35.暴挙の兆し
え?ほんとに?こんな更新頻度の作品にブクマ?
まじで泣いてます。ブクマしてくれた方ありがとうございます。どんな理由でしてくれたとしても、こんなに嬉しいものなんですね。
もっと更新頻度高くするように努力します!
"納品"が来るまでそろそろか。俺は松田を見送った後、一瞬にして店の屋上へと移動する。
ちなみに、店自体の広さはそこまで広くない。階数はというと、4階までの縦に大きい店だ。1階はどこにでもあるような商品が置いてある。2階イートインがあり3階は従業員の着替えや休憩スペースがある。そして、4階にはーー、
「ヘビん!!」
「遅い」
「これでも融通効かせてオーバーらを避けてきたんだじぇい?」
「助かった。物は?」
「ったくぅ!ほめてよぉ!」
目を細めて地団駄を踏む小さな蛇少女はチロチロと舌を出す。もうすぐそこまで雑魚どもが来ている。焦る必要は……ないがーー、いらいらいらいら。
「だっぴん!」
俺のいらいらが伝わったのか、そいつは目の前で脱皮を始める。というかそれは一瞬の出来事で、その場には焦った顔のまま微動だにしない蛇少女の抜け殻がある。当人はというとどこかへと消えていた。
「ギー子!例の物だ!」
俺はその抜け殻が溶けて変化した納品物を屋上の隅にある"堂"へと投げ入れる。
『※※※※を確認しました。残り必要数は84個です。掃討戦の勝率を聞きますか?』
「いい。100%だからな」
前も今もその数字は変動したことがない。そして、今回も同じだ。
『御武運を』
ガチャリ カチャリ ガチャリ カチャリ
「見えた」
少し遠くから見えるは鎧を着た女達。それが50名。今回は多いな。それらが隊列を組みこちらへやってくるのが見える。暇だなーほんとに。松田のことはバレてないようだ、よしよし。
「不気味 不確定 不明」
そう口にすると、俺自身の周りにモヤがかかる。側から見ると黒い何かがいるように見えるだろう。ついでに松田には不確を与えている。
ガチャリ
こちらに向かっていた50名。店からある程度離れているが、目視で確認できる場所からピタっと止まり整列する。もちろんそれぞれ違う面々なわけだが、忌々しくこちらを見つめる顔はまじで全員同じ見えるな。そんなことを思っていると真ん中の先頭の女が前に出る。
「ふんっ」
俺の目にも写るか写らないかぐらいの速さで、その女が手に持つ武器を上から下に振り下ろす。
「うわぁぁぁああ!!」
その切先が地面に触れた途端、その地面にヒビが入り、そのヒビが広がる。こちらへと広がったヒビからさらに地底が盛上がる。そして、それらが吹き飛ぶ。瓦礫の山がこちらへと向かってくる。その光景を近くで見ていた松田が驚きのあまり大声を出した。おいおい、アイドルなんだろ?これぐらい早く慣れろよ。
「不知火、なんちゃって火魔法」
手を前にかざし、それを口にする。無数の火が眼前を燃やし尽くす。自分が揺れてるのか地面が揺れているのか、空気が揺れているのか分からなくなるほどの振動と爆音が一瞬にしてその場を支配する。
「「「「「〜〜〜!!!」」」」」
瓦礫を放った女以外、皆耳を塞ぎうずくまっている。松田は……うん、失神寸前だな。やはり前回よりも今回のやつらが格上だな。金髪ロング切れ目の女だけがこの店に近づき得る敵だ。試しにやってみるか。
「不変」
「ふんっ!!」 ッパン!
「不変。ほぅ、これも受けるか」
一瞬で女の前まで移動して顔面を殴りつけた。かと思えば手で受け止められ、もう一度不変を使い屋上まで戻った。これで確信したな。、こいつ俺よりもレベルが上だ。初見で俺の不変を見破れるやつなんかいなかった。この世界のレベルシステムが俺という無二の存在、"不のもの"に敵うことができるようにしている。非常に厄介極まりない。それでも勝率は100%なんだが。
「見えているぞ!ちゃんと姿をさらけ出したらどうだ黒のモンスターめ!お前たちのせいでこの中枢都市アギュラは今や混乱の渦中だ!今日ここに"納品"という名目で運ばれてくる"希少アイテム"を渡せ!」
なーにが混乱の渦中だ。お前らの自業自得だろ。いや、こいつらのトップとその取り巻きか。この騎士達も被害者と言えるが、被害者という馬鹿な選択をしたのもこいつら自身だ。結局こいつらはこうやって上に使い捨てにされている。
「選べ。死ぬか、引き返すか」
「いずれ人は死ぬものだ!そして私はなにがあろうとこの任務を遂行しなければならない!私が王の下へ戻る時、それは臓物を晒した姿か"災厄の角"を持ち帰った時のみだ!」
はぁぁぁ。しんどっ。忠誠心というより崇拝に近いな。噂ではその王は遥か昔から代替わりしておらず、称号には"挑戦者"がついているらしい。遥か昔とはどれほどのものか分からないが、不死に近い存在であることに違いない。レベルも俺とは桁違いだろう。ここでのレベル差は無視することができない。こいつはなんとかできるにしても、その王と王直近の騎士には迂闊に近づけないままだ。
あれもそれも全部お空の上のやつらの手のひらだというのに、全員本当に馬鹿だ。
「いやぁぁぁあ!やっぱり帰りたい!死にたくない!元の世界にかえしてぇぇ!」
そのまま傍観していると、痺れを切らしたのか金髪女が後ろで倒れていた部下の頭を掴んでいた。
「黙れ!貴様もあの御方と同じ称号があるのだろう!腰を抜かしてないで、剣を抜き任務を遂行しろ!」
っち。今回はそっちか。となると他の48名も"挑戦者"の可能性が高い。
「ええい!いい加減にしろ!」
ならば、とそう言いながら剣を部下の女にーー、
「ッ!!やばい!不変!」
「いやぁぁぁぁあああ、…ぁぁ」
ボトッ
悲鳴が連鎖する。
「用済みだ」ニヤァ
一瞬で目の前まで移動したが、遅かった。髪の毛を乱雑に引っ張られていた部下の女の胴と頭が違う場所に落ち、金髪女の手にはまた違う部下の女の頭が掴まれていた。
「っち」
「化け物のくせにこちらの心配か?ふ…ふふ…ふふふ…はははは!!そうか!こいつらの命が惜しいのか!なぜ惜しいのかわからんがあの御方が"使える"と言って私につけたこの49名はそういうことだったのか!」
邪悪に笑い、また"挑戦者"の称号を持っているであろう部下の女を盾にしている金髪騎士。しくじった。俺が迂闊に反応してしまったせいで、めんどうなことになった。
俺はちらりと松田といる方へと意識だけを向けるが、完全に腰が抜けてしまっている。この状況を打破できるとすれば、松田だけだ。もしそれができなければーー、
「こいつらは諦めて……全員殺すだけどな」
ブワッ
「うっ…!お…おい!いいのか!こいつらの命はお前次第なんだからな!」
それはそれで大変めんどうなことになるのだが、最悪それでもいい。悪い癖だ。重なりすぎると全て終わらせたくなる。これも不のものゆえの代償か。
「…っく!それがいやならさっさと"希少アイテム"を渡せ!」
「分かった。だが待ってくれ。もうすぐここに"納品"されることになっているんだ。それまで、俺は何もしない。納品者がくればここまで来てもらって目の前で処理させてもらう。これで文句ないだろ?」
「待て。その納品者はどこのものだ」
「馬便だ」
「…………嘘は言っていないな。よかろう。それまでお前は身動き一つ取るな。分かったな?」
「分かった」
「お前達も分かったな?そのまま腰を抜かし、泣き喚き、嗚咽を撒き散らすのはいいが……動くなよ?」
後ろの部下たちは一斉に頷き、声を抑えながら啜り泣く声だけが響く。
金髪女騎士は挑戦者ではないです。
それと評価もしていただき、大変光栄です。正直批判を貰っても嬉しいのですが高くつけていただき涙腺ボロボロです。励みになります。




