1.ひとりなんて、ないさ
2021/7/26 行間の変更、一部加筆修正を行いました。
水に沈みゆく体。
今、1人の人間が海に沈んでいる。
かすかに光が届く水深から上を見上げ、片手を伸ばす。
イヒ
もう片方の手で、自分の腹の上にある直径70cmほどの岩を抱えて深い闇に落ちてゆく。
体はくの字に折れ曲がりそうに、明らかにどうしようもなく、落ちていくしかない状況の中、口元が緩む。
そして彼は、岩の心地いい重さを感じる今の状況を、なんの恐怖もなくひたすらにこの状況を観察していた。
ただ、観察していた。
彼は、手を上にかざしながら思う。
いつからだろう 欲にまみれたように盛んだったであろう街並みに見飽きたのは。
いつからだろう そんな街中で好き放題に過ごすのをやめたのは。
いつからだろう 荒廃した世界を歩きまわろうと思ったのは。
いつからだろう いつからだろう いつからだろう いつからだろう いつからだろう いつからだろう いつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつからだろういつから
あっ
目の前に
口が
あr
口口口口口口口口口口は口口口口口口口口口口
イヒ
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目が覚めた。何回目の目覚めだろうか。
パチリと目を開け、今の天気を把握しようと瞳を無意識に右へずらす。
晴れていることに特にリアクションもせず、再び目をゆっくりと閉じる。
意識を手放す間際、考える。
昼夜関係なく寝て起きる日々。その繰り返しに意味を見つけようとしてみるが……。すぐにそんな無駄な思考を放棄した。
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今は無きN国。
国という概念がこの世界にあったのは遥か昔。
ここにいるのは一人の人間。名は目繰。外套に身を包む黒髪黒目、平均より少し高めの身長に虚な目をした青年。
目繰は重い腰を上げて外套についた大量の砂をパンパンと前屈みになりながら、濡れた手のひらで払う。
「あぁもう、毎回毎回めんどくせぇな」
日課のようになっている悪態をつきながら体を震わせる。
ブルブルブルブルブルブル
「よし!今日も戌年だな!わんわん!」
今日もわんこの気分で、進み続けるのである。
『※※※※※ カ※レオ※
なりきる。染まる。※きるぐらいの※を※み※けたその※。自分の頭の中のイメージでなりきる。いつだって※※は※り※って※※※った。』