2.ひとりだった。
もうしばらくひとりで放浪させる予定です。
2021/7/26 行間の変更、加筆修正を行いました。
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景色は辺り一面、砂。砂漠になっているが時折、文明的な残骸が散乱している。
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景色は辺り一面、森。獣道さえも存在しない、ただただ緑があるだけ。
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景色はあたり一面、雪。白い世界に目の前が染められている。
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イヒ
目繰は自分が今どこにいるのかも分からないぐらい周りが闇に包まれている中、ポツンと膝を抱えながら一点を見つめている。
そうしているとざらざらと模様が浮かんでくるようで、楽しい。
一緒に話す 笑う 悲しむ 食べる 怒る 食べる そうすると気が紛れる 静けさがいなくなる。
そんな気がするから。
♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫♪♫
晴れ
ブルブルブルブルブルブ
「はてさてはて、ちくわも今日もいけますかぁ、っと。ん?」
頭の中で何かに気付く。
「なんだ?この組み合わせ。」
歩き始めようと片足を前に出した状態で静止しながら、頭の中を確認する。
『ちくわの生花』
「ちくわの生花かぁ、うんうん。おけまるおけまるー。って、そんなもん見たこと聞いたこともあるかいっ!」
前衛的すぎる本日の※※※※※にツッコミつつもそれを想像する。
「うん、想像できちまう。できちまうけど、シュールすぎだろ。いや、?」
考える
ちくわと生花
一見、アンタッチャブルな組み合わせだと思いがちだが、華道に於いて花は欠かせない物だという考えこそ取り払わなければならないのではないか。
「もっとだ、もっと」
思考に耽る。
造花というものがある。文字通り物を使って人工的につくる花である。これをちくわで作くることができれば、それはもう生花ではないのか。
「足りない、もっと」
思考に浸る。溺れる。
規則的に羅列されている天井、嵌め込み式の蛍光灯の内の一つを通り過ぎるかのようにちらっと何かが頭の中を通り過ぎる。
パクッ
「ちくわの片端長さ三分の一を円に沿って三十度の間隔を空けながら切れ込みを入れて、ちくわを咲かせることができるのではないか。そうすればーー」
ここまでの思考 二十九秒
「よっしゃっ!じゃあきょぅ」
『未熟 カ※レオ※不成』
「あ」
意味不明な力だと思いつつ、なんとなく、ちくわの生花っぽい顔をしながら歩こうとした目繰だったが、頭の中に声が走る。
やれやれとポーズを取りながら、めんどくさそうに再起動を試みる。
「んー、汗かかないしなここ。すべすべだから近くに水辺はないかなぁ。水辺やーい」
自分の体をさすさすしながら、辺りを見渡す。
辺り一面、砂。 生体反応、なし。
レベベベバベルォボエベレレ
イヒ
レベベベバベルォボエベレレ
イヒ
レベベベバベルォボエベレレ
イヒ
「おえっ」
一点を見つめる。
一点を見つめる。
一点を見つめる。
一点を見つめる。
「いつまで……」
暗闇を、一点に見つめる。
「いつまでこんなこと続けなくちゃいけないんだ」
ただ、荒廃した世界を歩くだけ。
これになんの意味があるのだろうか。
誰でもいい。誰でもいいから何かに会いたい。縋りたい。会って話をしたい。触れ合いたい。
しかし、人間や動物などすでにいない。この結論にたどりついたのはこの世界で目覚めてから早い段階で理解はしていた。
目繰は人間である。それも手垢のついた。
悠久とも言える時間をこの世界で過ごしてきた目繰は、自分が今狂おうとしているのかそれとも正気なのか分からない。ただ、この世界で生物が存在しないこと以外で分かっていることはーー、
狂えない、死ねない。それだけ。
そして、どうしようもなく
ひとりだった。
「はぁ、狂えない。死ねない。だから狂ったフリをする。それもまたこの世界を楽しむ醍醐味ですなぁ」
フラフラとまた荒廃した世界を、歩き出す。
本当にこんな表現であってるのかな…。
この作品は長編予定作品です。
目繰はほんとに狂っているフリをしているんですかね。