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【一章完結】不のものクエスト〜誰もクリアできなかったクエスト攻略したけど、初めからやり直し?手に入れた不の力で神どもをぶっ飛ばします〜  作者: knockhai
第一章 風呂場に浮かんだ無数の垢から足掻いて

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15.黄金の鐘を鳴らすのは

お待たせしました!






「名乗りなんざいらねぇ」


 同じ人物が話しているとは思えないほど、形相が変わったアカメ、もといシスター。


 ニタニタと粘りのある笑顔に相反し、睨みを上限突破した表情はどこか、裏から這い出る天使を必死に抑えつけているようにも見える。


「お嬢すまねぇ、喉潰すわ」


(やっぱりシスターにも……)


「おいおいぃ、俺のぉ名を無視すんじゃぁ、」


 男が喋るが遮り、爆音が響く。空気が振動する。


 こいつが世界?権利だ?誰が決めたんだ?


 不成人が気に入らねぇ、そういう言葉を作ったやつが気に入らねぇ、概念が気に入らねぇ


 お嬢を害するもの全部が気に入らねぇ 


「ーーー!!!!」


 遮った爆音が鳴り響く。どこにそんな肺活量があるのか、とっくに息を切らしているいるであろう時間を過ぎても、まだ。


 頭で考えるのは苦手だが、お嬢のためなら


 あたしを救ってくれた、お嬢のためなら


 ドブ汚ねぇきめぇ 


 こんなやつが全てを牛耳ってるのがきめぇ


 こんなやつ、私が全部引き受けてすり身にでもなってやるから代わりにミンチになってくれやぁ!


 先程のアスラが放った咆哮とは違う、広範囲に及ぼす振動は歪みに変わる。


 その口から出た響きはただでは終わらない。


 アカメが残してくれた記憶は内なる不に共有され、関係したものに気付きを与える。


 その結果、シスターは思い出すことで発揮する。他人の身体だろうが、それは自分が愛してやまない恩人の身体。しかし、()()()()()()()()()()


 彼女はシスター


 ミートル及びグレードリング家所有している"堂" 、その筆頭執行者


 "シュタレン・デッドエンド"


 筆頭とは名ばかり。上も下も存在しない。彼女以外彼女でない。唯一無二のミートルの法の体現者。


 デッドエンドが執行する対象はただ一つ。


 アカメを害するもの、それのみ。


 恩人であるアカメに生涯忠誠を誓い、世界一という称号を捨て、ひたすらに"堂"の周りにうろつく魔物を捻り潰してきた彼女は、常人では不可能なことを可能にしようとしている。


 デッドエンドたる真骨頂。彼女が彼女たる所以、つまり。


 (お嬢的にこう言えばいいんだよなぁ!)


 この言葉以外いらない。殴れるだけの部位があるだけで、充分だ。


 無理矢理、自身の不を、魂を、


不買(※※※)!」


 一回限りの侵食行為。回る。周る。


 デッドエンドを中心に世界が廻る。


 続けて彼女はその意を述べるのだ。世界のためだとか、犠牲者のためだとかどうでもいい。


 全てはこのアカメという恩人のために。


「買うわけねぇ!売るから買えやカス野郎!」


 言葉はいらない。後は、拳で語るのみ。


♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫


 本来であるならば、"不"の力は誰しも扱うことなどできない。そして、言葉や概念的な意味であるがゆえ、それを力として扱うなど不可能。


 しかし、アカメはこの"不"という力に対し、希望を見出し研究し思考し、結論に至った。


 そもそもその結論に至った理由として、「主loVe全書」という筆者不明の7つの内の一冊である最重要書物を読んだ時から始まる。


 未だ終わりが見えない日記のようなもので、主に一人の男性に対しての愛を記しているのだが、彼女のいる世界にも不成人は存在し、同じように消滅現象が起こることが確認できたのだ。


 さらに驚くことに、"分からない"現象以外の現象が確認されたという。


 彼女の日記はある男性以外の記述は端的にしか書かれておらず、難解であったがアカメは必死に解読した。そこに書かれてあった現象とは、一輪の花が揺れず枯れず育たない。消滅した後に残ったものだったという。


 詳しいことは書かれていないが、それがアカメにとっては智を得るに至れるのだ。それは、様々なものが詰まった執念が成したもの。


 不成人は存在している。不成人とは、人に成れない曖昧な存在。故に不成人。その一番の特徴は消滅し周辺に分からないを散布すること。


 この“分からない"ということに関して目を向け、書物に書いてあった現象を繋ぎ合わせる。


 物はいいようだ。それが、意識変動をもたらす


 つまり、不成人は人に成れないから"不成人"


 ではなく


 不に成れるものだから"不成人"なのだ。


 その分からないという現象こそ"不"そのものなのだ。


 地獄におちるよりも酷い目に合わなければ採算はとれないだろうと常に思う。その"分からない"を力に変えることはつまり、犠牲者を利用することなのだから。


 しかし、アカメの覚悟は決まっていた。既にその時には内に不を取り込んで多数の思念を聞き、侵されてしまっていたのか、自分の意思でなのかはもう分からない。どちらでもあるかもしれないし、ないかもしれない。


 ただ、一つ共通しているのはこの世界への強い憎悪。


 この世界に無限といっていいほどの溢れてくる人間の負の感情は結局のところ、理不尽な在り方に全て向けられる。


 上書きされ、強制的に記憶を消されて、都合のいいように定着させられたものたちは、都合のいいようにこの世界で生きることを選択させられ、最終的に沈む。


 全てのものたちはそうして、底に沈んだ後やっと理不尽に気づくのだ。


 己が無意識に感じている負の感情は底に近づくたび、表に露わになっていく。


 アスラはこれを利用し、負を量産していくことになる。


 そしてその負を違う形に変える装置、それがこの世界


 第3世界 テン


 筋肉男は裁量を持ってしまった。テンを利用し、各世界の国単位の地を召喚し、そこに在る全ての生物を洗脳とは名ばかりの上書きを行い、優先をテンに変えた。


 不という要素を加えて


 負と不は似て非なる物、合わせるは生物の"負の感情"と"分からない"


 危険物極まりない二つをテンという鍋に乱雑に入れかき混ぜる。いや、違う。不というスープに負という調味料を加えるのだ。


 そのベースとなる不は負が加えられたことで、異質な異なる概念を形成させることが出来たのだ。できてしまったのだ。


 これを操るということは、アカメとアスラは同列か


 それも違う。


 アカメは同じ風呂場で共にしたものたちの思いを取り入れた。


 犠牲者たちの代弁者としてアカメ・グレードリングは存在を許された。


 結果的にそれがどのようなことをもたらすのか完璧に理解はできていない彼女であったが、ひとまずの対抗策としては充分な値になったのだ。


 だが、一つ。アカメには見落としていた点があった。それは、見るまで気づかないもの。この世界の悪風呂に入ったことなどないアカメは気づかない。自身から垢というなの、残り滓が出てきているなど、気づかなかった。


 アスラの作った世界を完全に理解することができなかったのだ。


 理解できず、さらには自分が取り込んだ不から出た垢のせいでメグリにまたもや窮地を与えてしまったことにさえ、まだ気づかない。


 今は、目の前の成り代わったシスターが扱えるはずのない、不を使用できたことに危機と機会を感じたまま見守るしかないのだった。



♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫



 世界が変わる。太陽と思わしきものが真上に位置しているというのに、光が届かない。まるで、遮光の膜を展開したように、見えるが暗く、目の煩わしさがなくなる。過剰な情報は不要。相手をただ、ぶん殴る。ただそれだけの環境。


 風切る音と共に鈍い音が重なる。


 先程まで距離を取っていたのとは打って変わり、およそ黙ったままの少女は腕をしならせ強打を繰り出す。足が腰が胸が首から頭が、動く。全てが殴打に至るまでの蓄積速度となる。


「ッシ!」


 全身を使ってその都度渾身の一撃を叩きこむ拳は筋肉とは関係ない隙間箇所に狙いを定め、目に追えないほどの速度で向かっていく。


「ッシッ!」


 声は潰れど鋭い吐息は漏れる。シスター、シュタレン・デッドエンドは数十メートルという距離をたった一歩で詰め、滞空中に生んだ慣性に力を乗せる。殴打する箇所に近づくほんの寸前に、さらに全身をしならせる準備をしていた身体を無理矢理動かして自身で生み出した力も乗せる。


「っッ!」


 殴っただけでは鳴り響かないような高低音とノイズを組み合わせた音が鳴る。そこから衝撃波が発生し、殴った本人以外揺れを錯覚する。


「っぅぉう゛ぅ!」


 喉奥から呻きが漏れる。


乗乗強撃(臆病なジョニー)っ!)


 その凄まじい一撃は一目見ただけで感じられるだろう。衝撃が生まれた所には深いクレーターが生まれており、平坦な砂漠地帯が荒れ始める合図が鳴った。既にそこの中心にはデッドエンドしかおらず、怨敵であるアスラはいない。


(手応えがちっとなかったな、敵ながらあっぱれだ。威力を逃しやがった。ま、分かったことがあっただけましか、きめぇけどな)


 威力を逃すために撃が来る方向に沿ってうまく後方に飛ぶ。そうして、放った重圧な一撃は深いクレーターを生み出すに留まった。狙った箇所に少しの予備動作があれば、さらに強力な打撃を加えられたであろう。


(お嬢の力、とんでもねぇ。ミートルにいたときよりも見えるし見える。不ってのは全能に溢れてんな)


(シスター、)


 内から低い声が聞こえる。これはきっと、いや確実にお嬢が怒ってる時のトーンだ。


(あなたの考えてること筒抜けなの。分かる?)


 肌がビリビリする、、ダメだお嬢。


(一蓮托生、死ぬときは一緒に添い遂げましょう。やろうとしてることと食い違ってるわね。ねぇ?)


 耐えろ。理性が飛んじまう。筋肉なんてクソくらえだ。あんなもん必要ねぇ意味ねぇ。


(聞いてるの?私うれしかったのよ?あんなに、私より早く死なせろって言ってたあなたが私の声を遮ってまで添い遂げるなんて言ってきたんですもの)


 筋肉なんてクソくらえだ。あんなもん必要ねぇ。


 あぁ、思い出す。ダメだ。これ以上は…モウアタマトンデーー


覇煮噛(はにかみ)


 ブチッ


「咆哮」


 上空の彼方へ飛ばしたはずの筋肉男の声が真上から聞こえる。一言声が聞こえたと同時に向かって下からは頭の血管が千切れる音。そして、アスラから響きの咆哮が鳴る。


 その見えない響きは真下のクレーター、その中心部へと鳴り落ちる。


 アスラは落ちるが、空気に触れながら落ちる咆哮が先に落ちる。いち早く辿り着く、死の匂いが存分にする、その咆哮。振動が振動を呼び、さらにその振動が振動を呼ぶ。そうして集まり無理矢理一方向に固められた振動はやがて共振する。


 バチが当たるのは、悪いことをしたからと相場は決まっている。因果応報、悪い行いをすればそれはなんらかの形で己に返ってくる。罰が下る。では、それらは誰が何が己に行うのか。


 その振動は共振と成り、その共振は共振に在らず。


 アスラに刻まれた幾何学模様と類似する共振は、一度目とは明らかに違う。彩の黒に染まっていき、負を纏う罰印と成る。


 自然の成り行きが降ってくるのを黙ったまま上を見上げるシスター。


 迷える子羊を迎え、犯した罪を悔い改めさせ贖罪させるシスターは微笑む。


 汝、死人であれ


 「ーー」


 罰がぶつかるーー、否。


 憤怒をぶつける。










 殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打


 圧倒的な圧を放つ拳撃が、見えない速度で罰を殴る。


 まだ、殴打は上に向かってひたすらに殴打を繰り返し、殴打を繰り広げ、罰印を飛散させる。


 (邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔。あたしが嫌いなことトップ2だ!邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ぁ!)


 まだまだ終わらないその咆哮と殴打。罰と許しがぶつかり合う衝撃は終わりなき聖戦を広げていく。


 しかし、唐突に終わりを迎える。


(きめぇ!見えてきたぜ、筋肉野郎っ!)


 見事打ち勝ったのは許しを得て飛散させた、シスター、デッドエンド。


 咆哮の元が目視で確認できるくらい、筋肉が落ちてくるのが分かった、シスターは佳境を迎える。


(あたしが1番気に入らねぇのはお嬢を害したやつ、そして2番目がーー)


 アスラはまだ空中で、凛とした正座の姿勢のまま真っ直ぐ落ちていく。その顔は、咆哮を放つ前の無表情とは違う、爽やかな笑顔。


 シスターの疲れに期待しているのか、それとも己の余裕のためか、何をするわけでもなく、その姿勢から微動だにしない。


 シスターは、全ての罰を吹き飛ばし、軽いステップを踏み助走をつけてその場から跳ねる。握った拳を開く。また、同じ箇所に狙いを定める。そしてーー


(寸止めだ、カス野郎っ!彼方に、いにやがれ!!)


 落ちてきたアスラの正座している膝がシスターの目の位置に来た瞬間、高低音とノイズが轟く


「ッシッ!」


 瞬きの間に行われた撃で、今度は地平の彼方に飛ばす。すでに目視で確認できる所から見えなくなったアスラに、今度は手応えを感じたデッドエンドは、着地し、その場に膝をつく。


「はぁ、はぁ、ふぅ〜、ちっ!」


 さすがに消耗した様子を見せ、息を切らす。そして、改めて確認することができたことに舌打ちをして、悔いる。


(見た目だけのカス野郎ではないのは確かなんだけどよぉ、肝心のモノがねぇんじゃ意味ねぇだろ。ほんときめぇ)


 その大柄な体格、低音響く声、引き締まった筋肉、不気味と心地よいと感じてしまう包み込まれるようなオーラ。全てが漢らしい、といえるだろう。だが、肝心の象徴が、象が、ない。


 デッドエンドは金的狙いのプロだ。どんなに阻むものがあったとしても、狙いうちできる腕が、拳がある。しかし、それがないとなれば他の対策を考えなければならない。それが分かっただけでもと切り替える。


(お嬢!さぁ!続けてくれ!あたしに救いを!)


 彼女はシスター


 ミートル及びグレードリング家所有"堂" 筆頭執行者 

 シュタレン・M・デッドエンド


 唯一無二のお嬢の犬。彼女を親しく知る物たちは、影でミドルネームを付けていた。


 彼女はそれを知っており、なお受け入れていた。真実であり、誇りに思っていたから。







「一割減だぁ、効いてきたなぁ、あぁ!楽しくなってきたなぁ!ゆっくりぃ楽しまねぇとなぁ!1個分使ってやろぉかぁ!」






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