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二十一話 復讐の始まり

「はぁっ………はぁっ………」


 嫌な夢を見た。

 夜中に目を覚ましてしまった。


「たしか、あの後だったな。俺が鑑定スキルに目覚めたのは」

 

 兄にいいように使われていた俺だったがあの後に今持っている鑑定スキルに目覚めたはずだ。

 その時に敵の動きを事前に把握できるという最強スキルの使い方が分かった。

 でも使わなかった。

 理由は怖かったから。

 今にしても思えば子供だとしても馬鹿な考えだって思う。


「………」


 歯を食いしばった。

 傷が疼く。

 思い出した全部。

 計画を食い止めるだけじゃ終わらない。

 俺は………


「あのクソ共を地獄に引きずり下ろしてやる。この世全ての憎悪をあいつらに」


 このスキルがあればそれが可能だ。

 今こそあいつらを破滅へルクスブルクを破滅させてやる。

 同じ苦しみを。

 この癒えぬ傷を。



 俺達は荒野まで移動してきた。


「これか?」


 少し歩いたところに動物の死体が転がっていてその傍には黒い爪が落ちていた。

 人間の爪というより獣の爪に近い。

 それがこの辺りに沢山散らばっていた。


「うわーいっぱいあるね」

「そうだな。暴れ回った後というのは残念だが」


 一応スキルを使ってみるとやはり反応を示す。


「アイテム名は黒い爪」

「そのまんまなんですねー」


 余りにもそのまま過ぎて逆に驚いているシエル。

 確かにそのままだな。


「詳細説明。黒爪の爪。憎悪によって黒く染まった爪は全てを切り裂くだそうだ」

「憎悪、ですか」

「憎悪みたいだが」


 どういうことなのだろう。


「その黒爪さんという存在は人間を恨んでるんですかね?」


 シエルは単純に疑問に思ったらしい。

 その辺はどうなのだろうな。


「ん?」


 少し離れたところには羽も落ちていた。


「羽?」


 スキルを使うとそこには黒爪の羽と表示されていた。

 どうやら羽があるらしい。


「それに夜行性とも書いてあるな」


 そんなことまで分かるとは本当に便利なスキルだな。


「一先ず夜まで待ってみようか。向こうから来るかもしれないしな」

「エース様守ってくださいね」

「サーシャは自分の身は自分で守れるだろ?」

「守れないですー」


 Sランクと聞いていたが中々に甘えているらしい。


「仕方ないな」


 まぁ、なんでも構わないが。

 それなら守ることにしようか。



 月が俺達を照らす夜まで待ったところヒタヒタと足音を鳴らす音が聞こえ始めた。


「来たか」

「みたいだね」


 ルーナが剣を抜いた。


「みんな、援護は任せたぞ」

「はい!任されました」


 シエルは元気に答えてくれる。


「エース様も頑張ってくださいね」

「あぁ」


 答えてスキルを使う。

 浮かび上がる輪郭。

 黒爪は真ん前にいるらしい。


「シャ!」


 いきなり切りかかってくる黒爪。

 その鋭い爪を俺ではなく、隣にいたシエルに振り下ろしていた。


「シエル!」

「きゃっ!」


 咄嗟に突き飛ばすが回避が間に合わずに左腕を切り裂かれてしまった。


「エ、エース。その、ごめんなさい」


 シエルの謝罪を聞く時間も勿体ない。

 そもそも俺のせいだ。今のは反応できたのに少し遅れてしまった。

 今度こそは折角突っ込んできてくれた黒爪の懐に潜り込む。


「そこだ」


 心臓のあるであろう位置にナイフを突き立てる。


「がぁあぁぁあぁあ!!!!!」


 それだけで苦しみ始める黒爪。

 この時月光に照らされ奴の顔がはっきり見えた。


「お前………」


 こいつ、人間だ。

 恐らく人間だ。


「………人間か?」


 黒爪は話せるのかそう話しかけてきた。


「そうだが」

「私はいったい何を」


 頭を抱える黒爪。


「お前人間でいいのか?何があった」

「早く逃げて………あいつが来る」

「あいつ?」


 聞いてみたが何も返事がない。


「待て、どういうことだ?それにお前が人間なら置いていくつもりは無い」

「後ろ!来た!」


 その言葉を聞いて後ろを振り向いた。


「貴様がルシフェルスか」


 待て、この声聞き覚えがある。


「待て、答えなくてもいい。お前はここで━━━━死ね」


 ザン!

 そいつは一瞬で踏み込んできた。


「甘い!」


 キンキンキン!

 そいつの剣筋全てをナイフで受け流した。


「そこだ」

「ちぃ!」


 奴の弱点を刺突しようとしたところ先に後ろに下がられた。

 しかし


「くそ、やるな………流石ルシフェルスといったところか」


 こいつやはり気付いていないのか。

 そりゃ、面白い。

 ナイフをしまう。

 今の剣筋をやり過ごしたのなら俺はもう負けない。

 スキルによってこれからの行動は全て視えている。


「ゲンティス・ルクスブルク」

「何故、俺の名を?」

「まだ分からないのか?間抜けが」


 顔を右手で抑えて笑う。

 笑うしかないだろこんなの。


「死ぬのはお前だよゲンティス。ここでお前は死ぬ。社会的にな」


 口の端が歪む。

 あの苦しみをこいつに。

 無限の牢獄をこいつに。


「殺しはせんよ。お前には苦しんでもらう」

「何をふざけたことを、言っている!」


 踏み込んできたゲンティス。

 その剣を持つ手を叩き少し軌道をズラしてやるとそのまま掌打を顎に叩き込む。


「ぐぅ!」

「効くだろ?顎を思い切り殴られるのは」

「何だ、これは………」


 勝負あったか。

 そのまま倒れるゲンティス。


「この格闘術………貴様………」

「思い出したか?ゲンティス」


 初めてこいつの顔に恐怖が浮かぶ。


「お前………エースか。馬鹿な、お前はそんなに………」

「若くないはず、か?そうやって思い込んでくれるから他の連中もハンニバルも出し抜くのは簡単だったよ。マヌケのクズ共がよ」


 顔に笑いしか浮かばない。

 笑うしかないだろこんなもの。

 奴の剣を奪い取る。


「散々バカにしてきたやつを馬鹿にできる。痛めつけてきたヤツらを痛め付けれる。これほど清々しい気持ちもないよな?」

「ぐぁぁぁ!!!!」

「おっと、悪いな。お前らの言う通り俺はルクスブルクとしては3流だからよ。ざっくりやっちまったよ」


 ゲンティスの背中から溢れる血を見つめる。


「やめてくれ………」

「やめるわけないだろ。全部潰してやるよお前もお前の兄弟もそしてルクスブルクも。俺が潰してやる」

「がぁぁ!!!!!!」


 奴の身体を思う存分斬りつけた。

 とりあえずこんなところにしておくか。


「お前ら全員社会的に殺してやる。俺と同じ苦しみを噛み締めろ」


 やはり顔は歪むのだった。



新作近いうちに投稿できそうです。

そちらも読んでいただけると嬉しいです。

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