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山ン本怪談百物語

多目的室のピアノ

作者: 山ン本

百物語十一話になります

 小学校5年生の冬。


 うちの小学校には、イベントで使用するための「多目的室」が存在した。クラスの交流会や保護者会以外では、ほとんど使われることのないレアな教室である。事件はそこで起きた。


 5年生が図工の時間に描いた絵で展覧会を開くことになった。ウチのクラスの担当作業は、展覧会で使用する多目的室の掃除と道具の移動。6時間目の授業を変更して作業を行うことになった。


 「あれ?イワタくん鍵開けてたっけ?」


 「いや…俺開けてないよ…」


 5時間目が終わると、生徒たちが多目的室の前まで移動を始める。しかし…



 ♪~♪♪♪~♪…



 「おい!誰かピアノ弾いてるぞ!」


 鍵のかかった多目的室の中からピアノの音が聞こえてきた。多目的室には昔からピアノが1台置かれているのだが、誰か練習に使っているのだろうか。なぜ鍵をかけて練習を…?


 「この曲って『第九』?ヘタクソだなぁ…」


 中にいる人の演奏は、お世辞にも上手いとは言えず、小さな子が見様見真似で弾いているような感じであった。


 「本当に下手だな」


 「う~ん…音が…」


 「ははっ!変な曲!」


 集まってきた生徒たちが、多目的室の前で騒ぎ始めた。しばらくすると…


 「全員廊下では静かに…あら、誰かいるの…?」


 担任の先生が多目的室の鍵を持ってきた。先生が鍵を持っているということは、中にいる人物は一体…


 「今日はうちのクラスしか使う予定なかったと思うけどなぁ…」


 先生が鍵を鍵穴に差し込もうとした瞬間、事件は起こった。


 「わぁ!?」


 「な、なんだっ!?」


 多目的室から聞こえていたピアノの演奏が止まり、今度はピアノを素手で叩くような音が聞こえてきた。



 ダンッ!ダンッ!ガンッ!!ダンッ!!!



 どうやら、中の人物が暴れまわっているらしい。これに驚いた先生は、近くを歩いていた警備員のおじさんと教頭先生を連れてきた。不審者であった場合、すぐに警察を呼ばなければならない。


 「それじゃあ、開けますよ…」


 先生が多目的室の鍵を開けると、警備員のおじさんと教頭先生が多目的室のドアを勢いよく開けた。しかし…


 「あれ…誰もいない…?」


 多目的室には誰もいなかった。部屋の中に置かれていたのは、埃を被ったピアノと道具の入った段ボール箱だけ。


 「多目的室に窓はないし、気のせいだったんですかねぇ…」


 教頭先生が多目的室のドアを閉めた。すると…






 ダンッ!ダンッ!ダンッ!!ダンッ!!!ガンッ!!!バンッ!!!!






 この事件以降、多目的室は使用禁止になった。今は倉庫として使われているらしい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] それまでは下手なりに普通に演奏していたのに、急に鍵盤をたたくような音に変わるシーンを、脳内でイメージ化すると怖いですね。 オーディオドラマ化した場合、このシーンはかなりインパクトがありそう…
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