◆甘々デートは続く
【DEAD END】
その文字がデカデカとスクリーンに映し出され、映画がエンディングを迎えていた。
……え、終わったの!?
終盤――主人公の仲間たちは次々に喰われ、ゾンビとなった。
だが、主人公だけは“ゾンビを眠らせる力”で一人だけ生き残ってしまった。孤独にさいなまれた主人公はついに銃を咥えて自殺……したように見えた。
ただ銃声だけが鳴り響いてフェードアウト。
「えぇ……」
「お、終わったね、正時くん」
だが、エンディング終了後に告知が入った。
あれ、まだあった。
『――彼は帰ってくる』
その文字が映し出されて今度こそ終了した。
えっ、まさか主人公生きていたの!? てか、続くんかいッ!
続編を見るかどうか分からんが、映画館を後にした。スッキリしない終わり方だったが続くのなら仕方ないのかな。
最近の映画は、最後に続編予告があるから油断ならないな。
「さて、映画も見終わった。灯、どこか行きたいところある?」
「選んでいいの?」
「ああ、ここから先は選択権を委ねるよ」
「ありがと。じゃ~、あそこかな」
「あそこ?」
「行ってからのお楽しみ!」
灯が行きたいところ……?
どこだろう。
甘いスイーツとかお菓子でも買いにいくのかな。それともゲーセンとか。なんにせよ、楽しみである。
ショッピングモールの馬鹿広い通路を悠々と歩いていく。
土曜日のせいか活気があって、たくさんの人たちとすれ違う。それにしても、どこへ向かっているんだ。
不思議に思いながら、灯の後をついていく。
すると、ある場所に辿り着いた。
「……んぉ?」
思わず変な声が出る俺。
こ、ここは……!
店の名前を見てハッキリと分かった。
【ガチャ専門店】
おぉ、これか!
「ここ! これ凄くない!?」
灯がテンションを爆上げさせる。俺もガチャガチャの筐体の多さに度肝を抜かれた。な、なんだこりゃ――!?
十、二十なんてものじゃない。
通路の奥までビッシリと並ぶガチャガチャ。
いったい、いくつあるんだ……!?
百はあるんじゃないか。
綺麗に並べられており、様々な種類の商品あった。へえ、こりゃ凄い。圧巻だ。
子供から大人までが夢中になってガチャガチャを回して引いていた。
料金は百円~千円と幅広いんだな。……って、千円のガチャもあるんだな。高すぎる気がするが、どうやらゲーム機とか当たる闇ガチャらしい。
ギャンブル性の高いガチャは置いておき、普通の方だ。
「なにか欲しいものがあるの?」
「これこれ」
それは『ナゾガチャ』という怪しげな内容なガチャだった。黒いカプセルだから中身が見えないのか。完全ランダムというわけだな。
一回二百円となぜか良心的。あんまり良いのがでないのかな?
「やってみるか」
「うん」
俺は財布から硬貨を取り出し、投入口へ入れた。
「灯、奢りだ」
「いいの? なんだか悪いよ」
「いいのさ。一回だけだが」
「ありがと」
嬉しそうに微笑む灯は、ガチャガチャを回した。カプセルがコトリと音を立てて排出された。
それを開封する灯。
中身は……。
「え、それって……」
「今、流行りのゆるキャラ『ジイかわ』だね!」
ジイかわ。
ジジキャラで丸っこいゆるキャラだ。なぜか世間で人気を博し、物凄いメディア展開を果たしている。漫画やアニメまで連発している人気作だ。
「思ったより良いのが出るんだな」
「当たりといえば当たりかな」
「俺もやってみるか」
二百円を投入し、俺もガチャガチャっと回した。
黒いカプセルを開封。
すると……。
「正時くん、それ……」
「ああ、これは……ナンダ?」
緑色の文字で『ノヴァ』と刻まれていた。
う~ん……分からん。
「わ! それはプロレスリング・ノヴァのアクセサリーだね! いいな~」
「え? 灯、これ知ってるの?」
「うん。昔は有名だった団体だね。わたし、よく見に行ったんだよね……」
あれ、妙にテンションを下げる灯。なんだろう。これと何か関係があるのだろうか。……ともかく、これはプレゼントしてあげようと思った。
「ほら、灯」
「くれるの?」
「欲しそうにしていたからさ」
「正時くんがこれを当てるとは思わなかったけど嬉しい」
灯の『ジイかわ』とトレードした。
それにしても、あのノヴァが出た瞬間、灯の様子がおかしかった。どうも気になるな。
トイレへ行くふりをして俺はスマホで調べた。
……ん?
社長の名前が『三沢』じゃないか。
どういうことだ!?
いや、まさか灯が格闘技にめり込んでいる理由って、そういうことなのか。




