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第4話 王都脱出

 どれくらいの時間が経ったのだろうか?

 クロエは、ハッと目を覚まして、ベッドから起き上がった。

 窓の外は既に暗くなっており、夜になっていた。


「・・・生きてる?」


 犬の石像を壊してしまい、中から黒い霧が出た所までは思い出せる。

 気を失う前は、毒だと思ったので、死を覚悟したが、何とか目を覚ます事ができてホッとしていた。

 しかし、鏡に映っている自分の姿を見て、硬直した。

 

「っ!?」


 一瞬、大声を出しそうになるのを、口を押さえて、無理矢理我慢する。

 今叫んだら、人が集まってきてしまう。

 それだけは避ける必要がある。


「・・・嘘でしょ?」


 大鏡に映っていたのは、いつもと同じ可愛らしいクロエの姿だった。

 しかし、いつもと違う部分もあった。



「犬耳?」


 クロエの狐色の頭の上には、同じ狐色の毛に覆われたフワフワな犬耳がピンっと立っていた。

 一瞬、作り物かと思って、恐る恐る手で触ってみる。


「ひゃぁっ!?」


 クロエは短い悲鳴を上げてしまった。

 犬耳には、しっかりと感覚があり、触るとくすぐったい。

 しかも、モフモフしていて気持ちが良い。


「待ってよ・・・嘘だよね?」


 クロエは、お尻にも感じる違和感に、震えながら振り返り、自分のお尻を確認した。


「尻尾も生えてる」


 スカートを押し上げてパンツの隙間からはみ出している狐色の長い尻尾は、フリフリと横に振っており、しっかりと感覚もあった。


「私の身体に、何が起こったの?」


 自問してみるが、原因は明白だ。

 ダンジョンで手に入れた犬の石像のせいだと予想は付いた。

 恐らく、石像を破壊してしまった事で何らかの呪いが発動したのかも知れない。


「これって、元に戻るんだよね?」


 もし、一生この姿のままだとしたら、貴族社会で生きていく事は出来なくなる。

 周りから嘲笑のネタにされるのは、間違いない。

 もしかしたら、魔物と認定されて討伐されたり、見せ物にされるか実験研究の対象になる可能性も捨てきれない。

 いくらハートフィリア家が庇っても、王家には逆らえないだろう。


「来月の婚約式はどうすれば?」


 いや、今はそれどころでは無い。

 こんな姿のクロエをクロイツェル家が婚約者に認めるはずが無いので、婚約も破棄されるだろう。

 それは、クロエも願っていた事だが、この様な形での婚約破棄は望んではいなかった。


 鏡の前で口を開いてみると、若干だが、牙が伸びている気がする。



 爪も心なしか鋭くなっているし、身体機能も上がっている気がする。


「ウェアウルフになる呪いとかじゃないよね?」


 ウェアウルフやライカンスロープになった人間は、基本的に元には戻れない。

 しかも、人喰いの魔物なので、討伐対象だ。


「こんな姿、見せれないよ」


 きっと、ジョシュアがクロエの姿を見れば、彼は後悔し、苦悩するだろう。

 自分が渡したアイテムで娘が呪われて、討伐されるかも知れないのだ。

 こんな姿を家族に見せるわけにはいかないと思ったクロエは、家出する事を決意した。


 父親に渡されたアイテムで呪われたと知られるくらいなら、ロイドと婚約したくないというクロエの我儘で家出したと思われた方がマシだ。


「そもそも家出する覚悟だったし、準備しておいて良かった」


 クロエは、3日前から家出の為の荷造りは済ませてあった。

 クローゼットから大きなカバンを取り出して、ドレスを脱ぎ捨てて、冒険者活動の時に着ている服装に着替えた。


 頭は黒いフードを被って耳を隠し、黒い仮面を付けて顔を隠した。

 裾の長いローブを羽織り、尻尾を収納すれば、犬の特徴は、誤魔化せそうだ。



「・・・ごめんなさい、お父様」


 クロエは、父親の居る部屋に向かって頭を下げて謝罪すると、荷物を持って窓から飛び降りた。

 既に空は暗くなっており、クロエの姿は闇に紛れて見られる心配は無い。


「風よ」


 魔力を発動すると、クロエの全身を風が包み込み、風のマントを纏った。

 風の力で軽くなったクロエは、一気に空高くまで跳躍して、夜の街に消えた。


「私が居なくなった事は今夜中にバレるわね」


 クロエが夕食に来なければ、屋敷の人間は、クロエを探し始めるはずだ。

 家出した事が分かれば、ハートフィリア家は全力でクロエの行方を探すだろう。

 そして、遅くとも明日にはロイドがその事実を知ることになる。

 公爵家の婚約者が行方不明となれば、公爵家の騎士団が動き出す。

 流石にクロエも、騎士団から逃げ切るのは難しいし、王都を封鎖されれば、脱出も難しくなる。


「今のうちに出来るだけ遠くに行こう」


 クロエは、直ぐに東へ向かう乗り合い馬車を見つけて、乗った。

 馬車の中には先に6人くらいの乗客がおり、クロエは端っこの席に座る。

 普段使っている最高級のハートフィリア家の馬車とは違い、よく揺れるし、シートは硬いのでお尻が痛いが、今は贅沢は言えない。

 行き先を知られるわけにはいかないので、極力目立たずに、王都を出る必要がある。


 幸い、かなりの金額のお金や宝石を持ってきたので、お金には困らないし、荷物も収納ボックス機能付きのカバンなので、ちょっとした倉庫並みに荷物が持ち運べる。


 目指す先は、シエロ王国の東の果てにある街イステリアだ。



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