二十二話 滅亡の竜の復活を止める
翌日。俺は早速王に報告しに来ていた、
「虫を見つけた」
「ほう。早かったな」
その返事を受けてドサッと拘束したゲンティスを転がした。
「ルクスブルクだよ」
「やはりか。今朝方ルクスブルクが消えたという報告があってな。王の剣が王に歯向かうとは」
苦笑いを浮かべるシド。
「んー!んー!」
ゲンティスは口を塞ぎ身動きを取れない状態にしてある。
「全く面白いことをしてくれたな?ルクスブルク。貴様らの望みは何だ?」
「んー!ん!!」
「それでは喋れないか」
王がわざわざ口にあるロープを外した。
「さぁ吐け。安心しろ他のルクスブルク共も後で地獄に送ってやるから」
「シュノーレはもう………終わりなんだよ」
「ほう」
「もうそろそろ滅亡の竜が解き放たれるはずだ。そうなってしまえばいくらお前たちでも対処出来ないはずだ」
やはりそうだったのか。
滅亡の竜の復活を企てていたらしい。
「それが?」
しかしシドはそれを大事のように思っていないらしい。
「バカなのか?滅亡の竜、世界を破壊し尽くしたと言われているあの伝説の竜が我々の駒となり蘇るのだぞ?」
失笑するゲンティス。
まぁ、確かにそれほどの竜が蘇りこいつらの配下となるのは少しばかりしんどい話ではあるが。
「お前こそバカなのか?ここにいるのは世界最強の王の剣だぞ?」
そう言って俺の肩に手を載せるシド。
「敵がなんであれこいつなら倒してくれると俺は信じている」
「お前の馬鹿さ加減は中々だな。だから我々の裏切りにも気付けない」
相変わらず失笑を続けるゲンティス。
「で、言いたいことはそれだけか?」
「そうだ。ここで俺を殺しても竜の復活は止められん。既にハンニバル様が封印の洞窟に向かわれているはずだ。そしてあれが目覚めた時お前達は終わり世界も終わる。そして我々の我々だけの新世界が始まるのだ」
「寝言は寝て言え」
立場があの時とは違う。
ゲンティスの顔面に蹴りを入れた。
「俺が止める。そんなことはさせない」
やっと俺を認めてくれる場所に辿り着けたんだ。
やっと俺でいていいって認めてくれる温かさを見つけた。
「そうです!滅亡の竜が何なのですか?こちらにいるのは世界を救う最強のパーフェクトスーパーウルトラヒーローエース様なんですけど?!」
そう言って相変わらず俺に飛びついてくるサーシャ。
「そうです。私のエースが滅亡の竜に怯む訳ありません。きっとどんな場所だって勝って帰ってきてくれるんですから」
反対側にしがみついてくるシエル。
「そうそう。私のエースが全部終わらせてくれるから。あなた達みたいな王の剣になり切れていない人達が考えた計画なんて最初から全部筒抜けだし」
最後にそう口にするルーナ。
どうやら俺のことを信じてくれているらしい。
「という訳だクズ騎士共」
以前こいつらに言われた言葉をそのまま返す。
クズ騎士、俺をそう呼ぶ者はたまにいた。
今その汚名を一番似合いそうなの奴に与える。
「俺が全部終わらせる。お前らの好きになんてさせない。以上」
「くくくく、もう遅いと何度言わせる。竜は既に目覚めの時を迎えようとしているのにこんな事をしていていいのか?」
「そうだな。エース、そろそろ向かってくれるか?」
シドにそう頼まれた。
勿論向かうつもりだ。
「あぁ。終わったらピザの感想でも聞かせてくれ」
※
そうして俺たちは封印の洞窟までやってきた。
何百年も前に世界を滅ぼした滅亡の竜を封印した場所だ。
「許せませんよね。昔の人達が危険を理解して封印したと言うのにそれをまた復活させるなんて」
「そうですよエース様。きっちりお仕置きしてあげましょう!」
シエル達の言葉に頷く。
確かにそうだな。
「ルクスブルクの計画は絶対に止める。それは決定事項だ」
目の前にある洞窟への入り口。
それに入ろうとしたが
「ここは通さんよルシフェルス。お前がここに来たということはゲンティスは負けたということか」
「グレセイスか」
ハンニバルの指示なのか洞窟の入り口の脇から俺たちの前に出てきた奴。
「何故俺の名前を?」
そこでハッと気付いたような顔をする男。
「ルシフェルスの名前はエースだったな………お前、もしあしてあの時の出来そこないエースか?でも、何故そんなに若いのだ」
どうやら俺だと気付いたらしい。
鋭いと褒めてやってもいいかもしれないな。
「お前に教える必要はないだろう?何故ならお前みたいな考える頭のないバカに教えたところで三日後に忘れているのだから」
「抜かせ!」
自分が言われては我慢ならないのか感情のままに突っ込んできた。
しかし
「ばか、な………」
奴の素直なその剣を避けて殴り倒す。
それだけだ。
それだけで沈むグレセイス。
「お前弱いな」
「この俺が………為す術もないなかっただと………?」
ごほっ!と口から血を吐いている。
動けはしないが死にはしない程度に痛めつけた。
「何故、この俺が………」
「お前が弱くて俺が強かった。それだけだろう?ゴミクズが」
剣を奪うとあの時のように斬りつけた。
ゲンティスと同じ風に背中に消えぬ傷を。
「がぁぁぁぁ!!!!!やめろ!」
ある程度傷を付けるとそれをやめて足を掴む。
「逃げられても困るからなお前も一緒に奥まで付いてきてもらう」
「が!ぐぅ!」
引きずる度に傷が痛むのか声を盛らすグレセイス。
だが知ったことではない。
俺たちは洞窟の更に奥へと向かう。
目指すはクソッタレのすべての元凶であるハンニバルのいる場所だ。
ようやく全ての復讐が出来る。
そう思うなら本当に口が歪むのだった。
出来ることなら誰かこの笑いを止めて欲しいくらいだ。
新作ですが明日くらいには投稿できそうです。
よろしければそちらもお読みください。