二十七話 謎デートが始まりそう
次の日祝賀会が行われた。
滅亡の竜の件については国民に見えていたらしくそれの説明も兼ねてのものだ。
シドと共に俺は各地区の砦に登って説明をして回っていた。
そして最後の区画。
「先日の滅亡の竜の件について説明したいと思う。皆には多大な不安を与えたことだろう」
最初にそう民を心配するシド王。
流石王様というべきなのだろうか。
誰かの心配ができる、何事にも言えることだがこういう人に上に立って欲しいものだな。
「次に結果なのだが滅亡の竜はここにいるエース・ルシフェルスが討伐した。封印ではない!あの不滅の帝と謳われた竜を、ここにいる我が友エースが討伐したのだ!」
それといつの間にか俺は我が剣から我が友にランクアップしていた。
中々に嬉しい話だ。
「何故竜が復活を果たしたかが気になる者もいるだろう!そいつらのために答える!もう1本の我が剣であるルクスブルクの仕業だ!これは俺の失態ではあるが、しかしここにいるエースがルクスブルクを始末してくれた!もう不安に思うことは無いぞ!全ての不安要素は絶たれたのだから!」
王様がそう言った瞬間だった。
ワァァァっとこの場は盛り上がりを見せたのだった。
「英雄!英雄じゃないか!」
「そうよ!英雄がいるわ!」
からそんな声が聞こえてきた。
どうやら俺のことを英雄とそう言ってくれているらしい。嬉しい限りだ。
「エース一言頼む」
王に促され俺は一歩前に踏み出した。
「俺がエース・ルシフェルスだ。王の剣である」
先ずは自己紹介といっておこう。
国民を見回しながらそう口にした。
「英雄!こっち向いて!」
下からそんな声が聞こえたから適当に向いて手を振っておく。
「今私の事見て微笑んだ!」
「馬鹿なんじゃないの?!私を見て微笑んだのよ!」
何やら不穏な声が聞こえるが俺の知ったことではないか。
「皆には迷惑をかけたかもしれない。俺の初動が遅れたことなどが積み重なって。でも安心して欲しい。全ての悪は絶たれたのだから」
「エース様ーこっち向いてーー!!!」
また聞こえたので顔を向けることにした。しかし
「エース様ー!こっちもー!!!!」
忙しいな。
しかしこれもまた俺の役目なのかもしれない。
左右に上下に顔を動かして話し続ける。
「最後にだが俺は王の剣となってまだ日が浅い。これからも迷惑をかけるかもしれないが、よろしく頼む」
そう言って下がる。
「エース様ー!もっと顔見せてー!」
そう聞こえたので最後に1度だけ見せておくことにする。
「きゃー!!!エース様がまた出てきたわよ!」
どうやら満足してくれたらしいので下がることにした。
「俺が出るより歓声が多いとは嫉妬するぞエース」
シドにそう言われてしまった。
だがどうなのだろう。
これに関しては仕方ない気がするが。
「やっぱり王様より俺みたいな貴族の方がまだ親しみやすいんじゃないか?」
俺はそう思うからそういうところもあるのではないだろうか。
「そうなのだろうか。もっと親しみやすさを感じさせるようにしなくてはな」
何やらブツブツと言い始めるシドだった。
※
今日は国を上げての祝賀会のため何処でもお祭り騒ぎだが、俺は王城に戻ってきた。
「エースー」
ルーナが俺を見つけて手を振っていた。
「お待たせ。結構説明に時間がかかったな」
ルーナにそう説明して近付く。
その隣にはリヒナもいた。
どうやら仲良くしてくれているらしい。
「あ、ルシフェルス卿。こんにちは………」
そう言ってルーナの後ろに隠れてしまう。
「照れてるみたい」
なははと笑うルーナ。
「あの時は、最後だと思ったからです!」
ルーナの後ろから声を出している。
本来のリヒナはこういう内気な子らしいな。
「リヒナもっと攻めなくてはルシフェルス卿は振り向いてくれませんよ?」
その時アゼデレアがそう言いながら近付いてきた。
「お姉ちゃん言わないでくださいよ!」
「みんな知ってることですから」
リヒナの反応を見て笑うアゼデレア。
「アゼデレアも中々意地悪だな」
「ヒイナ」
「ん?」
アゼデレアの一言に疑問を示す。
「ヒイナと呼んでください。私の名前です。逆にどうして今までアゼデレア呼びだったのでしょうか」
少し拗ねたように聞いてくる彼女。
「そう言われても俺ヒイナの名前今知ったし」
「そうでしたっけ?」
「そうだよ。というよりそれなら俺のこともエースでいいよ。ルシフェルスだと堅苦しいだろ?」
ルシフェルスと呼ばれるのは別に嫌いではないがやはり堅苦しさは抜けないしそれなら俺のこともエース呼びでいい。
「ならエース、と呼ぶことにしますわね」
何故か顔を赤くする彼女。
「どうしたんだ?」
「いえ、その。何だかよく分からないんですよね。エースといると心が揺れると言うのでしょうか。あの時エースに諦めるなと言われてからずっと自分の世界が変わったようなそんな気がするんですよね」
「お姉ちゃんもエース様に世界を変えられたのですね」
「否定は出来ませんね。これが恋というものなのでしょうか?」
そう聞かれてしまったが
「俺に聞かれても困るぞ」
「そうですよね。でも自分では何なのか分からず………うーん。もどかしい気持ちです」
そう言って俯いた彼女。
「あの」
しかし1分くらい待っていたらまた顔を上げた。
その顔はひたすらに真剣なものだった。
どれくらい真剣かというと昨日一緒にリヒナを助けた時にしていた顔くらい真剣な表情。
「何?」
だから俺も返事を返すのに結構真面目な顔を作った。
「デートしてくれませんか?」
「デート?!」
しかし、その言葉で限界だった。
意味が分からないぞ。何故そんな顔でデートの誘いの言葉が出てくるのだ。
でも、誘われたのなら蹴るわけにもいかない。
「まぁいいけど」
「じゃあ、いきましょう!」
そう口にして俺の手を引っ張るヒイナだった。
後ろからはルーナ達の見送る言葉が聞こえた。
何だか謎のデートが始まりそうだが。