表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/29

第2話 すれ違い

 ロイド・クロイツェルは、浮かれていた。

 何故なら、長年想いを寄せていた相手と遂に結ばれたからだ。

 相手はもちろん幼馴染のクロエ・ハートフィリアだ。

 1週間前に正式に婚約の申込状を送り、一昨日、正式にハートフィリア家から受諾の手紙を受け取った。


 つまり、クロエ・ハートフィリアと正式に婚約関係になったと言う事だ。


 クロエとは、5歳の頃からの付き合いだが、彼女はロイドにとって最高の婚約者だった。

 美しい狐色の髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ可愛らしい容姿は勿論の事だが、優しく、全てを受け入れてくれる様な寛容さを持っており、絶対にロイドに逆らわず、従順な性格をしているので、裏切る心配は無い。

 それに、何よりもその財力だ。

 世界最大の魔鉱石の鉱山を保有しているハートフィリア家は、有り余るほどの財力を持っている。


「ハートフィリア家の財力とクロイツェル家の権力と武力が合わされば、王家を超える力を手に入れられる・・・もう直ぐだ、もうすぐ、あの白い肌も、柔らかい唇も、全てが僕のモノになる」


 クロエは、清楚で美しく着飾っているが、ロイドにはその純白な外見の裏側にある陵辱願望とも言えるドス黒い欲望が垣間見えていた。


「クロエ、君は最高の女だ」

 

 ロイドは、下卑た笑みを浮かべて、1ヶ月後に開催される予定の婚約式の予算資料に印を押した。


「大切な僕達の婚約式だ、精一杯、盛大な式にしてあげるからね」


 その頃、ハートフィリア家では、当主であるジョシュア・ハートフィリアが忙しそうに部下に指示を出しながら、頭を悩ませていた。

 クロエと同じ狐色の髪にエメラルドグリーンの瞳の端正な顔立ちの男は、急いで屋敷を出ようとした所で娘のクロエと出会った。


「そんなに慌てて、どうしましたのお父様?」


 可愛い実の娘であり、クロイツェル家に嫁に出す大切な娘を見て、険しかったジョシュアの表情が緩んだ。


「ああ、新しく発掘していた鉱山で、ダンジョンを掘り出してしまったんだ」


 ダンジョンとは、魔物の一種であり、洞窟や建物に魔力が宿る事で意思を持ち、ダンジョン化する。

 ダンジョンは、人間を集める為に、強力な魔導具や宝を創り出す一方で、同時に魔物を創り出し、侵入者を殺して養分にする危険な存在だ。


「それは大変ですね、では、これから冒険者ギルドへ?」


 鉱山にとってダンジョンは天敵の様な存在だ。

 ダンジョンを掘り当てると中から魔物が溢れ出してくるので、鉱山で働く人間に危険が及ぶ可能性が有り、発掘作業を中止しなければいけない。

 しかも、ダンジョンは成長するので、放っておくと、徐々に鉱山を侵食していき、ダンジョン化してしまうのだ。

 ダンジョンを破壊する為には、コアとなる魔石を破壊しないといけない。

 基本的にダンジョンの攻略は冒険者ギルドに依頼をする必要があり、クロエに言われた通り、ジョシュアは冒険者ギルドへ向かうつもりだった。


「あ、ああ、これから冒険者ギルドへ向かう、夜は遅くなるから夕食は先に食べていなさい」


「分かりました、お気を付けて行って下さい」


 ジョシュアは、頷くと急いで屋敷を後にした。


「どうしよう、言いそびれちゃった」


 父親を見送ったクロエは、いつもの砕けた話し方に戻して、溜息を吐いた。

 社交界や世間では、クロエは清楚な淑女を演じているが、屋敷で働く人間達にはそれが演技だとバレていた。

 クロエは、どちらかと言うと、読書やお茶をするよりも、剣を振ったり、森を駆け抜けている方が性に合っている野生児だった。


 だから、お茶会や舞踏会にはあまり参加せず、身分を隠して冒険者ギルドで活動をしているくらいだ。

 風の魔力を持つクロエは、戦闘もそれなりに強く、冒険者ランクもCにまでなっていた。

 冒険者の仕事はフードと仮面を被って活動しているので、顔はバレていないし、身内にも秘密にしているクロエの趣味みたいなものだ。


「婚約破棄はやっぱり無理だよね」


 クロエがジョシュアに伝えようとしたのは、ロイドとの婚約解消の件だった。

 やはり、クロエの意志を確認しないで、勝手に婚約を結んだ事には納得がいかず、ジョシュアに直談判しに来たのだが、ダンジョンのトラブルが思った以上に深刻だったので、話せずに終わってしまった。


「どうしようかな、この際、家出して冒険者になってみるのも良いかな?」


 今の様な贅沢な暮らしは出来ないが、1人で生きていく分には十分な収入を冒険者の仕事で稼いでいけるクロエは、腕を組んで悩んだ。

 今の暮らしに不満は無いが、別に贅沢な暮らしが好きなわけでは無いし、冒険者として野宿したり、自然の中で過ごしたり泥まみれになる事も嫌じゃ無い。

 貴族令嬢らしくないと自分でも思うが、クロエは、自由な生き方に憧れていた。


「お父様が帰ってきたら、また話してみよう」


 クロエは、ジョシュアと話してダメなら、家出をする覚悟を決めた。


 そして、部屋に戻り、荷造りを始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ