまった。


「……もういいです」


「え、ごめん」


アリルはぷいっとあっちを向くと


「じゃあまた明日ですね、おやすみなさい」


と言って自分の部屋に入ってしまった。

うむぅ、悪いことをした気分だ。

俺は一人アリルの部屋の前で立ちすくむと少し考える。

何か……まずいことしたんだろうな、うん。

したんだろう、俺のことだから。

何したんだ俺。

というかアリルは何をしてほしかったんだろう。

分からん、分からんぞ。

考えても考えても頭からいろいろと抜け落ちていく。

ただでさえメイナの授業で頭が爆発しそうなのに。


「おやすみ」


とりあえず誰もいなくなった廊下に挨拶をして自分の部屋に戻ることにした。

結構俺の部屋って遠くにあるんだよなぁ。

恋人なんだからもう少し近くにしてくれてもいいじゃないかよう。

そんな愚痴も言ったところで部屋をあの人が変えてくれるとは思わない。


「遠い……」


おとなしく自分の部屋へと向かう。

何かしら考えない方が楽だしな、こういうの。


「眠いそして……」


少しメイナの詰め込み教育が眠気につながってきている。

あれだけのことをこの短時間で教え込まれたら頭を大量に使ったんだから眠くなって当然だろう。

少し寝る。

疲れたし。

温かい布団で眠るんだ。

ぐっすりと朝遅くまで。

そんなことを考えながらドアを開ける。


「……やぁハニー♪」


「部屋間違えたなぁ」


おとなしく扉を閉めて、もう一度部屋の番号を確認する。

うん、ここだ間違いない。


「やぁ、ハニー♪」


「なんでいるの」


もう一度確認の意味も込めて部屋の外の番号を確認する。

だが現実は間違いなく俺の部屋だってことを教えていた。

俺と仁が少し過ごした部屋だ。


「やれやれ……」


「おや、元気がないね。

 襲っていいのかい?」


「ダメだ死ね」


両手をわさわささせるセズクの頭を思いっきりはたいてやろうか。

今俺は最終兵器だからそんなことしたらたぶんセズク死ぬけどさ。


「死ねとはひどいなぁ。

 こーんなにも僕は君のことを愛しているのに」


「ありがとう死ね」


「ああ、冷たい」


めんどくさい、正直。

そんな今お主の愛の告白に付き合っている暇などないのだ。

出来るだけ勉強を積んで早く戦場に出なければ。

俺の場所はそうっすよ。

現場で泥網れになるのが一番なんです。


「ところで、波音?

 こんな遅くまで何やってたんだい?」


俺が黙り込んでしまったのを知っていてかセズクが心配そうな表情で俺の顔を覗き込んできた。

少しいろいろあったんだよ俺にも。


「遅くも何も訓練だよ訓練。

 お主こそ体の調子、大丈夫なのか?」


今説明したところでたぶんセズクは納得いかないだろう。

俺が最終兵器だなんて知りたくないに違いない。

それにほかのやつらと同じできっとセズクも俺が最終兵器だと知ったら今までと同じように接してくれなくなる。

いくら俺のことを愛してくれているといってもそれには限度ってものが付きものだろう。

きっと怖がって近づかなくなるに決まってる。


「ん?

 僕は大丈夫だよいつだって。

 波音さえいてくれればねー♪」


「おうよ」


待てよ?

逆に近づかなくなるからうれしいのか?

そっちだな、よしいうわ。


「聞いてよ、ハニー。

 僕の武勇伝。

 空を飛んでいる戦闘機あっただろう?」


「ん?

 あー、あれね。

 うん、あれがどうかしたん?」


仁が操っていたやつのことだろう。


「僕ね、あれに負けてしまったんだよ。

 いやー強かった。

 僕はまだまだ弱いってことが分かっちゃったよ。

 結構昔と比べて力が付いたと思ってたんだけどね。

 煙を吹かせるところまで持っていくのがやっとだった」


セズクは戦闘機に負けて、ボロボロの状態で病院に運ばれた。

このことを語っているときのセズクの顔は何か寂しそうだった。

自分の力を信じていた。

それなのに打ち砕かれた、といった切ない表情。

いつもなら茶々を入れるところだが入れることが出来ない。


「なんで……だろうね。

 ようやく守れると思ったらそれを超える勢いで力が出てきてしまう。

 僕は――ね。

 僕は自分が持てるすべての力を持っていたと思っていたんだ。

 でも現実は違った。

 さらに僕を上回る力なんて腐るほどあちこちにあったんだ」


セズクは俺の部屋の椅子まで移動して腰掛けた。

俺は机の上に残っていた飲みかけのジュースを手に取り、飲む。

温いオレンジの味が口の中を走り後味の悪い酸っぱさが残った。


「だからね、波音。

 少しだけ……でいい。

 ちょっとでいいから甘えてもいいかな。

 別に触らなくてもいい。

 僕の話に相槌を打ってくれるだけでいいから」


「……おう」


こんなに心から弱ったセズクを見たのは初めてで驚いた。

しかも甘えてもいい?と聞いてきたのも始めてだ。

というか、俺でいいのか。

俺男だぞ。


「これで守れると思っていたら守れない。

 するすると力は抜けていくんだ。

 もう、僕は……どうすればいいんだろう」


「…………分からない」


セズクの悩み、俺と一緒だ。

自分はどうすればいいのかが分からないのだ。


「ねぇ波音。

 波音ならどうする?」


「何を」


「これからのこと。

 僕は自信がもうないんだ。

 僕の持つ力のすべてを波音に渡したい」


弱々しく笑うセズクを俺は見ていられなかった。

これがセズクか?

あの愉快ホモ野郎なのか?

ウソだろ。


「嫌だよ」


俺はそういってセズクの瞳を見た。

セズクの驚いた表情とともにきゅっと虹彩が締まる。


「い、嫌だったかな……ごめんハニー」


「違う。

 セズク、お主何言ってんだって思ってるだけ」


震えるような声だけど俺はセズクの瞳から目を逸らさなかった。

セズクの驚きの表情がさらに驚きの表情に変わる。


「まるでお主が引退するみたいじゃないか。

 嫌だよそんなの。

 認めない」


言いたくないけど結構俺はセズクに助けられてきた。

今までずっと。

出会ってから。


「お主は俺の師匠でさ。

 その師匠が引退するなんてありえないと思うんだよ。

 死んだ、彼女さんいるだろう?

 セズク、お主が守れなかったのは知ってる。

 でもね、いつまでもそんな守る、守らないを基準にして生きるのもどうかと俺は思うよ」


残ったオレンジジュースを全部飲みほし、机の上に空の缶を置く。

金属の音がきん、と耳に響いた。


「でもね、セズク。

 それだけじゃないんだ、俺はまだお主に俺の成長した姿を見せてないんだ」


「成長――?」


「うん、驚かないでくれよ?」


そういうと俺は右手を光波共震砲に変えて見せた。

セズクの驚きの表情はもはやマックスゲージに達していた。


「え、波音!?

 最終兵器もどきになっちゃったの!?」


「今はなす、聞いて」






               This story continues.


ありがとうございました。

セズク病んでますね。

これは危ない病み方だと思います。

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