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四十話 何が目的なのか

 とりあえずダンジョン攻略を終えた俺は国づくりのために動いていた。

 一先ずはこの国をより豊かにより強い国にしなくてはならないだろう。


「違うな。それはそっちだ」

「こちらの方がよろしいのではないですか?それが定石ですが」


 そのために貴族達とダンジョンで回収した資源の使い道について話し合っていた。

 今は鉱石の使い道について話し合っている。

 拾ってきた功績を何処にどの程度割り振るのが正解なのだろうかという話なのだが。


「いや、その鉱石はこちらの方で使った方が効率がいい。こちらに回せ」


 俺のスキルでこの鉱石はどんな使い方をすればいいかを全て教えてくれていた。


「この鉱石はとても硬いと言うことで知られている鉱石なのですが本当に武具屋に回さないのですか?」


 聞いてくる貴族の言葉に頷く。


「それはそちらではなく橋に回せ。ここは以前通ったが既にガタがきていた。この鉱石で何とかしろと伝えておいてくれ」


 確かに本来であれば武具屋に回すのもありと言えばありだが俺が言った橋はこの国の主要な橋だ。

 そこが崩れてしまったりした場合に起きる損害と比較すれば………というより比較にすらならない。

 先にこちらに回すべきだ。


「ではこちらの薬草はどうしましょうか?」

「それは薬屋で構わない」


 次に聞いてきた貴族にそう答える。


「は、はい。ではそのようにしておきますね」

「いや、待て」

「はい?」


 もう一度薬草をじっと見た。


「1つ貸してくれないか?」

「どうぞ」


 応えたのは貴族ではなくリシアだった。

 彼女が手に取って俺に渡してきた。


「ふむ。これはだな」


 今まで回復薬の材料に使われていたものみたいだが………。


「ふむ。これは他の用途に回そうか」

「他の用途、と言いますと?」

「錬金術師のところだよ。これは錬金で更に化ける」


 そう言うと俺は手元にあったとあるアイテムを取りだした。

 成功するかどうかは分からないが試してみよう。


「それは何ですか?」

「化石だ。大昔にこの辺にいた不死鳥の羽の化石だろう」

「でも化石ですよね?意味無くないですか?」


 確かにこのままでは意味は無い。

 いくら不死鳥の羽と言ってしまってもこれだけ長い間放置されていたのなら効力は落ちるというものだ。


 だがしかし、それを割ると中にあった羽だけを取りだした。

 うむ。

 特に千切れていたりはせずに状態のいいものだった。


「よし」


 先に水の入った容器に先程の薬草をうかべた。

 しばらく待っていたら緑色に染まる。


「どうするつもりなのですか?」

「見ていれば分かる」


 そう言って羽を水に入れた。

 しばらくすると


「な、何ですか?!これは!」


 光り出す羽。

 どうやら成功したようだな。


「成功だ」


 光を見てここにいた貴族達が驚きの声を上げた。


「こ、これは錬金術ですか?!」

「王は錬金術も使えるのですか?!」


 その言葉に答えておくことにする。


「別に錬金術じゃない。ただの調合だよ」


 そう言うと収まる光。

 そこには淡く輝く羽が1枚存在していた。


「これで効力は戻ったはずだ」


 どんなバッドステータスも直せる幻のアイテムがここに生まれた。


「それと、こちらを」


 俺はそう言って薬草担当の貴族にいくつかの化石を渡した。


「こんなもの、いつの間に?!」

「ダンジョンを歩きながら。表に出ていた分だけ移動しながら回収しただけだよ」


 別に大したことでは無いと思うがまぁいい。


「錬金術師にそれらを渡して似たようなことをしろと言っておいてくれ。不死鳥の羽は貴重なアイテムだ。出来るだけ数を増やしておきたい」


 そう考えるとこれだけの化石が拾えたのは幸運だった。


「わ、分かりました!」


 頷く貴族に目をやる。


「頼んだ」

「は、はい!」


 そう頷くのを見てからメモを書いた。


「この手順通りやれば成功するはずだ。これも渡しておいてくれ」



 夜部屋に戻るとシオンがいた。


「慣れたか?」

「はい。お陰様です」


 最初の時のようにパニックになるようなことはなくなっていた。


「それは良かった」


 そう口にして椅子に座る。

 ルーナ達は3人で風呂に行ったらしい。


「シオンも行けば良かったのにな?」

「い、いえその待っていたので」


 そう言ってくれる彼女。

 そうか。


「そ、その助けてくれて本当にありがとうございました」

「気にするなよ」

「で、でもちゃんとお礼を言えていなかったので」

「そうか」


 ま、その辺は本人の好きにしてくれたらいい。


「何だかエースといると胸が苦しくなります」

「そうなのか?」

「は、はい。すごくドキドキします」


 そう言いながら俺に擦り寄ってきたシオン。


「でもこうしていると少し落ち着きます」

「なら好きにしていいよ」

「エースはいい人です」

「普通だろ?」

「普通じゃないですよ。人間がみんなこんなに優しかったら私達戦争してませんから」


 プクッと頬を膨らませる彼女。

 それもそうか。


「そのうち俺が森に帰してやるよ」


 そう言うと寂しそうな顔をする彼女。


「………私はエースと別れたくないです」


 なるほど森に帰るということは確かにそういうことでもあるのか。


「なら傍にいればいい」


 まぁ何にせよ。エルフとの関係は改善するつもりだ。

 これまでに深まってきた溝。それを少しでも何とかしないとな。


「また今度エルフの森まで案内してくれるか?」

「はい」


 頷くシオンの顔は可愛かった。

 と、これからあの魔人の事でも考えようか。

 いったい何が目的なのやら。



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