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八話 死の森へ

 確かにサーシャはどこまでもお供してくれるとは言っていたが。

 うん。これは何か違うと思う。


「何処までもお供いたしますとも!地の果て海の果て空の果て例え行く先が地獄であろうとも、このサーシャ、エース様だけを追い続けましょう!何処までも!」

「それは分かったけどいちいち布団まで追いかけてこなくていいんだぞ?」

「ダメなんですか?私はエース様とご一緒に眠りたいのですが」

「ダメだろ」

「そうですか。残念」


 何が残念なのか分からないがようやく出て言ってくれるサーシャ。

 長い金色の髪を下ろしているサーシャは俺の目から見ても結構可愛い女の子だ。

 間違いの一つや二つが起きてしまう可能性もあるからな。


「エース私は?」


 しかし入れ替わるようにルーナが入ってきた。


「お前もダメだ」

「そんなー」


 当たり前だろと言いたいことだが黙って追い出す。


「でも、私は諦めませんからねエース様!例え布団の中だってその内ついて行ってみますから!」


 サーシャはそんなことを1人宣言していた。



 次の日シエルを呼びに行く。

 もちろん死の森へ行くためだ。


「え?もう行くんですか?」

「無理か?」

「いえ、行けますけど、少し待ってください」


 ドアを閉めて家の中に戻っていく彼女を待っていると数分で帰ってきた。


「早いな」

「一応準備はしてましたので。って、お父さん?!」

 

 その時彼女の背後からガタイのいい男が顔を出した。

 傷だらけの顔だ。


「デッドエンドの討伐をよろしく頼む。それと娘をよろしく頼む」

「あぁ。任されたよ」


 何を言われるのかと思っていたがそんなことだった。

 短く会話を交わすと戻っていく男。


「さて、行こうか」


 みんなが頷いたのを見て俺たちは死の森へ向かうことにした。



 死の森は言ってみればただの森なのだが。

 薄暗く気味が悪い。


「思ったより迫力あるね」

「ボアとどっちの方が迫力ある?」

「どっちもかな」


 苦笑いするルーナ。

 どうやらモンスターも怖いしこういう不気味なところも苦手らしいな。


 そうやって何でもない会話をしながら森の中を歩く。

 木が視界を遮りどこに向かえばいいのかも普通なら分からないだろう。


「サーチ」


 スキルを起動する。

 俺の鑑定スキルはどの道に進めばいいかも教えてくれる。

 しばらく待つと視界に矢印が表れた。


「こっちだ」


 そう言うが中々付いてこない3人。


「どうした?」

「いえ、何で分かるのかなって思いまして」


 シエルが不思議そうに見ているが。


「流石はエース様です!こんなに一瞬で正解の道を選んでしまうなんて」


 逆に嬉しそうな顔で抱きついてくるサーシャ。


「道選びはエース様が、戦闘は私が担当すればこれ程までに相性のいいパーティはなくないですか?!」


 俺に抱きついたまま飛び跳ねるサーシャ。

 確かにそれは相性は良さそうだが。


「そう言えば聞き忘れていたがサーシャはどんな魔法を使えるんだ?」

「私は氷属性の魔法を使えますよ!」


 なるほど。それを聞いて改めて思った。確かに相性がいいな。

 俺に魔法はほぼ使えないから俺がインファイトを担当してそれ以上の距離は3人に任せればいいだろう。


「エース!」


 その時ルーナが声をあげた。


「どうした?」

「そこにウルフがいるよ」


 彼女の指さした横の草むら


「グルゥ」


 確かにそこには目を赤く光らせたウルフがいた。

 草むらの中から俺達が油断するのを待っているらしい。


「ガウッ!」


 気付かれたためかそのまま飛びかかってくるウルフ。

 攻撃タイミングや、その範囲は分かっている。

 それを意識しながら懐に潜り込むと。


「寝とけ」


 バキッ!

 ウルフの腹を殴り飛ばした。


「キュゥ………」


 それでパタリと倒れるウルフ。


「ま、こんなものか」


 手をパンパンと払うと3人の近くに戻った。

 ポカーンと口を開けているみんな。


「どうしたんだ?」

「いえ、その………ウルフを素手で相手にする人なんて見たことも聞いたこともなかったので。すごいなと思って」


 シエルが思ったことを言ってくれている。

 あー、なるほどそういうことか。


「普通は武器を使うウルフを素手で相手するなんてバカで凄いなって事か。バカで悪かったな」


 しかし、彼女は両手を前に出してブンブンと横に必死に振りだした。


「皮肉じゃないですよ!普通は武器を使って相手するのに素手でやってて………なんと言うか見とれちゃいました」

「そうなのか?」


 我がルクスブルクでは剣術の前に体術があると言われていた。

 だから俺は体術を教え込まれた。

 マトモに魔法が使えなかったし剣技もあれだし、その結果体術しか選択肢がなかったとも言えるが。  

 しかしその結果誰にも負けないインファイターまで上り詰めていたというのもまた事実だが。

 一先ずかなり異端だったらしいことは分かる。


「そうですよ!流れるような拳の数々!私も見とれてしまいましたよ!」


 また抱きついてくるサーシャ。

 しかし、悪い気はしない。

 ルクスブルクではハズレ枠のゴミとされていた俺でも外の世界では何かの役には立てるらしい。


「この調子でじゃんじゃか奥に進んじまおうぜ」

「はい!行きましょう!突き進みましょう!地の果て最果てどこまででも、このサーシャ何処までもお供致しますとも!」


 そうして俺たちの死の森攻略は始まったのだった。



 そうして進み続けたがルーナの顔はかなり辛そうに歪んでいた。


「もう疲れたー」


 今にも倒れそうな顔をしている。


「もうそろそろ奥に着くはずだ。何とか持ちこたえてくれ」

「それにしても薄気味悪い場所ですね」


 シエルも精神的に参ってきたのかそんな事を呟いている。

 たしかに、この死の森は奥へ向かえば向かうほど薄気味悪くなる。

 入ってきた頃は普通の森のような緑の風景が広がっていたのに、ここに来ると紫色になっていた。


「明らかに空気は変わったよな」

「ひっ!」


 その時シエルが小動物みたいな悲鳴をあげた。


「どうした?」

「あ、あれです………」


 彼女の指さした先には動物の骨があった。

 肉だけ無くなったかのような配列で落ちている骨には多少の恐怖を覚えなくもない。


「もしかしたら近いのかもしれないなデッドエンドが」


 この空気の変わりようを見るにそんな気がする。

 そして


「あ、あれじゃないかな」


 ルーナの指さす奥地。

 そこには明らかに他とは違う荒れ果てた荒野が広がっていた。


 さっきまでは木が生えていたりしたのにそこだけは何も無い。

 全てが死んでしまっているかのような荒地がある。


「あそこだな」


 俺もスキルで確認したがそこが終点だ。

 デッドエンドはそこにいるのだろう。


「さて、みんな準備はいいな?」


 頷く3人。

 それを見て俺は荒地へと足を踏み出すことにした。


先ほど気付いたのですが日間ランキング入りありがとうございます!

皆様のおかげです!

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