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【一章完結】不のものクエスト〜誰もクリアできなかったクエスト攻略したけど、初めからやり直し?手に入れた不の力で神どもをぶっ飛ばします〜  作者: knockhai
第一章 風呂場に浮かんだ無数の垢から足掻いて

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19.背を向け逃げるは、お前の背に

だいぶ期間が空いてしまった。

ちょっとずつ落ち着いてますので、更新は途絶えさせませんよ!



 遥か上空に飛ばされたアスラは限りなく口角を上げ、笑う。


「ははははぁ!」


 心から笑っているように、飛ばされながらも風圧などものともせずくねくねと喜びを表現する。


「いつぶりだぁ!追えなかったぁ!」


 主から与えられた力を使うまでもなく、今までの不純物を沈めてきたアスラだったが、いつのまにか懐に入られ、あっという間に空に打ち上げられていた。


 この世界を思うがままにしてきたアスラに敵対のような感情を向けてきたものは過去に存在した。それは、稀にでてくる第2世界の達成者であったり、そうではなく突然現れるアカメのようなイレギュラーなものたち。だが、そうしたものたちを幾度となく沈めてきたアスラが初めて血反吐を吐いている。


「効いたなぁ!いいなぁ!生きてんだなぁ!」


 生を実感することなど計画が始まってからだと思っていた。アスラにとって天上クエストなど正直どうでもいい。挑戦者なんてどうでもいい。根っからの戦闘狂であるアスラは飢えに飢えてまさにここで、それが、溢れようとしている。溢れる場所こそ、ここなのだと火蓋は落ちている。


「うへぇ、へぇ、うぇ、へぇ、へぇ、へぇ」


 喜びが止まらない。歯肉が疼く。筋肉が躍動する。何度も何度も歯を鳴らして疼きをおさめようとする。目を見開き、噛むたびに頬肉が上擦るその表情はまさに獰猛な野獣そのもの。


「傷は治らねぇ、どういう原理だぁ?色んなもんが混ざってんなぁ。分かってるのはぁ、主が何かしらで関係してるってことだなぁ。あぁ!噛み殺したくなるぜぇ!二度目の感謝だぁ!」


 カンッカンッと歯をガチ鳴らす


「そんじゃあ、覇煮噛」


 口の中にまた罰が溜まっていく。アスラの前では存在すること自体が罪。故に裁かれなければならない。とは建前で、もう目の前の敵と殺し合いをするゴングに過ぎない。言葉と同時に、景色が変わり目の前には黒髪黒目の少年がいる。そして、メグリの頭を飲み込める程の口を大きく開けーー、


「ほーk」


「おかえり、さよなら」


「あぐっ!!」


 にこりと微笑むメグリを下目で確認した時にはまた空に打ち上げられていた。


 ゴングは鳴った。


「ははははは歯歯歯!やっぱり効いてんなぁ、これぇ!」


 上空に飛ばされ、傷を負いながらもやはりどうにも喜びが先に出てしまう。そして、確信する。


「宴の始まりだ」



♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫




 カチカチと歯を鳴らす音が聞こえたと思えば、笑い声が聞こえる。あんなに上までぶっ飛ばしたというのになぜか地上まではっきりと聞こえる。


「残念ながら、これは長引きそうだね」


 時間はそう長くない。メグリに課せられた時間は刻一刻と迫っている。


「……」


 振り返り、アカメを見る。アカメもこちらを見ている。交差する視線は微かにズレがあるように感じるが、応じることなく視線をはずす。


「イヒ、アカメを頼むよ」


『かしこまり』


 イヒがメグリの胸のあたりからでてくる。あの巨大な姿ではなく、手のひらサイズの亀ひらひらと宙に漂いアカメに近づいていく。


「っ!」


「ごめん、アカメ。とりあえず、その場は安全だから休んでおいて」


「ーー!」


「君の中にある不はもうピークを迎えている。最大限発揮できないのは無策と同じだよ。この場ではね」


 そう言い放ち、もうアカメの姿を見ることはない。アカメはイヒが作る透明の空間に閉じ込められている。


「ーー!!!」 


 空間を叩くがびくともしない。


 メグリかスタスタと歩いていき、離れていく。


「!!」


 何度も何度もその透明の壁を叩くが、びくともしない。イヒはこちらに近づいてきたかと思うと膜を作ってどこかに消えてしまったようだ。


 ま っ て


 口ではそう言うが、言葉にできない。なぜか、喋っていると思い込んでいるだけでそれ実際に行動に移せない。しかし、それは暖かな木漏れ日に当たっているかのような安心感がある空間により違和感を感じない。


 アカメは曲がりなりにも不のものに近づけたもの。その違和感に違和感を感じ、下の砂を掘り出そうした時に気づく。


(硬い…いや止まってる)


『不変』 


 気づいたと同時にイヒの声が頭の中に入ってくる。今自分の内側にいるのだろう。


『対象の選定、範囲の制限あり。メグリは巡った。此処にいれば癒える。待て』


(イヒ、教えて。メグリは)


 先程から既視感が止まらないのだ。この木漏れ日をアカメは知っている、ような気がする。自分自身が知っているような、その奥の奥にある魂と呼ばれるものが知っているような、あるいは、内なる不が知っているような。


(メグリは、2人いるの?)


『一人』


(真実ね。これはそういう性質だわ。となると)


「不識、分からないのは分からないことだけ」


 意を唱えると頭の中に答えが浮かんでくる。それは文字でも直接的な表現ではなく、あくまで抽象的なイメージ。アカメはそのイメージから推測するしかないのだが不を使うことで、より鮮明に映し出すことができる。


(イメージに不を馴染ませる)


 この時点で分かっていることがある。やはりイヒとメグリに繋がりがあったことである。それもやや片方に強い結びを感じる。


 アカメはメグリを地上に返す際、自分自身の不をメグリの中に入れていた。それ自体の行為は絶対的な禁忌であり、決して同意を得ていないものに取り込ませてはならない。それを可能としたのは彼女の技術であり、ほんのひと時の間だけとは思えないほどの親近感が両者に生まれたからこそ可能にできた。


 メグリはアカメとの繋がりを拠り所に


 アカメはメグリとの繋がりを依代に


 そして、間接的に繋がりがあったイヒから詳細を引っ張り出す。


『〜〜』


 その間、イヒは抵抗もなく、ただメグリの頼みを聞いているだけで、シュールに唸っているのあった。



♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫



「お待たせ、まった?」


「時間なんてあってないようなもんだぁ、気にすんなよぉ」


「気付いてる?」


「問答なんてどうでもいいじゃねぇかぁ!」


 初めに動いたのはアスラ。躍動する筋肉。地を踏み込み、地を抉りだし、


「不完全燃焼ってどう思う?」


 ギリギリギリギリ


 アスラは歯軋りをし、正しく己の力で一発繰り出そうとした最中。気づいた時には後ろを取られていた。


 アスラの目にはもうメグリは映らない


「やる気あんのかお前ぇ!!」


 歯軋りを激しくし、これでもかと言うぐらいに怒り震えてブルブルと体が揺れる。


「気付いてる?」


「うおおおおおお!!!お゛ら゛あああ!!!」


 その問いに答えることなく、メグリに対しては背中を向けたままその場で圧を撒き散らす。


 アスラを中心としたその圧風が繰り返し四方八方に目視できる程の衝撃波となる。


「それも気付いてる?」


 先程からメグリはどこ吹く風のようにアスラの真後ろを位置取っている。発生している衝撃波を至近距離から受けているにも関わらず、その場に余裕を持って立っている。


「何発かぶん殴ろうと思ったけど、やっぱさすがこの世界の神?なんだね。一発が限界みたいだ」


 今もなお、叫ぶことを止めることなく踏ん張っているアスラから目を離し振り返る。スタスタと慎重に歩く。後ろを位置取ったように瞬間的な移動をすればいいのだが、それはせずにゆっくりと慎重に離れていく。コップ満杯に入った水を溢さないように慎重に歩き、離れていく。


 ただただ、その場で踏ん張り叫ぶ男とその後ろを慎重に歩き離れていく男の絵はシュール極まりない。しかし、双方未だこれといった目に見える戦いは繰り広げてはいない。


 ただ、互いに力量を測っている


 それは、互いに理解している


 ついには約1km程離れ、もう一度振り返る。遠目からでもそこから放たれる圧がひしひしと感じられる。


「悔しいな、ここまでだなんて」


 片目を閉じながら、目の前に据える敵と手のひらを重ね合わせる。そして、その手を閉じたり開いたりしながらため息を吐き、気持ちを吐露する。


「僕との約束必ず守ってね」


 誰に言うわけでもなく、自分に言う


「腹、脚、顔。どこでもいいから、そこかしこに穴を開けて、色々抉り出したいくらいにはイラついてるんだ」


 思い浮かぶは、無惨に罪を着せられボロボロになった女の子

 

「それを一発にまとめて打つなんて」


 既に動いている。構えず、動く、初動は極めて、極めてスロー


「はぁ、悔しい。今の僕に何を言うんだろうねアカメは」


 傍から見るそれは、ゆっくりと前に倒れて行くように見えるだろう。


(一人なんてないさ)


「はは、それは君の言葉だろう」


 こうしている間にも前に倒れている。垂直から値が小さくなっていく。


 斜め45度


「後は頼んだよ」


 その言葉を最後にそこにメグリの姿はなく、一蹴りほどの砂煙だけが残る。


 まるで自分だけ空間を操っているかのように、極めてスローで前倒しになっていたそれは、いわば"溜め"


 アカメが不を使い、メグリを苦しみからひと時ではあるが解放しようとして、それを不変で縛ったのは間違いではなかった。本来であればその力は違わず行使されメグリはいずれ沈んだ出会いもあったろう。


 それをアカメは一時の苦しみから解放と考えていた。出会いこそが憩い。自らの願望が含まれていることなど意識していない彼女の考えは間違いではかったのだ。


 メグリも、目繰も、考えていたのだから。


 だがそれは出会いというものではなく、個人に限定したものだった。


 しかし、それは不になんの影響も及ぼさない思い。故に、意味はない。


 はずだった。 


 まずは、コガメ。彼女はアカメの根源の結晶のカケラ。99%アカメ本人に近く、遠い。カケラはカケラであり、それ単体では決してアカメに成り得ない。現在のアカメはメグリとの繋がりを絶っている。しかし、コガメはそれ単体ではなり得なかったことを実現させ今、目繰の中に、いる、


 次に、イヒ。この場で最もイレギュラーなもの。それも目繰の中に、


 そして、メグリ。


 全てアカメが不変で縛ったあの場所からだ。


 無駄ではなかった。


 巡り、巡り、全ては彼の中に。


 合わさることのなかった要素が全て合わさった時、その思いは思いとして、意を意のままに変換することができる。


 正しく不を操るということは、もはやそれは人間でも不成人でもない。





 それは、不のものだ。













(不自然な手)


「ガッ……ァ…ハッ…」


「悔しいな、全てじゃないけど、集約したこれでもまだ穴も開かないんだね」


「ギィッ…ガハッ」


「でも、だいぶ、へこんだね」


 背の肉に食い込むよう打った拳がアスラの体を逆くの字に曲げる。青年が打った渾身の一撃は見事命中し、明らかにぽたぽたと赤黒い血が口から垂れているのが確認できた。


「僕から最後の言葉だ。世界を代弁するなんて大きなことは言えないけど。それが代弁になっていると信じて僕からの言葉をお前に送るよ」


 アスラは動くことさえできず、絶えず与えられたダメージはその時のまま、意識に刷り込まれている。間隔を空けずにアスラは今の痛みを継続的に与えられている。


「ギィッ…!ギィ…!」


 逆くの字に反ったおかげで真後ろを確認できるようになったアスラの目の前にメグリが映り込む。


「どれくらいの生物がお前に蹂躙されてきた。どれくらいの時間、お前に蹂躙されてきた。数で測るのもどうでもよくなるくらいのそのものたちは、苦しみという言葉一つで片付けられない地獄を味わってきた」


 互いに歯を食いしばる。行動は揃えど、含む感情は明らかに違う。


「第三世界 テン 厳然のアスラよ、よく聞け。この天上クエストに挑戦するなんてふざけたままごとをぶっ潰して終わらしてやる。そしてーー、」


 体が折れ曲がり固定化されたアスラの頭は腰の位置まで下がっている。その下がった頭の耳元まで近づき、最大限の憎しみを込めて、震えて笑って囁くように


「お前が最も弱かったと、阿保だったと、間抜けだったと、所詮程度の低い遊びだったと!誰からも死を望まれ無様に死んだと!皆に下に見られながら死ね!みんな皆んなお前に利用されたんじゃない!全てお前を地に降ろし、殺すためにこの地に来たんだ!決してお前が連れてきたんじゃない!だから」


 だから、ここで


「お前を、」


(ここまでだ)


 瞼を閉じて、開けば


「殺す!」(殺す!)


 腰が逆に折れ曲がりその獰猛な顔が目の前に横倒しになっている。そこへ、重力に逆らわず自身も膝を使って真後ろにスローモーションで倒れる。体を反対へと捻る。さらにそこから左腕を振りかぶるモーションへと移し、体を顔面へと捻る。捻った体は左手により物理法則を無視して隣に位置している顔面へと空間をバウンドさせる。


 その時にはもう、目繰の拳はアスラの顔面へと伸びていた。


這う這うの体(ハウ トゥ ラン )!)


「不自然な手ェェ!」


 自身を基点とした遠心力は、世界の重力をも利用し、加速し、加算される。そしてさらに、不変で抑えた力が合わさり、変わるはずだった全てが拳に集約される。


 その全てを以って、不変の力で固定化されたアスラへと今、ぶつける。



♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪



 けたたましく、そして押し付けられるような爆音が遠くから聞こえる。アカメはその音に向かってひたすら祈る。


(正直、神なんていてもいなくてもいい。ただ、私の思いを乗せて祈るだけ)


「どうか、無事でありますように。そして、またメグリと会えますように」








(さよなら、またね、アカメ)







最近知ったんですが、某漫画雑誌で"不"を題材にした漫画があるじゃないですか。。。


決して、盗作などではございません。題材被りのオリジナルです。はっきりと申し上げます。

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