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十九話 初めての料理は好評

「わぁぁあ!!!」


 窯から取り出したピザを見て最初に口を開いたのはルーナ。


「どうだ」


 こんがりといい感じに焼けたピザが俺達の前にあった。


「これがピザなんですか?すごくいい匂いがしますね。溶けたチーズがすごく美味しそうです」


 シエルが聞いてくる。


「ふむそうだな。俺の記憶が間違ってないならこれがピザだな」

「流石エース様です!こんなものを知っていて作れるなんて!こんなの知ってる人エース様しかいませんよね」


 そう言って右腕に抱きついてきたサーシャ。

 相変わらずなようだな。


「これがピザなのですか?あの材料からこんなものが出来るなんて」


 ふむ。仕方ないことなのかもしれないが。

 やはりこの店員でもピザというものについては作り方どころかその存在すら知らなかったようだな。

 まぁ、あの材料からこんなものを作れるなんて思わないだろうから仕方ないか。


「あの、もしよろしければ作り方を教えて頂けませんか?」

「店を借りた恩義もある。構わないが明日でもいいか?」

「あ、ありがとうございます。明日で大丈夫です」

「よし。ならば明日またここに来るから待っていてくれ」


 今日はこれを持ち帰り食べることにしよう。



「少し待っていろ」


 テーブルの上にピザを置いてナイフで切り分けていく。

 1枚を8枚に切り分けることができたので1人2枚ずつだ。


「いただきまーす」


 みんなが椅子に座ると食事前の挨拶をして早速ピザを食べ始める。

 俺自身料理経験自体ほぼないし、その上誰も作ったことのないものを作ったが味の方はどうだろうか。


「あ、美味しい」

「ほんとです。このみょーんって伸びるチーズも凄く美味しいですね」


 ルーナとシエルは初めて食べるものに夢中なのかパクパクと食べていく。


「ほんとに美味しいですね。流石エース様が作ったものです」


 サーシャもどんどん口に運んでいくのを見てから俺も口に入れてみた。


「ふむ。美味いな」


 確かに俺もこんなに美味しいものは初めて食べるな。

 ルクスブルクにいた頃もこんなにも美味しいものは食べたことがない。

 いつもはメイドが作ったお上品な味付けのものばかり食べていたからこんな雑な味付けのものを食べることが無かったためよりそう感じるのかもしれない。


「これ、王様にも食べて貰えないんでしょうか」


 シエルがふと呟いた。


「シドに?」

「はい。こんなに美味しいもの食べさせてあげたらもっと仲が良くなると思いますよ」

「ふむ。どうだろうな」


 それはたしかにいい案かもしれないがどうなのだろう。

 やはり王様と親密にしていて損はないのは確かにそうだが。

 俺の話も信じてもらえやすくなるだろうし。

 しかし口に合うかどうかとかそんな問題もあるな。

 

「だが、そうだな。持って行ってみるのもありかもしれないな」


 食べてもらえるかどうかは分からないが持って行くことにしてみようか。

 どうせ明日も作り方を教えるのだしその時に作っておこうか。


「美味しかったですー」


 食べ終わって満足そうな顔をしているサーシャ。


「こんなに美味しいもの生まれて初めて食べましたよエース様。また作っていただけますか?」

「まぁ、構わないが。しかしだな。俺としてはサーシャ達にも作ってもらいたいところではあるのだがな」


 やはり自分で作ったものを食べるより誰かの作ったものを食べたいという気持ちはあるものだ。

 それが女の子の作るものなら尚更。

 大雑把な俺よりはマシなものを作るだろうし。


「なら、作り方教えてくれますか?次は私が作りますよ!」


 机に手をついて立ち上がってからそう言ってくれるサーシャ。

 ならその時は楽しみにしていようか。




 次の日俺は昨日のパン屋にピザの作り方を実演して教えてやった。

 それと同時に王へ送る分も作った。


「ありがとうございますルシフェルス様」

「何、気にするな。昨日の恩もあるしな」


 パン屋にそう答える。

 それに俺自身秘匿しておきたいとは思えないし。


「またお立ち寄りいただけますか?」

「そうだな。また来ることもあるかもしれない」

「その時までにはより良く改良を重ねておくので期待していて下さいね」

「あぁ。期待させてもらうよ」


 さて、次はシドのところだな。

 俺たちは歩き始めた。


「ルシフェルス様!おはようございます!」


 ビシッと立って俺に腰を折る門兵達。

 別にそこまでしてくれなくても構わないのだがな。

 苦笑いしながら王城の方へ向かう。

 

「あら、ルシフェルス卿ですね。おはようございます」

「おはよう。そういうあんたはアゼデレアといったか」


 俺が庭園を横切り王城に向かおうとしていたところアゼデレアに偶然出会った。


「名前を覚えて下さっているようで光栄ですわ。ところでそれは何なのですか?」

「ピザというものだ」


 アゼデレアは俺の持つバスケットを指差して聞いてきた。


「ピザ?聞いたことがないですわね」

「勿論ですよ。エース様が考案したお料理ですから」


 何故か俺の代わりに胸を張って答えるサーシャ。


「あらあら、そうなのですね。流石ルシフェルスに選ばれたというだけの事はありますわね」

「当然です。私のエース様は誰よりも素敵なのですから」

「ここまで慕ってくれる副官がいてルシフェルス卿もお幸せですね」


 微笑む彼女。

 まぁ、確かに罵倒されるよりは嬉しいが。


「あんたは副官はいないのか?」

「いますけど少し癖の強い人でして、今は置いてきています」

「1人で大丈夫なのか?流石の貴族街とは言えあんたは重鎮だろ?」

「アゼデレアは防御性能だけで言うならルシフェルスの刃を止められると言われています。大丈夫ですよ」


 ふふふと上品に笑う彼女。

 何から何までが上品だ。

 そのせいで俺と年齢は変わらないだろうに大人に見える。


「さて、お時間を取らせてしまいましたね」

「いや、別に構わないんだが。それより今から王様のところに行くがあんたもどうだ?」

「御用は?」

「いや、このピザを食べてもらおうかなと思って」

「なら私も同行しましょう」

「ん、あぁ」

 

 食べたいのかどうかは分からないがそう口にする彼女。

 一緒にシドの所に行くことにした。

 さて、どんな感想をくれるだろうか。

 これを機により親密になれればいいが。

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