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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
ラトランな季節☆
127/210

クソゲ

「コントローラーもらってくるぜ、とりあえず。

 どうあがいてもキーボードなんかで操作できるとは思わないからな」


机の上にある本を読みあさる仁に行き先を伝える。

返事も面倒だ、と言わんばかりの勢いで俺に手を振ってくる。


「はいはい、いってら」


また俺はシンファクシのところに行くのか。

本日何回目の往復なんだ、これ。

紙を持ってシンファクシの元へ帰ってゆく。

帰るというか……。

なんというか。

どこに元帥は寝ていたっけなぁ。

仮眠室だと微妙に記憶しているわけだが。

ああ、きちんと聞いておけばよかったぜ。

微妙な記憶をもとに仮眠室へと足を向けた。

仮眠室はこの建物の隅に設けられた小さな部屋だ。

八畳ほどの部屋に二つの二段ベッドが置いてある。

同じような部屋が八つ。

合計三十二人が寝ることができる。

そこで寝る人は自分の名前を書いたプレートを入り口にかけておかなければならない。

誰がどこで寝ているのかを確認できなきゃ起こせないし、ほかの人にも迷惑になるだろう?


「えっと……。

 シンファクシ、シンファクシ……と」


扉にかかっているプレートをなめるように見ていく。

ジョンソン――違う。

マンソン――違う。

メイナ――違う。

待て。

メイナが何で寝てるんだよ。


「あ、波音。

 よ」


後ろから声をかけられたから誰かと思ったらシエラさんではありませんか。

なんか、久しぶりです。


「どうした?」


軍服のよく似合う最終兵器はにこりともせず無愛想に俺を上から下まで眺めた。

なんか変な恰好でもしてるのかしら。

やだ、怖い。


「ん、いやシンファクシを探しててな。

 どこにいるかわかる?」


「右から三つ目だと思う。

 僕は今ねーさんを起こしに来たから。

 それじゃ」


シエラは手のひらを小さくひらひら振ってメイナの眠る部屋へと入っていった。

右から三つ目――か。

さっそく行ってみることにする。

白塗りのドアノブをひねると予想よりも軽くドアは開いた。


「ん――レルバル少佐か。

 どうかしたのか?」


入ったと同時に話しかけられてびくっと驚きが背中を駆け上がった。

ベッドを覆うカーテンから首だけを出して元帥が俺を見ていた。

ばらばらといつもは整っている髪が乱れ頬は眠気で少し赤い。

ぶっちゃけエロい。


「は、報告書を持ってきました。

 これを使いたく存じます」


そういって一枚の紙をシンファクシに渡した。

シンファクシは眠けまなこでそれを受け止め目を滑らせる。


「――了解した。

 今すぐに用意させる」






「ただいまー!」


およそ三十分後。

プレイングステーションのコントローラーを持って俺は部屋に帰ってきた。

諸君、私は帰ってきたぞ。


「ん、お帰り」


手に一冊の本を持ってゆったりとコーヒーを飲んでいる仁が迎えてくれる。

さっきから俺もおぬしもやたら飲み物ばかり飲んでないか。

トイレ行きたくならないのか。


「もらってきた」


「おお。

 まっとりました」


俺は手に持ったひとつのプラスチック製のものを高く掲げた。

これであっているんだろう?


「おつおつ。

 じゃあそれで何とか飛ばせるようになっといてね。

 俺は少し用事が出来たから出かける」


用事て。

別にかまわんけども。

できればアドバイスとかしてほしいかなーなんて。


「行ってらっさい」


「おう」


仁は小さく俺にうなずくと部屋のドアを開けて出て行った。

隙間から入ってくる風が部屋の中を吹き荒れる。


「もー……」


それと同時にひらひらと部屋の中にあった資料が宙を飛んでいた。

少しいらっとしながら地面に落ちた資料を三枚に重ねて机の上に置きなおす。

手に持ったままのコントローラーのプラグをPCに差し込む。

小さく画面右下にバルーンが浮かびその中にメッセージが表示された。

コントローラーに設けられた赤いランプがちかちかと点滅して接続が完了したのを知らせる。


「さてと……」


仁が即興で作ったゲームの初めの画面を開いた。

いきなり写真で見た通りの場所からスタートする。

飛行機は四角に羽が生えたみたいな形をしていた。

グラフィックは多少荒くなってもしかたないよな……。

スタートボタンを押すと同時にゲームはスタートだ。


「ってはぁ!?」


目の前にエレベーターがあったから何も考えずに突っ込んだら速攻気体が壊れたことを知らせる表示が出た。

地下に格納庫があるということだろう。


「くそっ――」


何としてでもクリアしてやるよ。

いいよ、俺は燃えているからね、今。

止められないから。

誰にも止められないからね。

そんな感じで五回ぐらいトライして思った。

これはクソゲーだわ。

星ひとつクラスの。

絶対俺はこれ買わないわ。






「波音、ごはんだよ」


ふと背中から呼ばれて気が付いた。

もうこんな時間となっていた。

ゲームをはじめておよそ四時間がたっていた。

何とか地下から抜けれるようになっていたがそこからがまた難しい。

エンジンパワーを上げて――フラップ閉じて――。

ああ、頭痛い。

難しすぎるわ。

その辺AIに全部任せたいわ、俺は。


「ん……今行く」


適当に返事をしたところで立ち上がろうとしたらがばっと抱き着かれた。


「な、な?」


一瞬自分でも謎の声を出してしまったぞ。

確認するまでもない。

セズクの野郎だ。


「ごはんだよっ」


それと同時に息を吹きかけてきやがる。

やめろよ、うっとおしい。


「ああ、わかった、わかったって。

 今いくから、やめろもう」


頬を撫でるんじゃない。

触るな俺に、頼むから。

こんちくしょうが。


「ねぇ、波音。

 ひとつをすくったね、ハニーは」


「………?」


いちいち耳に息を吹きかけてくるな。

やめろ、もう。

頬を撫でるな。

うなじをさすさすするな。


「するとひとつを失うよ。

 その時を怖がらずに前へ進むしかない。

 わかるね?」


何を言っているんだ――?

意味深にもほどがあるというものだ。

というか、頼むから遠回しではなく普通に教えてくれ頼むから。

心からお願いしたい。


「わかるけど……。

 どういう意味なんだ?」


「―――さ、ごはんだよ。

 いこっ?」


ちなみにその日の晩御飯はハンバーグ定食だった。

デミグラスソースがかかっていて非常に美味でござった。

満足したでござるござる。






                   This story continues.

ありがとうございました。

意味深ですねぇ……。

いやはや。


引っ越しのことでばたばたしていて一日遅れてしまいました。

本当に申し訳ありませんです。

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