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三話 少女が落ち込んでいた理由

 俺はルーナに声をかけてから素直に折れた少女を追ってきた。

 彼女が脇道に逸れたところで声をかける。


「あんた」

「え?」


 フードを被った少女がその声に振り向いた。

 分かりやすいように肩に手を置いたから直ぐに自分に声をかけていると分かってくれたらしい。


 それに破魔石を持ったままこっちを向いたのでスキルを使った。

 やはり、か火のない所に煙は立たぬって言うし何か疑うところがあったんだろうな。見事に偽物だ。


 そして彼女の考えは当たっていた、と。

 だがさっきの鑑定士は正真正銘のSランク鑑定士ということで強く出れなかった、ということか。

 それも仕方ない話か。鑑定スキルのない人間は鑑定士以外に信じるものなんてないしな。


「それ、魔を打ち破る力のある破魔石じゃないよ。本物じゃない」


 ブオン。確認を終えスキルを終わらせるとそんな音を立ててウィンドウが閉じた。

 もちろん他の人間には聞こえない。


「レア度最低のただの石だよそれ」

「貴方は?」

「エース。鑑定スキル持ちのただの出来損ないだよ。名前は売れてないし知られてない。だから別にさっきの話は信じなくてもいい」


 鑑定スキルを持っているとはいっても鑑定を間違える事だってある。

 そんな不安定なスキルで鑑定されたものでも信頼させるためのものというのが知名度だ。


 この人はきちんと鑑定をしたという実績こそが俺たちの信頼にそのまま繋がる。

 しかし俺にはそれがない。


「いえ、信じますよ。それよりさっきの話どこから聞いていたのですか?」

「途中から。2人が言い合いを始めるところからだな」

「そうですか」

「一体何があったんだ?」

「お母さんが倒れてしまったんです。それが難病らしくてお医者様でも治せないって」


 なるほどな。


「それでそれが悪いもののせいだと思い破魔石に頼った、と?」


 コクっと首を縦に振り頷く少女。


「とりあえずその母親という人を見せて貰えないだろうか?」

「ちょっとエース。街の案内はいいの?」

「悪いなルーナ。もう少し付き合って貰えないか?困っている人がいるのに何もしないというのは心苦しいから」

「私も助けて貰ったから何も言えないよ」


 そう納得してくれたらしい。

 今度は女の子に向き直した。

 するとフードを脱いでくれていた。

 一応名前を聞いておこうか。


「君の名前は?」

「シエルです」


 名乗ったあともう一度口を開いた。


「それで、お母さんの件大丈夫ですか?」

「勿論。案内してくれ」



 シエルの父親はどこかに行っているようで今はいないみたいだ。

 その家にいたのはシエルとその母親だけ。

 母親は寝たきりだ。目を開けない。


「【死の誘い】だな」


 スキルを使い母親を見るとステータスの項目に表示されていたものを読み上げた。

 これは不味い状態だな。


「死の誘い、なんですか?」


 自分の母親がそれを受けていることを信じられないのだろう。


「あぁ。放っておけば間違いなく死ぬ」


 死の誘い。バッドステータスとしては最悪の部類のものだ。


「先も言ったが俺は無名の鑑定スキル持ちだ。別に信じなくてもいい」

「いえ、信じますよ。ここまで来てくれたあなたの事を私は信じます」


 頭を下げるシエル。


「治すためにはどうしたらいいでしょうか?」

「悪いがそれは専門外でな。俺からしたら不死鳥の羽を使うしかないように思う」

 

 俺が持っているのはただの鑑定スキル。

 それ以上のことは今は当然できない。


 だがどんなバッドステータスも一瞬で治す不死鳥の羽を鑑定スキルで見つけることはできるかもしれない。


「でも、不死鳥の羽って偽物が多いんですよね?」

「あぁ。精巧に作られたものまであるしな」

「ならオークションで本物を見つけて落札するしかないですかね?」

「いや、それはダメだろう」


 不死鳥の羽はとてもレア度の高いものだ。

 オークションだけは絶対にない。金と時間の無駄だ。


「本物の不死鳥の羽なんかオークションに出回るわけが無い」

「な、なぜですか?」


 驚いて聞いてくるシエル。


「私も気になるかも。不死鳥の羽って獲得難易度も高いしオークションで見つけるしかなくない?」

 

 ルーナの考えは一般的なものだ。

 一般的にあれを手に入れるにはオークションからと考えるのが普通だし俺もそう思っていた。

 しかしこの国の商売を見てからは考えを改めた。


「本物なんて出回らないだろうな」

「偽物ばっかりなのは分かっていますが、でもオークションしか………」


 シエルはかなり参っているらしい。


「いや、有り得ないよ。あったとしても本当にごく稀にだろう。確率としては俺たちが生きている間に開かれるオークションで本物を1度見れるかどうかくらいじゃないか?」

「そんな………」


 落ち込むシエル。無理もない。


「でも、どうしてそこまで言いきれるの?」


 ルーナは俺がこうまで言い切っているのを疑問に思ったらしい。


「レア度のそこまで高くない破魔石すら、当たり前のように偽物があるんだぞ?それは俺たちが今見た。その上を行く羽なんて本物が出回ると本気で思えるか?」


 厳しい話だが俺がオークション漁りなんて無意味だと言い切ったのはそういうことだ。


「なるほど………そこまで考えてたんですねエースは」


 納得したように頷くシエル。


「なら出回るわけもありませんね。不死鳥の羽なんて」

「厳しい話だがな」

「でも、どうするの?死の誘いなんてデバフ羽じゃないと解除出来なくない?」

「勿論羽は見つける」


 それは間違いない。羽は手に入れるつもりだ。でなければ死の誘いは治せない。

 今はそう考えている。


「そもそもどうしてこの人は死の誘いなんてデバフをもらってるんだ?」


 こんなデバフ普通に暮らしていれば貰うわけがない。

 それに使用するモンスター等もかなり少ないはずだが。


「デッドエンドです」

「デッドエンド?」

「はい。死の森、その最奥にいると言われているデッドエンドに付与されたと言われています」


 最難関ダンジョンと呼ばれている死の森か。

 正直な話自己責任と言ってしまえばそうだが。

 乗りかかった船だし、あいつに貰ったのなら一応羽以外にも対策はあるな。


「分かった。俺がデッドエンドを倒す」

「無理ですよ!死ぬつもりですか?!」

「無理に決まってるよエース。討伐難易度はランクがない程なんだよ?!」


 2人にそう言われるがそれ以外に方法は無いと思う。


「羽の入手よりはまだ簡単だろ?」


 不死鳥の羽は死者すら蘇生させると言われている。そんな羽だからポンポンとその辺には落ちていない。

 ならば話は決まったようなものだ。


「固定であそこにいるデッドエンド。あいつを倒しさえすれば死の誘いは解ける」


 雑魚モンスターはランダム出現らしいがボスと呼ばれるデッドエンドはその限りではない。最奥のフロアに固定で出現する。しかもそれは同一個体のはずだ。

 死の誘いは術者を倒せば解ける。


 なら、この人が死んでしまう前に術者を倒せばいい。

 それだけの話だ。



更新予定です。

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