30.第三世界から違う世界へ 中
今回も短めで、次で第一章終わりです。
「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
「…息できるんかい!」
海といっても所詮不の模倣。不のものである目繰にとって呼吸をすることなど造作もないこと。むしろ、こっちの方がいいぐらいだった。
「コガメのおかげでもありそうだな」
それは"取り込むことができる"コガメを中に入れているためでもある。そして、呼吸をすることでこの不海に漂う無視できるほどの不成人の思念が体に入り込んでくる。
死にたい 生きたい 死にたい 殺してくれ 返してくれ 楽になりたい 生きたい 生きたい 生きたい 生きたい 生きたい 死にたい 会いたい 生きたい 会いたい 死にたい
ーーもういい
まるで体の中で合唱してるかのように、それが木霊する。
ブルブルブルブル
「うるせぇともいえねぇな」
全てを受け入れる。そう目繰は覚悟を決めている。浮かび止まってしまっていたその場で、深く深呼吸をする。
(危機は去ったんだ。今ここにいるのは、俺とアカメとイヒ。そして、不成人だ)
未だにもがき苦しんでいるアカメの思念がひしひしと感じられる。その思念を受け取った目繰は上へと急いで泳ぐ。そして、気絶寸前のアカメの手を掴み声をかける。
「いいわけねぇだろ、ほらいくぞ」
反応は示したものの、そのままアカメは目を閉じて意識を手放したように見える。そのままこちらへと手繰り寄せて、アカメを抱える。体重がのしかかるが気にするほどではない。
「このまま上までいけそうだな」
この光の先はどこに繋がっているのだろうと向かう途中で考える。順当に行けば第四世界だろう。第三世界を終わらしたとはいえ、アスラ自体を攻略したのだ。世界それぞれにクリア条件が異なっているという天上クエスト。明確なクリア条件は明示されていないにしても、この第三世界では明らかに"アスラを倒すこと"であったように思う。それじゃないにしても管理者 厳然のアスラをどうにかしないことにはクリアなどできなかっただろう。
「もうすぐつくぞ、起きろよアカメ」
アカメは起きない。
「おい、起きろー起きろー」
ファシファシ
頬を叩くが反応はない。
耳を近づける。息はーーー
「してるな…」
ここのまま行ってもいいのだが、なにが起こるか分からないのだ。唯一第2世界を経験しているメグリは未だ反応がないため、聞くことすらできない。
そう長くこの不海は続かないだろうと考えている目繰は短い時間ながら、考え、判断を下す。
「よし、このまま一緒にいこう」
抱えたまま、この光を抜ける。それが目繰が決めた判断。というのも、単純に考えて体を密着させれば大丈夫だろうと踏んだからだった。
感傷に浸るのは抜けてからでいい。何が起ころうときっと自分とアカメは一緒なのだ。この先にも神が待ち受けていただろうとしても、破滅が待っていたとしても、アカメと一緒なら乗り越えられる気がする。
そしてーー、光へーー、手をーー、
「いでっ」
一瞬何が起こったのか分からないまま、指を見るが目立った外傷は何もない。ただの指だ。光を見る。手を伸ばす。
「嘘だろ…」
光を触る。 コンコン
光、それは確かに光だ。遠くから見れば、太陽の様に光り、近くから見れば光る美しい
球体だ。自分たちは第三世界をクリアして、不海を通じて上へと泳ぎ、辿り着き、中へ入ろうとした。しかし、その手は中へ入ることなく、こもった音と共に弾かれたのだ。
つまりーー、
「手詰まりなのか…。いや、違う」
イヒはゲートだと言った。そのゲートは次へと繋がっているとも言った。それに間違いはないはずだ。おそらくイヒはこの天上クエストに関連した何かだ。それが嘘をつくはずもなく、ましてや騙して弄ぶ様なものでもないはずだ。ならば、他に引っかかっていることとすれば"備えろ"だ。
この不海に"備えろ"ではなかったのだ。このゲートである光る球体に入るために"備えろ"であったのだ。
「言葉足らず過ぎだろ…、くそっ!どうすればいい…」
焦り始めた目繰だったが、思いのほか早くそれが解消されることになる。最悪の形で。
「なるほどな、一人だけだったら通れるわけだ。…最悪だ」
色々試した結果、分かったことは一つ。目繰だけしかこのゲートに通ることができないということ。それは道理であり、必然であった。なぜならクリアしたのはあくまで目繰だからだ。アカメはクリアはしていない。
絶望に打ちひしがれているところにさらに追い討ちをかけるように、声が聞こえた。
『故に備えろと言った。こんなにも我が廻るもの以外に意識を向けるとは思わなんだ。もう時期ゲートが閉じる。それまでに、備えろ』
瞼が少し動いた。
実はこの太陽、大きさも変えれるし移動もできます。
この亀はなるべく今は干渉しないように徹していますが、我慢できなかったんでしょうね。




