21.有限と無限
お待たせしました。
僕じゃない。この地に上書きされ、降り立ったのは僕じゃない。死して魂と呼ばれるものになり、偶然か必然か、降り立った場所と全く同じタイミングでその身に宿ったのが目繰だ。僕はもう僕じゃない。メグリは目繰になる。
「相棒!いけるか!」
なんで、僕じゃないんだよ。
(いけるよ!)
僕は、ただ、正しく、この世界まで登ったのに。
「黒槍よ、在れ!」
目繰の目の前に黒光する”短槍・片鎌槍”が現れる。それを握った瞬間ーー、
「おいおいおい、その槍から主の気配がビンビンするじゃねぇかぁ!!本当にどういう原理だ?主は良くも悪くもルールに縛られてんだぞ?絶対に干渉できねぇはずだぁ!」
「あるじだぁ?俺は俺らの力でこの槍を使う。誰が何を言おうとこれは、俺らの武器だ」
アスラはその握られた槍に目を向け、ひしひしと感じる圧倒的な気配を感じる短槍に、一瞬臆してしまう。
「……。いいぜぇ、やってやらぁ…。ここなんだなぁ、きっと。偶然じゃねぇ。このために・・・・・・このために俺は料理をしてたってわけかぁ!は…はは…ははははははは!!!いい!いい!全部ここで!俺の全力を!」
アスラはそう言い放ち、纏う雰囲気に変化が起こる。
「っ?!」
揺れる。この地が揺れたものと感じ構える。
しかし、一瞬にしてそれが間違っていることに気づく。
黒。よりも黒い。纏う神聖な気配よりも、正反対のドス黒い、黒。
その一瞬、気が逸れてしまった時には、変化は終わっていた。
それが、アスラ。厳然のアスラ
「名は体を表すんじゃねぇ。常に俺が先だ。俺があって厳然がある。深く考える必要はねえ。意味ねえから」
吐き気がするほどの、 "濃縮された負"
「おえぇっ!」
こんなやつが、神だというのか
世界が揺れたと思うほど、自分が震えていた、アイツの存在がブレるほど焦点が、合わない。
「元から俺に勝てると思われてることが、おかしかったんだよなぁ。有限であれど、この濃縮された負の前によく立ってられるものだ」
天上クエストの各世界の管理をしている神。それに対抗できる唯一の存在、"不のもの"。手段は手に入れたものの、今自分とアスラのその差に、深く絶望する。
(目繰!)
「分かってる!」
メグリに声をかけられ、自分を無理やりにでも奮い立たせる。
なんのために、この地に来た。誰のために、戦う。この戦いの果てに俺はなにを成し遂げる。
目の前の存在。見上げても見えないほど遠くにいるような圧倒的な存在を前に、目繰はその短槍を右手に持ち相手に矛先を向ける。
手が震える。
「お前が"濃縮された有限の負"ならば!」
(ここで決めなければ、全てが終わる!)
勝負はきっと、彼らにとって一瞬で終わるだろう。今のアスラの全力に対抗できるとしたら、最後の手段である、"これ"しかない。
矛先を横に向け、左手を前に出す。そして、矛先と左の掌を合わせて、グッと
「ぐっ」
突き刺した。
目繰の血が、矛先へと吸い込まれる。
どくどくと血を吸い込むその槍は、ひび割れのように槍全体を彩る。そして、
「不自然な手!」
力を発動させる。
それは脈打つように、目繰の鼓動に合わせるように、明滅を繰り返す。その槍は、自分以外の禍々しさを許さないかのように存在を主張する。
"不槍※※※※※""
「希釈された無限の不は無限なれど、無限故に、お前を討つことができる」
「・・・・・・っは!ここまできたら、もう驚きもしねえ。お前が俺のずっと待っていた相手だったんだからなぁ!だがな、お前のそれは俺よりも負担が大きいはずだよなあ?いくら無限だろうが、時間稼ぎをすればーー」
「するのか?」
精一杯の虚勢を張りながら言う。
「しねえなあ!このために俺は生きて、死んで、神になって、ここにいるんだからよお!!」
世界の行く末は、この一回で全てが決まる。
超超短期決戦が始まります!
彼らにとっての短期決戦です!




