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朝の鳥

作者: naro_naro

 昨夜の焼き鳥の残りがパックの中で冷えていた。みんなそれぞれ行きつけの店の焼き鳥を持ち寄って食べ比べをしたのだった。


 今、朝日が差し込む部屋にはだれもいなかった。寝ているうちに帰ったのだろう。いや、そういえば酒でぼけた頭でノブにバイバイをした覚えがある。朝方だったかな?


 そうだよな。みんな会社があるもんな。わたしだってある。でも在宅勤務だからまだ大丈夫。


 片づけを始めた。それほどの手間じゃなかった。空いた紙皿やパックはきちんと捨ててあったし、グラスは洗ってあった。大人だな、と感心する。けど、さびしい。飲んでもどこかに秩序のかけらを残しておくのが当たり前になっている。


 わたしもそう。もう残り物の処理の段取りを考えている。串から外した焼き鳥を軽くレンジで温める。その間に空きパックでマヨネーズとケチャップを混ぜ、からしを少々。ほどよく温まった焼き鳥を和える。ホットドッグ用のパンにレタスを敷いてはさむ。朝食の出来上がり。


 さて、ちょっと顔を洗おう。どうもはれぼったい。それからコーヒーを入れて朝にしよう。


 チャイムが鳴った。


「ちょっと開けてー」


 ノブだった。


 ドアを開けるとコンビニの袋を差し出した。コーヒーの香りがする。


「なに?」

「朝。まだだろ? 部屋使わせてくれてありがとな。これ食って」


 受け取りながら言う。


「会社は? 今日は出勤じゃないの?」

「そうだけど、まだ間に合うからさっと買ってきた。じゃ、ひっくり返ってたけど、風邪ひくなよ」


 そういうとすぐに帰った。お礼を言う時間もくれなかった。いつものノブだった。


 昨夜みんなとした話を思い出す。いつするの? そればかり聞かれた。あいつらからすれば学生時分からずっとつきあってる二人にまったく変化がないのが不思議なのだろう。そういえば、昨夜の集まりも焼き鳥にかこつけてわたしたちを動かそうとした試みかもしれない。考えてみればだれそれがくっついたとか、そんな話ばかりだった。


 でも、こればかりは、なんというか、タイミングというものがある。ずっと待ったを繰り返している相撲のようなものだ。

 さっき、ドアを開けた瞬間の顔が浮かぶ。


 ノブの持ってきた袋からまたコーヒーの香りが漂った。


 あ、してもいいかも。


 袋をのぞいた。なにを買ってきたのだろう。


 チキンカツサンドだった。


 いや、まだだな。


 わたしは鼻唄をうたいながら洗面所に入った。


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