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◆私を抱いてくれれば全てを許す

 昼休みになり、黒部さんが俺の元へやってきた。


「熊野くん、誰か呼んでるよ」

「あ、ああ……?」


 誰か?

 誰だ?


 三沢さんと一緒にお昼ごはんと思ったんだがな。


「すまない、三沢さん」

「うん、待ってる。あとでね」


 少し待ってもらうことに。

 俺は廊下へ向かった。



 すると、そこには……瀬戸内さん!?



「久しぶり、熊野くん」

「い、今登校したのかい。なんでこんな中途半端に」

「ようやく準備が整ったからね」

「準備? なんのことだい?」


「それは秘密。それより……」



 瀬戸内さんは大胆にも抱きついてきた。


 んなッ!



「今更なんだよ」

「……最後のチャンス。もう一度私と付き合ってくれるのなら……不幸な目には遭わせない」


「なにを言っている……」


「このまま私を抱いてくれれば全てを許す」



 ふざけるな、ふざけるな!!


 君は後輩とヨロシクやっていたじゃないか。


 なにを今更……!


 もう元には戻れないんだ。

 それに俺は三沢さんのことが好きなんだ。この気持ちに嘘はつけない。



「瀬戸内さん、君とやり直すことは一生ない」


「……そう。それが熊野くんの答えなのね」


「ああ。嫌がらせなら止めておけ。古賀さんや青井先輩のように停学処分になるぞ……!」


「構わない。もう学生生活に未練なんてないの。熊野くん、あなたを絶望のどん底に叩き落とせるのなら……なんでもするわ」



 俺の耳元でそう囁く瀬戸内さん。俺は怒りが沸いて彼女から離れた。



「もういい。話したくない」

「ふふっ。じゃあ、地獄を味わうがいいわ」


「なにをしてくるか知らないけど、全部阻止してみせるさ」


「それは無理よ」


「無理じゃないさ。それに、三沢さんに手を出したら……いくら君でも許さない」


「それはこっちのセリフよ」



 瀬戸内さんはようやく諦めたのか、去っていく。

 最後まで俺を睨んでいた。


 いよいよ動き出すのか。


 警告してくれるのなら、逆に動きやすくてありがたい。


 なにをしてくるのか分からんが、全部止めてやる。俺はもう以前の俺ではないのだから。


 三沢さんのところへ戻ろうとしたが、またもや黒部さんが現れた。今日はよく絡んでくるな。


「ねえ、熊野くん」

「なんだい、黒部さん」

「……瀬戸内さんとはどうだった?」

「どうだったって……。なんで気にするの?」


「それは……」

「それは?」


「実はね。ちょっと小耳に挟んだというか、偶然聞いちゃったんだけどね」


「うん」


「瀬戸内さんと付き合っている後輩、一年の白石くんって言うんだけど……その子、別の女の子と付き合ってるみたいだよ」


 別の女の子? つまり瀬戸内さんではない女子ということか。


「マジか」

「らしいよ。だから瀬戸内さん、精神的におかしくなってそれで熊野くんと元に戻ろうとしたみたいだけど……ほら、三沢さんと仲良くしていたから」


 その光景を見て恨みをもったということかな。古賀さんと同じってことかな。

 いや、でも古賀さんは恨みというよりは、三沢さんに対する陰湿なイジメだった。あれはもう次元が違う。


「そうか。それで恨まれてもな」

「そうだよね。とにかく、気をつけてね」


「情報をありがとう、黒部さん」


 なんにせよ、警戒しておくしかないか。

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