神殺しの副作用②
「ふぅ、一旦、か」
私は街から少し離れた所にある小さな喫茶店の、端の方にある席に座る、そう
ここは私、行きつけの喫茶店だ、そう、それも神殺し事件より前からの
神殺し事件以来、悪魔を全員殺すために旅をしている私は
休憩がてら立ち寄る事が多い
ちなみにお客さんは自分以外にはいない
「ネモ、いつものココアを、後、ダダラブある?」
「ないわよ」
「そうか、なら仕方がない、リンゴウ鳥の甘辛焼きで」
「はいはい、というか、いつも、それ、ね」
「まぁ、そうだ、ね」
「早く、忘れなさいよ、あなたはもう、あの時のあなたじゃ、無いんだから」
ネモが私の顔を見ながら、そう言った
何か私の顔についているのだろうか、悲しそうな表情をしている
「無理だ、一生、私は今でも弱虫だから」
弱虫だから、逃げたから、忘れる事なんてできない、忘れたら駄目なんだ
そう言うと、ネモは悲しそうな顔を少しした後
ココアを持ってきて、呆れたような表情と声色で
「はい、ココア」
そう言った
私は、そのココアを少し見つめる、ふわりとした湯気が自分の顔に纏わりついた後
その湯気が晴れたのを確認し、すっとココアを持ち、飲む
そして、置く
「ネモ、伏せて」
「は?」
ネモがそう言った、その声と共に、店のガラスが全て割れる
店の壁から柱、床から何もかもがすべて消える
そして、悪魔が現れる
「ギャハハハッハハハハ」
「サイッキョ~~~ウ」
悪魔が両手を上げながらそう叫ぶ、翼を携え、ヤギのような角が生え、黒々とした体の悪魔
かなり大柄である、家一つ分くらいの背丈だ
「死んだ?wあいつ、死んだ?w」
「サイッキョ~~~ウッッッッ」
両手を上げ、舌を出し、喜ぶ、そんな悪魔を見て、一つの光が飛び出す
「残念ながら、死んではいないよ」
「空を絶つ刃」
そう唱えた、後二本の指に魔術式を纏わせ、切る
空間を切り裂く、刃が悪魔に向かって飛んで行く
「ウギャァァァァアアアアア」
それを喰らい、悪魔はそう叫ぶ
「悪魔の力、か、どこから持ってきたのか知らないが」
「ウルサイ、ダマレ」
「煩いのはそっちだろう」
「ウグアア、グルグルア~」
「天を穿つ雷」
「五重奏」
悪魔がそう唱えると
空中に、五つの魔術式が現れ、そこから雷が放たれる
「第二くらいか」
「もう一つの手」
「五重奏」
私がそう唱えると、五つの魔術式から、黒い手が現れ、雷を消す
それとともに、悪魔の方に向かう
「封じろ」
私がそう言うと、悪魔の体に黒い手がまとわりつく
「これで、終わりだ」
「空を――」
「いや、駄目だな、母体ごと斬ってしまう、なら」
「あまり使いたくはない、だが―――」
そう言いながら、刀に手をかける
そして、『抜刀』する
「『魔を断絶する刀』」
ある悪魔によって創られた刀、その名の通り、魔を断絶する力がある
代償を払う事によって、その能力を行使することができる
その代償とは、使用する者の『魂』である
平たく言えば、命、である
その刀を抜刀した瞬間、その代償は払われ、目の前にある、魔を断絶する
それに、見境は無い、使用者すら対象の設定はできない
気づいたときには、もう、断絶している―――
夢を見ていた、ずっと、一つの感情だけが頭にこびりついて
肥大化して、独り歩きしてる、夢を
自分の体じゃないみたいに、勝手に、感情だけに踊らされている、夢を
ああ、夢じゃなかった、みたいだ
「起きた?」
私の眼の前に、あの男がいた、憎くて憎くて堪らなかった男が
覚えている、自分が何をしたのか、誰が救けてくれたのか
少し、気になって、口に出してみた
仰向けになって寝ている私を、上から覗いている、彼に
「なんで、私を、助けたの?」
それに対し、男は少し驚き、少し考えた後、こう言った
「死ぬのって怖いだろ?」
「だからだよ」
その解答を聞いて、私は笑った
色んな疑問が沸いたが、多分彼に何を言っても通じないから諦めた
「ちなみに、僕、もう―――」
そう言って、男は倒れた、眠っているみたいだ
力を使い果たしたのだろう、仕方ないので自分の家のベットまで運んだ―――
悪魔の力を使って、倒れて寝た事だけは覚えている
だが、ここはどこだ、家、である事は分かる
「あ、起きたの?」
女の声がする、アリアだ
「ここは?」
「私の家」
ああ、そうか、運んできてもらったのだ
「すまない、ありがとう」
「大丈夫、お礼をしたいのはこっちだから」
アリアの声が聞こえる方を見ると、何やら忙しくキッチンを走り回っている
それと共に、いい匂いがこちらまで漂ってきていることに気づく
「はい、これ助けてくれたお礼に」
アリアはそう言いながら、テーブルに料理を置く
「これは?」
「これはね~私のおばあちゃんが発明した、ダダラブっていう―――」
「これが、これがダダラブなのか?」
アリア、彼女の説明に僕は割ってはいる
目の前にある料理、それが私が追い求めてきた物だと、分かったからだ
「え?知ってるの?」
雑音は聞こえない、目の前にある料理
それを見た瞬間、0に等しかった食欲が湧きだし、止まらない
(スープ?意外だな、団長は肉料理が好きなのに)
そんな事を思いながら、私はスプーンを持ち、スープをすくう
そして、口に入れる
すると、口の中に、広がる
それは温かみ、ほっこりとした、やさしい甘みが広がる
直ぐに私は、真ん中にある具材、恐らく肉、だろうか
それにスプーンを入れる
すると、すぅーっと入っていく、それで肉の柔らかさを実感する
そして、また口に入れる
まず食感、ホロホロと崩れていき、口の中で溶ける
少しの筋もなく、よく煮込まれている事が分かる
ああ、これが、これが、団長が、セレナさんが愛した、料理、、
「どう?お口に合う?」
そう声かけられ、ぼーっと、この料理を味わうという事以外を忘れていたことに気づく
「ああ、すまない、とても、おいしい」
「よかった、おばあちゃんも喜ぶよ」
「おばあちゃん、ああ、そういえば、この料理は君のおばあちゃんが―――」
「あれ?」
僕はそう言いながら、自分が持っていたスプーンを落とす
そして、重大な事実に気づく
「なぁ、君、名前は?」
「名前?アリア、だけど」
「違う、フルネームで、だ」
「あーそういう、アリア・ホワイト、だけど」
彼女がそう言った瞬間、点と点が線でつながった感覚を味わった
そして、それと共に頭が真っ白になった
アリア・ホワイト、彼女は、彼女は―――
セレナさん、団長の娘、だ
僕のせいで、僕のせいで死んだ、団長の
責任を、後始末をしなければ
この子を守る、いや守らなければならない
そう、私は決意した
そして、この物語は始まった
キャベツとレタスの見分けがつきません
どうも、孤宵です
ここまで読んでいただきありがとうございました、もしよろしければ
・ブックマークに追加
・広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価
をしていただけると、とても喜びます