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六話 ノーランク鑑定士とSランク鑑定士

修正な内容は表記の統一です

 下に降りるとこの宿屋の主である女性と男が言い合っていた。

 男は柄の悪そうなチンピラ風の男だ。

 そう言えば俺たちが来た時にもいたのを思い出す。暇な連中だな。何時間もここにいたのか。


「えぇ?姉ちゃんよ。これが本物だってのか?笑わせてくれるなよ」

「だから、ダイヤですよ。それは」

「いくら金が払えないって言ってもこんなんじゃ代わりにならないって」


 男が女性の手を掴もうとしたのを間に入って逆に掴む。


「あ?」

「話は俺が聞こう。それに男が女に手を上げるのか?」

「何だ。てめぇ」


 振りかざしてきた拳を避ける。

 勢いが良すぎたのかそのままふらつく男。

 そのまま追撃を入れたかったが辞めておこう。

 俺は何も暴力で解決したい訳では無い。


「話は俺が聞こうと言った。それとも、やり合うか?」

「う………うるせぇ。てめぇに話してどうなる?」


 今の一瞬で俺と自分の力量差を理解したのか、俺との争い事は避けたがっているように見える。


「俺は鑑定スキル持ちだ。偽物かどうかという話が聞こえたのでそれを鑑定したいと思っているところだ」


 俺は少女の方を見て一応聞いておくことにした。


「このまま俺が話を続けても問題ないだろうか?」


 ブン!

 その時にスキルを使った。

 瞬間表示されるウィンドウ。


 職業は冒険者と宿主と書かれてあり、名前はサーシャと書かれていた。


「は、はい。お願いします」


 そう答えて俺の服の裾を掴む少女。

 自分の獲得した本物のはずのダイヤを偽物と告げられ不安なのだろうか。


 その様子を見て改めて思う。

 全部俺が受け答えしよう。


「とりあえず今どういう状況なのか説明してくれるか?」


 男にそう問いかける。

 俺が来たのは途中だ。初めから見ていた訳では無いから何が起きてこうなっているかを知りたい。


「今この女は土地代の支払いを滞納してるんだよ。それでそのツケをこのダイヤで支払うって言ってるんだが、ここにいる【Sランク鑑定士】が偽物だって言うんでな」


 自分の横の男を指さして、わざとらしくSランク鑑定士という部分を強調してそう話した。


 確かに俺の視界に表示されているウィンドウにも残念ながらSランク鑑定士との情報がある。

 言っていることは間違いではないようだ。


「なるほどな。話は分かった。だが、一つ言わせてもらう。この状態はフェアじゃない。何故かってそっちには鑑定士がいるがこちらの少女には鑑定士が付いていない」

「それは、確かにフェアではないよな」


 男が素直に頷いている。

 その辺の事については理解してくれているらしい。

 それなら話は早い。


「俺がこの少女の側に立つ鑑定士になる」

「何故だ?鑑定士はこちら側にいるのだ。問題なかろう?しかもSランクの鑑定士だ。君のような名前も顔も知らないような鑑定士ではない。れっきとした『Sランク鑑定士』だ。信用出来るだ………?」


 男の続けようとしていた言葉を遮って口を開く。

 最後まで聞く価値はない。


「お前はバカなのか?下らない話をさせるなよ」


 何故こういう話をしたのかについて考えて欲しいものだ。

 俺がフェアじゃないと言った理由について考えもせずにこんな事を言うのはバカだろう。


「バ………?悪いな兄ちゃん何を言ったのか聞こえなかったからもう一度言ってくれないか?」


 自分の事をバカと呼ばれたことが心外なのかそんなことを必死に怒りを抑えている顔で聞いてくる。

 やはりバカなのだろうか。


「もう一度言う。お前はバカなのか?」


 それでも大事にするのは不味いというのはバカでも分かることなのか顔をピクピクさせながらも口を開こうとする男。


「何故、バカだと思うのか教えてくれないか」

「俺がこの子の側に立つと言ったのはフェアに戦いたいからだ。何故か分かるよな?お前の鑑定士が信用ならんからだよ。それくらい分かれよバカ。何故こんなに下らん話をしなくてはならんのだ。バカなりに足りない頭を動かせ」


 そう言ってやると更に顔が赤くなった。

 最早茹でられたタコのように赤くなっている。

 見ていて面白いな。


「何故信用ならないかについても話してくれないか?この男もSランク鑑定士だ。口だけで信用ないと言われては心中も穏やかではないだろう。君も鑑定士の端くれなら分かるのではないか?信用できないと言われた時の気持ち」

「分からんな。信用されないならされないでそれでいいから」

「そもそも君は何ランクなんだい?」

「ノーランクだ。鑑定士として正式には認められてないよ」


 そう言うと男達は顔を見合わせて笑った。


「ノーランクって。この男はこれまでSランクになれるほどの量を鑑定し続けてきたんだぞ?それに鑑定士でも何でもない奴に信用がないなどと」


 赤くなっていた顔を戻し笑うのに必死になっている男。

 勝ったとでも思っているのかもしれない。

 が、俺も笑いをこらえるのに必死だ。


 何故ってこいつらに負ける未来なんて微塵も見えないから。

 その上で俺の鑑定スキルは俺に答えを出している。


 こいつらの言っていることに━━━━真実はひとつもない、と。


「それより何故信用がないと口にしたのかを教えてくれないか?今なら彼も許してくれるだろう。ほら、誠意を込めて頭を地につけてごめんなさいは?」


 鑑定士の男もその言葉で頷いた。


「ごめんなさい」

「ほら床に頭を付けて」

「━━━━をするのはお前らだろ?間抜け。俺が信用ならんと口酸っぱく言っているのはその鑑定士がお前の横にいるからだ。お前と手を組んでいるのなら嘘もつけるだろ?」


 男が手に持つダイヤを取って口にする。


「これは偽物だと言えってな。Sランク様ほど信頼がある奴の口から出た言葉なら騙すのなんて簡単だろ?それで善良な市民からダイヤを奪いつつ金も巻き上げる。悪どい商売だな。いや、賢いとすら褒めてやってもいい」


 皮肉げに笑ってそう口にする。


「言いがかりはよしてくれないかな?我々は正式にそれを鑑定した結果偽物だと出たんだよ」


 その時1人で外に出ていたルーナが帰ってきた。

 俺に視線を送り合図してくる。


 なるほどな準備が出来たわけか。

 時間稼ぎはこれで終わりだ、後は一気に叩き込もうか。


「ははははは。言いがかり?言いがかりなのはお前らだろう?俺はお笑いでも見ているのか?」


 大笑いしてから右手に掴んだダイヤを2人の前に突き出して一言、大声で外にも聞こえるくらいの声量で言い放つ。


「残念ながら俺の鑑定スキルではそれは本物だと出ているんだよこのダイヤは。どうやらSランク様の目は節穴らしいな?」


 瞬間場の雰囲気が明らかに変わった。

 さて、どう出てくるか。


 ここまで言い切ったのだ。もう何も無かったでは済まされない。


 俺が潰されるか、こいつらが潰れるか。

 それが終着点。


誤字報告ありがとうございます。


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