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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
超極兵器級な季節☆
114/210

高まってゆく戦闘体制。

艦橋内でもシンファクシをはじめこの状況を楽しんでいるものがいるようだった。


「元帥!

 敵超兵器が航空機部隊を展開!!」


レーダー担当者がレーダーを見て悲鳴を上げた。

艦橋内は電子機器の見落としがないように電気が消されている。

窓にもそとの光をなるたけ入れないように特殊なコーティングがされている。

まぁ、メイナさんはそれをぶち破ったわけなんですけど。

お陰で今はなんか明るい。

俺は、天井に貼りついたレーダー効果範囲の液晶を見上げた。

黒い画面に二つだけだった光点がどんどんと増えてゆく。

超兵器に比べ光点は小さいもののその破壊力は計り知れない。

頭の引き出しによれば昔の対戦では最強といわれた戦艦を沈めまくった実績があるのだ。

航空機による飽和攻撃に船は基本耐えれない。

まぁこのヴォルニーエルは知らないが多分……。


「いくらなんでも多いですね……。

 近くに空母でもいるのでしょう」


腕を組み知恵を絞るようにレーダー画面を見つめる。

冷静を副長は装っているようだったが顔は紅潮していた。

死と隣り合わせのこの職場は彼にはぴったりらしい。


「かもしれん。

 レーダー、範囲を広げてみろ」


「はい!」


シンファクシがレーダー担当者に話しかけ光点の後ろの彼方まで範囲を広げた。

その様子には全てにおいて無駄がない。

初心者の俺がここにいていいのだろうか。

詩乃でも身に行こうかしら。

思考半ばのせいか


「シエラは?」


するどく俺に問を突きつけてきた元帥に


「は……。

 不明です」


申し訳なさそうに答えることしか出来なかった。

なんか、情けない。

シンファクシは低く唸ると考える姿勢に入る。

いかに自分がぬるま湯につかっていたかがよく分かる。

帝国郡の兵士としてこのお方は小さいときから苦労を積んできたんだろう。

金髪の中に一本の白髪を見つけてしまい、ふとそんなことを思ってしまった。

そんな折、くいくいとメイナが俺の裾を引っ張った。

なんだ、どうした。

このクソ忙しい時に。


「私行って来て?」


どこへ。


「戦いに、ってことか?」


黙って首を縦に三回振った。

むずむずとさっき割った窓から出て行きそうだ。

そんなメイナをシンファクシは「待て」と押し止めた。


「シエラとメイナ。

 イージス最大時の効果範囲は?」


その言葉を加えながらシンファクシは電卓を取り出した。


「んー……と」


メイナは少し考えると


「約六百……ってとこかな」


と両方の指を三本広げてシンファクシに見せた。

六百メートルってことか。

まぁ本来最終兵器のイージスは自分だけを守れればいいからなぁ。

あまりそう広くは――。

広いけどな、十分。

精神的ぱうわぁって説明を受けた気がする。

それだけで十分すごい。


「二人にはこの艦の防御に徹してもらう。

 イージスで守ってくれ」


元帥は最終兵器の肩を叩いてウインクした。

イケメンすぎるだろ。


「え……」


嫌そうな顔をしてメイナは頬を膨らませた。

戦いたいらしい。

うずうずと手を広げたり閉じたりしてる。

生まれながらの最終兵器はすごい。

普通は戦いなんてしたくないだろ。


「この艦のイージスが消えた今、敵は結構な戦力を投入してくるだろう。

 我々が乗っているのが超兵器ならなおさらだ。

 きっと敵はこの攻撃にこの海域は愚か

 近くのほとんど全ての戦力を注ぎ込んでくるはずだ」


シンファクシは一度言葉を切ってモニターの被害状況を示す図を見た。

被害甚だしい。

黒煙が出ているところもまだあり、余計にそれが痛みに拍車をかけた。


「敵の超兵器が量産されたのならそれも編入してくる、と考えて不自然はない。

 艦を浮上させ敵の出方を見る!

 ……わかったなメイナ。

 シエラにも伝えてくれ。

 イージスを張って、守ってくれ……。

 この艦を、部下を……」


シンファクシのお願いにメイナの戦闘意志が屈した。

膨らませた頬を縮ませ、ため息をつく。


「分かったわよ……」


やれやれと、手をひらひらさせて窓から最終兵器は出て行った。

割れた窓、手に刺さらなかったのか。

まあいい。

それは置いておこう。

よいしょ。


「……で。

 てめーはいつまで俺にしがみついてんだ?」


問題はむしろこっちだ。

気持ち悪いんだよおばか。


「あ、ばれちゃった?」


セズクさん、てへへぺろ。


「離れろ」


気持ち悪い。

ただそれだけだ。

あと執拗に耳に息を吹きかけてくるな、やめろ。


「ヤダ☆」


「は?

 何で?」


お前、流石にそれはいらっとくるぜよ。

お主じゃなくてお前だからね、もう。


「ヤダカラ☆」


理由になってねぇ。

きちんと理由で述べろ。

日本語かベルカ語でいい。


「いいじゃない、別に。

 減るもんじゃないし……ね?」


いや、減る。

俺の中のプライドが減る。

大根おろし機にかけられた大根みたいに。

わけわからんたとえだ。

そういえば豆知識だが大根おろしをするときはゆっくりすること。

早く終わらせようとマッハで擦ると辛くなるぞ。

何でかは知らん。


「うるさいぞ、二人とも。 

 邪魔にならないようにこれの実験台にもなってくれ」


シンファクシにぽんとボタンを渡された。

実験台って……。

渡されたボタンを眺める。

普通に四角い台があり、そこに一つの小さな赤いボタンがついていた。

何だこれ。


「押してみろ」


言われるがままに押してみる。

ぱかっ、と天井についていた金属箱が開き中からにょー、とヘルメットみたいなのが二つ伸びてきた。

ヘルメットを手に取る。

頂点部から一本のケーブルが延びて天井に繋がっている。

配線が絡み合い、なんかアンテナみたいなのもついている。

スイッチも一つ。

あやしいっす、なんですかこれは。


「これをかぶれと?」


聞いてみた。

これを?

明らかにマッドサイエンティスト臭がする物質なんですが。

俺これ被った瞬間にビリビリとかやめてくださいよ、元帥。


「そうだ」


ためらいもなく部下に実験を強いる上司ってどうなんですか。

労働条件的に。


「いやいやいや」


拒否。

下手すれば俺死ぬかもしれない。

ちなみにこの会話の間も俺はセズクに抱きつかれてる。

誰かなんとかしろ。


「大丈夫だ。

 安心してつけろ」


って言われましても……。

シンファクシは、俺の手からヘルメットを奪い取った。

セズクを蹴って俺から引き剥がし


「この船に元から備わっている機能をちょっと……な。

 もともとこの船はひとりだけで扱っていたらしく……。

 『核』と呼ばれる人たちがな。

 その機能を少しだけ修復できたからこの際、試してみようと思ってな。

 レルバル少佐に人殺しは出来ないだろうから……。

 セズク、お前がやってみろ。

 レルバル少佐はこいつの補助をしてくれればいい」


と言葉をならべセズクにヘルメットを押し付けた。

昔はこの巨大艦をたった一人だけで……?

すげぇな、それ。

なんか、一回だけ聞いたことがある。

もうあまり覚えてないけどな。


「これをつければいいんですよね?」


ヘルメットを回して変な物がないか確認している。

やっぱり疑うよな、普通は。


「そうだ」


はやくつけろ、とせかすようにシンファクシは返事をした。


「やってみますか……♪」


セズクは近くの椅子を引き寄せ、そこに座った。

頭にヘルメットを乗せて、目をつぶる。


「スイッチを入れろ」


シンファクシの静かな司令でセズクのヘルメットにスイッチが入れられた。


「………!!?」


はっ、と息を呑むセズク。

目をつぶっている。

つまり耳とか何かで感じた、ってことか?


「これは……?」


何だ。

すごく気になるじゃないか。

……気になるじゃないか。


「外……?」


外?

そと?

外がどうして見えるのさ。


「元帥!

 第一砲塔のコントロールが効きません!

 制御神経が何かに乗っ取られたように……!」


急にオペレーターが金切り声を出した。

弾かれたように副長が窓へと走ってゆく。


「げ、元帥!

 一番砲塔が……!」


副長が窓を除いた瞬間血相を変えた。


「どうした?」


シンファクシは席を立つと副長の元へ歩く。

そしてにやりとほくそえんだ。

俺もメイナが割った窓から首を出した。

一番砲塔というからには艦首付近だろう。


「なんじゃありゃ!」


一番砲塔がぐいんぐいん動いていた。

右へ左へせわしない。

生き物のように砲身をめぐらせ、上下に俯角を合わせている。


「敵との距離およそ二万!

 戦闘態勢をとってください!」


レーダー担当者の搾り出した声により全員が我に帰った。

そうだ、こんなおもちゃで遊んでいる場合じゃない。

窓から離れようときびすを返す。

ぴったりのタイミングで一番砲塔が火を吹いた。

目を焼くような三本のオレンジ色の光が伸びてゆく。

その先には空に黒いしみとなり始めた一点がある。

しみの前にオレンジ色の光はとどまると綺麗に広がった。

青空の中輝く花火のように。

五つほど煙を引いて――敵機が落ちてゆく。


「これがベルカの……」


小さく俺は呟いていた。

畏怖の対象だろ、こんなの。

セズクがやったんだろ?


「機関圧力よし!

 元帥!」


艦橋内に溢れる活気。

それは生と勝利に固執している者の息吹。


「うむ。

 ヴォルニーエル、浮上開始!

 エンゲージだ!」


ぐん、と体が斜めになり体が後ろに押し付けられた。

海を蹴り、ヴォルニーエルが空へと飛翔したのだ。

水蒸気が巻き上がり空を曇らせる。

光を纏う翼はぼんやりと青空の中でもはっきりとした存在を持っている。

超兵器は光の線となり空へとその身を投じた。

窓から急いで離れ、俺も残っているもう一つのヘルメットを被った。

横にある小さなスイッチを入れる。

それを見つけたのかシンファクシが説明してくれた。


「レルバル少佐。

 貴様のはいわば『目』とでも言うべきものだ。

 その『目』はまさに万能だ。

 それをつかってセズクに目標を指定してやれ」


目ね。


「セズク!

 一番砲塔は貴様の物だ!

 好きに使うがいい!」


シンファクシは楽しそうな口ぶりだった。

実際わくわくしてるのかもしれない。

シンファクシ元帥、はじめもっと優しい言い方だったじゃないですか。

貴官、とか。

気がついたら貴様になってるんですけど、何でですか。

ぶつぶつ思いながらも俺はヘルメットをつけると目を閉じた。

金属製のぽつんと出っ張っているスイッチを押す――前に。

椅子、椅子を探し座った。

シートベルトなんかがないのが少し残念だがまぁいい。

もう一度目を閉じてヘルメットについたスイッチを押した。


「……――!!!」


頭がきゅっと吸い取られるような感じがした。


「高度、五百に到達!」


「よし、上昇中止!

 水平飛行と共に巡航速度を維持だ!」


「了解!」


シンファクシたちの声は聞える……。

だけど、視界がおかしい。

俺は艦橋にいたはず……なのに。

どうして甲板にいるんだ?

自分の周りに屈強な男達が機銃を持って空を睨んでいる。


「あの……」


無視される。

そりゃそうか……。

今俺の体は艦橋にあって、ここにあるわけじゃないからな。

空とか飛べるのだろうか。

体は艦橋にあるんだ。

落ちたところでヘルメットを外せば問題ないだろう。

思い切ってスピードをつけて……そそりたつ舷側から飛び降りた。

落ちない。

少し高いところにポツンと置かれた。

ためしに右足を出してみる。

落ちない、しかも前に進める。

左足……。

風の囁き、海の声、雲の気配。

全てを感じることが出来た。

後ろを見るとヴォルニーエルの巨大な船体が空気を切り裂いて昇っていくところだった。

黒煙をうっすらと引き、凹んだ装甲が痛々しい。

置いていかれる――、という危機感と共にジャンプしてみた。

空を飛ぶ感覚、とはこういうことなのだろう。

自分が思うままに動けた。

ヴォルニーエルが蹴った海が蒼くにごりはるか下に渦巻いていた。

歩くようにして空を俺は移動できた。

最終兵器の気分だ。

そっと小走りに空を飛び、連合郡戦闘機まで行ってみた。

セズクに目標を指定するのが俺の役割だからな。

こうやってうかうかと遊んでいるわけにはいかない。

思うだけで彼方だった戦闘機は間近に迫っていた。

そっと寄り添うようについていく。

たくさんのミサイルや爆弾をつんだすらっとした攻撃機だ。

マルチロールとでも言うべきか。

それに一人の男が乗って操縦桿を握っている。

無線つきのヘルメットにせわしなく話しかけ笑っている。

今から人を殺しに行くというのに……。

そっと、キャノピーを触る。

冷たいが中の人の熱を感じることが出来る。

それと同時にぞっとした。

これが、『目』か。

エンジンが熱い排気を出して鉄の鳥を一歩、一歩と前へと押し出している。

その足をくじく。

セズクに目標を指定するタグをこの戦闘機につけた。






               This story continues.

ありがとうございました。

クリスマスですね。


プレゼントですか?

ポイントをry


冗談です。

読んでいただきありがとうございました。


あ、プレゼントはポイントでry

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