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二十八話 約束

「そういえばエースはルクスブルクの人だったみたいですね」


 そう言ってきたヒイナ。

 もう、隠す必要は無いから仲のいい人には話した。

 別に話す必要があるとも思えないけど念のためだ。


「ん、あぁ。そうだよ。今はあいつらと関わりたい等とは微塵も思わないけど」

「本当にお辛かったみたいですね」

「そうだな。毎日凄まじかった。あれがあいつらの本当の顔」

「でも、良かったですね悪事が知れ渡ってあの人たちもう社会的にドン底ですね」


 そう言って笑顔を浮かべる彼女。

 確かにそうだな。悪人の悪事がバレて社会的に終わるこれほど清々しい気分もなかなかないものだ。


「シドもちゃんと裁いてくれるって言ってたし俺としても心残りというものもないしいい結果だな」

「そう言えばシド王と凄く仲が宜しいですよね」

「そうか?」


 自分ではそうは思えないが。


「シド王はエースが来てからお変わりになられましたよ。エースが来るまでは毎日退屈そうにしておられたのに最近は毎日楽しそうですから」

「そうなんだな」


 それは知らなかった話だ。

 当然といえば当然だが、だって俺が彼と知り合ったのは最近の話だし。


「はい。ですからこれからもお傍にいてあげてくださいね」

「ふむ。俺もシドに気に入られているのは悪くは思わないしそうだな」

「それより王国を持つとかという話はどうするつもりなのですか?」

「その件なのだがな。そうなった場合俺はルシフェルスをどうすればいいのか分からなくてな」


 1度請け負った任を簡単に辞めてしまうのもどうかと自分では思うんだよなぁ。

 それに俺が今辞めてしまえば王の剣は暫くは1本しかないことになってしまう。


 でも、王様という響きは悪くないし。

 でも、ルシフェルスという響きも気に入っている。

 でも、何より俺だけの国を作れるのは面白そうではあるし。

 悩むところだ。


「その辺は相談してみては如何でしょうか?」

「ふむ、それもありかもしれないな」


 そうだな。

 確かにそうしてみるのもありかもしれない。

 ならまた今度シドに相談してみようか。


「それより今日はデートだろ?デートらしいことしようぜ」

「勢いで言ってしまったのですけれどデートってどのようにすればよいのでしょうか?」


 そんなことを真面目な顔で語るヒイナ。


「俺も知らないけど適当にその辺プラプラしてるだけでもいいんじゃないか?」

「そうですね。そうしましょうか」


 俺達は庭園に開かれた屋台を回ることにした。

 その時。


「あ、ルシフェルス卿〜」


 俺を呼ぶ声があったのでそちらに目をやった。


「いつぞやの店主か」

「はい!あの時はありがとうございます。ルシフェルス卿考案のピザを商品として置くようになってから客足が良くなったのですよ」


 別に俺が考案した訳では無いのだが細かいところか。


「ピザってあの時のあれですよね?」


 俺の袖を引っ張って聞いてくるヒイナ。

 頷いて答える。


「今日も提供させて頂いているのですがどうでしょうか?」


 店主が俺にそう提案してきた。

 そうだな。


「2切れ貰えるか?」


 対価を支払う。


「ありがとうございます。はい。こちらを」


 受け取るとその場でヒイナに渡した。焼きたてだ。冷めていたあの時とは違う。


「あ、熱いですね」

「そりゃ、そうだろ」


 焼きたてだから暑いに決まっている。

 ふぅふぅ息を吹きかけて必死に冷ましているヒイナを見ると何故か笑えてきた。


「な、どうして、笑うのですか?!」

「悪いな。何だか笑えてきてな」


 その後何故か怒ったヒイナに追い回された。



「これが恋なんでしょうか?エースといると胸がドキドキします」

「胸がドキドキだと病気という可能性もあるが」

「私は健康ですから」


 頬を膨らませるヒイナ。


「王の剣と盾が惹かれ合うのって何だか運命だと思いませんか?」

「どうだろうな。それにその言い方だと俺がヒイナに惹かれてるみたいだな?」

「あ、ごめんなさい………」


 決めつけたことについて悪いと思ったのか謝るヒイナ。


「別に気にするな」


 俺も下らないことを口にしてしまった気がする。


「エースって意地悪ですよね」

「ま、性格良くはないだろうな」


 軽く笑って答える。


「でも、そういうところもいいと思います。甘やかされてばかりだとダメになっちゃいそうなので。先日それに気付きました。ほんとにエースには助けられてばかりです。貰ってばかりです」


 そう言って立ち上がるヒイナ。

 そうしてから俺の顔を見た。


「私からエースに返せるものってあるのでしょうか」

「別に俺が勝手にあげたものだしそんなもの気にしなくていい」


 というより俺としてはあげたつもりもないのだが、しかしそれを聞いて頬を膨らませるヒイナ。


「返させてください」

「なら、今度俺が任務に行く時は付いてきてくれ。盾としてな。王の剣が拳ばかりで戦っていては様にならないし剣の練習もしたいと思っている」


 俺はあくまで王の剣であり王の拳ではないのだ。

 そこを履き違えてはならいないだろう。

 何より剣を持った方が見た目もいい気がする。


「そんなことでいいのなら喜んで」

「でも、王の護衛とかはいいのか?」

「盾と剣役の家が複数あるのは、どんな場合でも成り立たせるためです。それにエースは圧倒し過ぎて分からないかも知れませんけど、あれでもシルバはかなりの強さを誇っているんですからね」


 そう説明してくれる彼女。


「そうだったのか。シルバってそんなに強かったんだな」


 ただの便利屋くらいにしか思っていなかったが確かに俺が勝ってしまった時彼の信頼の高さを窺わせる声が複数あったな。


「なので基本は大丈夫ですよ」

「そうなのか。ならよろしく頼む」

「はい!」


 今度は剣の練習もしてみようか。

 ヒイナと出かける次の機会が楽しみだ。

 その後も何故か顔を赤くしたヒイナを連れて屋台を回ることにした。





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