表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/41

二十四話 討伐と帰還

 それが聞こえたのは本当に突然だった。


「ゴァァアァア!!!!!」


 王国に戻ろうとしたその時。

 ゴミ共3人を引きずって歩き始めた俺達の背後からけたたましい声が聞こえた。

 

「この声は!」


 感極まったような声を出すハンニバル。

 後ろを振り向くと


「ギャァァアァ!!!!!」


 俺達が戦った場所の更に奥の谷になっている部分。

 そこから声が聞こえていた。

 人間のものでは無い。


「滅亡の竜だ………滅亡の竜が復活したのだ!」


 ハンニバルが叫ぶ。


「エース!これでお前も終わりだ!俺だけでは終わらせん。お前らも殺す!殺してやる!道連れだ!私の支配下にない滅亡の竜は全てを破壊するぞ!」


 ハンニバルがそう告げた瞬間竜は天蓋を突き破って封印の洞窟を抜けていった。

 不味いかもしれないな。

 それより


「ハンニバル。お前は1番痛めつけてやるから覚悟しておけよ」

「はっ!滅亡の竜に勝てるわけが無いだろ!世界最強のモンスターだ。私も死ぬがお前も死ぬ!死なないわけがない!全部死ぬんだ!」


 やたらハイテンションなハンニバルだがそれにしてもこのままでは不味いな。


「兎に角出よう」


 ルーナ達の顔を見て外に急いで出ることにした。

 今にも天井は崩れてきそうだし。



「ゴァァァァ!!!!!」


 外に出ると滅亡の竜が空高く浮かび上がっていた。

 さて、どうするか。


「お前らも終わりだよ!頼みのエースは格闘術特化の無能!あの空を飛び回る竜には手も足も出せるわけもない!終わりだ!この世界は終わるんだよ!」

「黙れ」


 殴って黙らせる。それにしてもよく喋るな。


「雑魚ほどよく喋るよなまったく」


 どうやら気絶したらしいハンニバルをその辺に放り投げて次の手を考える。

 とりあえずスキルを使った。

 ウィンドウがいつも通り表示される。


「名前は滅亡の竜か。討伐難易度測定不能、か。弱点は目………なるほどな」


 弱点は分かったがインファイト特化の俺では確かに手が出せない。

 そこで、だ。

 ルーナ達の顔を見た。


「見ての通り俺はインファイト特化で現状は魔法もあれを落とすのに必要なものは使えない。でもスキルはいつも通り使える」


 奴の行動は先まで見えている。

 なら後は簡単だ。


「力を貸して欲しい」


 サーシャの後ろに回ると彼女の手に自分の手を添えた。

 彼女は近距離戦の評価ではなく魔法の評価でSランクになったらしい。

 だからいけるはずだ。


「あのエース様どうするつもりですか?」

「氷の槍を作ってくれ」

「は、はい!」


 右手にそれを生み出す彼女。

 威力は十分なように見えるがもう少し後押ししておこうか。


「シエル。氷属性アップの魔法をかけてくれ」

「は、はいです!」


 言われたままにすぐかけてくれた彼女。

 これでぐんと威力が上がったはずだ。


「ルーナ」

「何?」

「周囲に雑魚が湧いてきてる。俺たちの邪魔をしないよう援護してくれ」

「うん。分かった」


 そう言って俺に近付こうとしていたスライムを切り倒す彼女。


「サーシャ。あいつはそろそろ世界を無に返した技スーパーノヴァを使う。だが、それには多少時間が必要でな。その予備動作中は動けない。そこを狙い撃つ。兎に角落ち着いてくれ。時間は十分にあるから」


 本当は予備動作に入ってから5秒で技に移るらしいから事実上の一発勝負なのだが不安にしても仕方がない。

 そしてそれを受ければいくら俺でも多分死ぬ。

 でも俺は落ち着いていた。


「は、はい。エース様の手すごく落ち着きます」

「そうか。それは良かった」


 焦って失敗してしまえば元も子もない。


「ゴァアァア!!!!!!」


 竜はさっそく予備動作に入ろうとしていた。

 サーシャの体を動かす。


「今だ!」

「届いて!」


 俺たちの思いを乗せた氷の槍。

 それは空に向かって伸びていく。

 狙うは目。それだけだ。


「ギャァァァァ!!!!!」


 やがて俺たちの放った思いは竜の目を穿った。


「やりましたか?!」

「多分な」


 スキルを使う。すると


「滅亡の竜のステータスは死となった。成功したようだな」


 それから数秒後、ドォォォォン!!!!滅亡の竜は俺たちの少し前に落下した。

 凄まじい振動に足を取られそうになったが何とか持ちこたえた。


「………終わったの?」

「終わったんですか?これで?」


 ルーナとシエルは実感が湧かないのかそう聞いてきたがどう見ても終わった。


「終わったよ。滅亡の竜はこれにて討伐完了だ」


 俺がそう伝えると


「やったぁぁぁぁぁ!!!!」

「やりましたね!エース!!!」


 彼女達は飛び跳ねて喜んでいた。


「滅亡の竜を………倒す、だと?」


 唯一意識のあるゼルギスがそう呟いた。


「有り得ないありえるわけが無い!それも、一撃だと?!」

「そう思うのはお前が能無しだからだろ?ゼルギス」


 顔を踏み付ける。


「どうだ?今まで馬鹿にしてきたやつに足蹴にされる気分は」

「………」


 何も言えなくなっていた。

 つまらんな。足を離す。


「お前らを許すつもりは毛頭ない。必ず罰を受けてもらう」

「好きにしろ………ここまでされては何も言えん」


 ゼルギスは意外にも素直に現実を受け入れていた。


「理解が早いようで助かるよ」


 そう吐き捨ててからルーナ達の顔を見る。

 何はともあれこれで任務は完了だ。

 シドに言われていた調査は無事に終了しその黒幕も倒すことが出来たというわけだ。


「さ、今度こそ戻ろうか」

「そうだね。うん」

「はい。それにしても今回の仕事はちょっと疲れましたね」


 ルーナとシエルはそう頷いていた。


「………エース様あの竜は私が?」


 でもサーシャだけは今でも自分のやったことを信じられないみたいだ。


「あぁ。サーシャがやったんだよ」


 俺は少しばかり補助しただけだ。


「嬉しいです!私あんなの倒すことが出来て嬉しいです!」


 そう言って俺の首に手を回して抱きついてくる。


「あぁ。よくやってくれたよ本当に」


 そうやって頭を撫でているとシエルが俺の裾を引っ張っていた。


「私も褒めてください」

「なら私も褒めてよ」


 シエルの頼みに便乗してくるルーナ。

 仕方ないな。


「帰ったら思う存分褒めるよ」


 そう伝えると2人の顔も可愛らしい笑顔が浮かんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ