40.日常の終わり
俺はそう切り出し、全てを松田に話す。
掃討戦とは、簡単にいえば中枢都市アギュラから送り込まれる騎士団の排除のことである。都市国家の中とはいえその隅に位置するこの場所はもろにこの国家の一部であり、排除するなど反逆罪として処罰される。のはずだが、ここだけは他とは違い独立している。その独立が許されている。ゆえに国も強くはでれない。ではなぜ独立が許されるのか。
「それは、この店の屋上にある"堂"があるからだ」
この世界に限らず、全ての世界に散らばっているという"堂"。全貌はベールに包まれているが、分かっていることがある。それは7つしかないという禁書がそれぞれにあるということ。それ以外にも情報が山ほど眠っており、入るには条件をクリアしないと開かない仕組みだ。アカメが代々管理していた堂は鍵が必要で、ここにある堂は希少アイテム100種類を奉納することだった。
「・・・」
そしてその希少アイテムを集める上で、この中枢都市国家であるアギュラの王もそれらを欲しているという。希少アイテムのほとんどがこの地に生息するモンスターから出る。俺にはこの世界以外の概念があるため、違和感しかないが、モンスターという概念はここでは生き物であり生き物ではない。挑戦者も同様でこれをシステム的に見ているらしく、アイテムを落とすと表現している。
話が逸れたが、そもそもなぜこの店の屋上にこの"堂"が存在するかは謎。だがこの"堂"にも管理しているものがいる。それがーー、
「店長、ということだな」
「うううぅ……」
顔を顰めて頭を抱える松田。お前には頑張って理解してもらわないといけない。
「えーっと……。まずこの世界以外?なんてものがあるんですか?そもそもクロ先輩は違う世界からきたってことですか?」
「そうだな、とりあえず今は黙って飲み込んでくれ。後々まとめて答えるぞ」
「なるほど、分かりました。じゃあこれだけ聞いてもいいですか?」
「ああ」
「希少アイテムのことですけど、アギュラ王はこの施設も狙ってるんですか?」
「いや、施設は狙っていない。狙えないんだ」
店長は代々この店と堂を先祖代々受け継いできたらしい。しかし、受け継いできたはいいが肝心の具体的な管理方法や入り方が分からなかった。そこへ突然現れたのが俺だったわけなんだがーー、
「それがキッカケかは分からないがこの堂が"正式"に起動した。そして、防衛システムが働くようになった。その前はよく分からない現象が多発する危険地帯として誰も調査しようとしなかったんだ」
今回の掃討戦ではあまり意味をなかなかったこの防衛システムは
"店の完全維持"
"何事の敷地内への入店を許さない"。但し、血族と従業員を除く。
「これが主な防衛システムのルールだな」
「すいません、後もう一つだけ。従業員ってもちろん僕も入ってると思うんですけど、それってどう認識されるんですか?」
「おーいい質問だな。というより近いな!興味津々だな!」
例えば、店には特定の制服が配られる。これが認識の証となるかと聞かれればそれは違う。これはただの制服だ。仮に制服を奪われれば、このシステムの意味がなくなるだろう。他にも名札があったりと色々と従業員だと思われるようなマークはたくさんある。しかし、そんなものではないのだ。それは、もっと当人達のパーソナルな部分に関わることーー、
「!! もしかして……スキル…とかですか?」
「その通りだ」
予想はつくだろう。スキルとは、被ることはあれど、各個人の要素を限りなく持った魔法のこと。この仕事の募集要項に"スキル持ち"が書いてあったのはそういうことだったのだ。
「む〜〜」
「話を戻してもいいか?」
「あっ!途切れさせてしまってすみません!続けてください!」
「じゃあ続けるぞ。俺の本名はクロじゃなくて目繰なんだ。目繰里無。だが呼び名は前の通り、クロで頼む。改めてよろしくな松田よ」
突然のカミングアウトに松田が眉をひそめて、頭を抱える。時間はたっぷりあるからじっくり考えてくれ。がんばれ松田。
俺、目繰里無は第三世界 テンをクリアした不のものだ。流石にそれは伏せて、"挑戦者"と名乗っておく。突破したはいいが、目を開けると俺はこの店の前でぶっ倒れてる状態で店長に保護してもらった。なぜここで倒れていたのかは恐らく"堂"が関係しているのだろう。それ以上は分からない。
アカメのことも……分からない…
「クロ先輩?」
覗き込んでくる松田。あーこいつが可愛い女の子だったらなー。とこんなことを思えるぐらいには、人との関わりを持てるようになった。
「すまん、少し思い出しただけだ。まっそこからは、冒険者登録とかして色々あってだなーー、」
この日を境に、クエストが動き出す。
次回、めっちゃ短いですが週末あげます。




