二十三話 復讐の終わり
封印の洞窟はそんなに深い場所ではない。
直ぐに開けた場所である最奥にたどり着いた。
そこにいたのはハンニバルとその息子のゼルギス。
「グレセイス………お前」
俺に引きずられたグレセイスを見て呟くゼルギス。
こいつらの見ている前でグレセイスを壁に向かって投げつけた。
這いずって逃げるかもしれないがそんなに速度が出る訳では無い。
ここなら監視していられるし直ぐに見つかることだろう。
「俺の名前は言わなくても分かるな?エース・ルシフェルス。ルクスブルクと共に王の剣と呼ばれる存在だ。しかし残念だな。ハンニバル、グレセイス。貴様らは切られた。ここで敗北を認めてもらおうか」
「父様ここは、俺に」
「期待している」
だが俺の言葉を聞くはずもない2人はそう会話しゼルギスが前に出てきた。
「ここで俺たちの計画を終わらせるつもりはない。貴様の剣見定めてやろう」
剣を構えるゼルギス。しかし俺は剣を投げ捨てた。
こんなものを使う必要は無い。
「………剣を投げ捨てた………?」
「お前みたいな雑魚相手に剣を使う必要などないから」
「愚弄するのもその辺にしておけ!」
飛ばされる雷。
それを弱点を殴ることで描き消す。
「その動き。お前………まさか。いや、有り得ん………」
俺の動きを見てようやく気付いたのか顔を歪めるハンニバル。
「父様どうなさいましたか?」
「奴は。私達が血眼になって探していたクズのエースだ」
「何ですと?!」
「くくく、ふはははは………ようやく気付いたのか間抜け共。そんな頭しかないからここまで追い詰められる」
笑いが止まらない。
心のどこかでは気付かれているのではないかと思っていたがどうやら本当に気付かれていなかったらしい。
はぁ、俺は今までこんなバカどもに虐げられてきたのか。
「何故だ!何故そんなに若い!お前はゼルギス達と同じく20を超えていただろう?!」
「そんなの簡単だよ。若返りの薬を使った。それだけだ」
「若返りの薬?」
知らないのか首を捻るハンニバル。
「あぁ。若返りの薬だ。お前ほんと間抜けだよな。俺が家を抜け出した日に出会った少年。あれは俺だよ。お前バカだから俺の嘘に引っかかったけどな」
あっはっはっは。今思えばあれも忘れられるものではない。
あんな間抜けな男初めて見たのだから。
1番探している相手が目の前にいるのに全く気付くこともなく取り逃がすなどバカもいいところだ。
「なら、私たちの捜索は………」
「笑わせてもらったよ。いやほんとに面白かった。いもしない方角を必死に探し回っているお前らを眺めるのはこれ以上ない娯楽だった」
「黙れ黙れ黙れ!」
俺の言葉に怒ったのか飛び込んでくるゼルギス。
「雑魚が俺の前に立ち塞がるな。俺に話しかけていいと誰が許可を出した?」
ガシャン!
ゼルギスの刃を躱してからその鎧を拳で打ち砕く。
ガラガラと音を立てて地面に落ちる鎧の欠片達。
「馬鹿な………1番堅い素材のクリスタルで出来た鎧だぞ?」
震える足で下がり始めたゼルギス。
「呆れるな。どんな凄い物にも全部弱点があるのも知らないのか?例えば俺たちでも心臓を抉られては普通は生きられないだろ?それと同じだ間抜け」
「そ、そんなありえるわけが無い!お前如きがその弱点を見抜き破壊するなど!」
怒りに身を任せて迫り来るゼルギス。
全部分かっている。
スカッ!奴の振った一撃を最低限の動作で避けてナイフを取り出すとその剣を━━━━切断した。
「バカな………」
「ばーか」
ゼルギスをぶん殴ってぶっ飛ばす。
壁に頭をぶつけて気絶した。
それを見てから全ての元凶ハンニバルに近付く。
「な………何が目的だ」
既に戦意は喪失したのかハンニバルは尻を地につけて座り込んでいた。
足は動かないのかプルプルと震わせているだけ。
「命だけは………助けてくれ」
壁まで追いやったハンニバルの肩に足を押し付け拘束する。
「何故俺の言うことを1度も聞いたことがないお前の言うことを聞かねばならん?」
「わ、悪かった」
「悪かった?誰を相手にしているのだ?ゴミクズがその口引き剥がすぞ」
ついに唇が震えて目からは涙が零れ始めた。
あぁ、なんという快感だろうか。
今までねじ伏せてきた奴を逆にねじ伏せることの快感。
他のことでは体験できないものだろう。
「も、申し訳ございません!」
「誠意が足りねぇんだよ。地に額を打ち付け血が出るくらいの謝罪をしろ」
「申し訳ございませんでした」
何度も何度も頭を打ち付け謝るハンニバル。
ざまぁないな。
「でよ。それをしたからって許すとは一言も言ってないからな?」
「そ、そんな………」
「当たり前だろ。自分のやってきたことを胸に手を当てて考えてもみろ」
そうしてから最後に死の宣告を行う。
「お前が行ってきた行為死んで全て終わると思うな?俺の恨み。一生かけて晴らしてやる。お前の家族は既に壊れお前の名は地に落ち、これからは反逆者として一生国民に虐められ続ける。そんな惨めな人生がお前にはお似合いだ。俺はそれを見て笑うからよ」
「がぁぁあ!!!!!」
グシャッ!
足に力を入れて奴の肩を踏み潰した。
傷は後で癒せば何とでもなる。
永遠に苦しみ続けて欲しいものだ。
※
「クズ」
「クズですね」
ルーナとシエルはハンニバル達にそんな言葉を浴びせる。
1人寝ているやつがいて聞いてはいないだろうが。
「エース様のご活躍見ておりました。スカッとしましたよ!」
そしていつも通り俺の腕に抱きついてくるサーシャ。
だが今はこのクズ共だ。
「お前らはシュノーレに連れ帰り王様に裁かせる。一生をかけて今まで俺にしてきた罪を償い続けろ。それとな、一生かけたら許すとは言ってないからな?地の底まで追いかけて苦しませてやるからな」
そう告げると気絶しているゼルギス以外は絶望を顔に浮かべた。
いい気味だ。
さて、シュノーレに戻ろうか。
それにしてもいい気分だな。
胸のもやもやが取れた気分だ。
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「クズ騎士と呼ばれた世界最強の殺し屋世界の全てを知るために最底辺から成り上がる」というものですがよろしければこちらもお読みいただけると嬉しいです。