十八話 休憩
会議も終わったので待たせていたルーナたちのところへ迎えに行く。
「凄かったですよ!エース様!」
俺の帰りを控え室で待っていたルーナ達だったが連れ出すなり3人が抱きついてきた。
「かっこよかったです!」
「そうだよね。1人で2人を相手にしてバサバサ戦ってたのすごいかっこよかったよ!」
そう褒められてしまった。
そんなにすごい事だったろうか?
自分としてはやはりやる前から分かっている攻撃を避けてそれに対応するだけなのでそんなに凄いことだとも思えないが。
「私がエース様と同じスキルを持っていても絶対あんな風に動けませんよ。やっぱりすごいですよね!」
飛び跳ねるサーシャ。
その顔には尊敬が浮かんでいるように思う。
「ふむ。そうだろうか」
「そうですよ。あれを見て思いましたよエースに勝てる存在はいないって」
シエルもそう言ってくれる。
ふむ。そこまでか。
悪い気はしないな。
「それより帰ろうか。今日はいいものを食べたい気分だ」
※
家に帰った俺たちはテーブルを囲んでいた。
よし、決めた。
「今日はピザを食べたいところだな」
「ピザ、ですか?」
「ピザだ」
要望を出してみたのだが3人は顔を合わせるだけだ。
「どうしたんだ?」
「いえ、そのピザって何なのかなって」
代表して答えたルーナ。
なんだと?ピザを知らないのか?
「ピザって知ってますか?」
「知りませんけどそんな料理を知っているなんて博識ですよねエース様は」
シエルとサーシャの会話。やはり知らないらしい。
それよりピザを知らないのだな。
「ピザって何なの?」
「俺も詳しくは知らないんだがとりあえずパン屋に行ってみないか?もしかしたらあるかもしれないし」
一応パンに近しいものという知識もあるのでもしかしたらあるかもしれない。
「エース様でも詳しく知らない料理なんて何だか神秘的ですしワクワクします。私も食べてみたいです」
「俺も食べてみたくてな。でも、そうか。みんなは知らないのか」
ふむ。
とりあえずこの近くにある店を全部回ろうか。
※
そうしてパン屋以外も含めて回ってきたのだが。
一軒もピザを置いている店が見つからないという酷い有様だった。
「こんなに、何処も置いてないなんて思わなかったな」
「ほんとだよね。ほんとにあるの?その料理」
「失礼な。エース様があると言ったらあるのですよ。エース様がゴブリンは四本足だといえば四本足で歩くんですよ!」
「ねぇ、この熱狂的な信者はとりあえず置いておいてそのピザというのは何処で知ったものなの?」
「本だな」
ルーナの質問に答える。
そうだ。何の本かは忘れたがかなり昔に見たことがある本にそんな料理があったのだ。で、今日思い出して食べてみたくなったのだが。
そうしてこの近くにあった最後の1軒を訪ねることにした。
そのピザとやらもパンに似ているとの記述があったのは覚えてるしあっても不思議ではないはずなのだが。
果たしてあるだろうか。
「いらっしゃいませー」
俺達が店の中に入るとそう声が飛んできた。
うん。
パンの香ばしい匂いが俺の鼻腔をくすぐる。
と、そんなことはどうでもいい。
「一つ聞きたいのだがここにピザというものは置いているだろうか?」
俺はすぐ様カウンターに近付いてそう聞いてみた。
「ピザ?いえ、置いてないですね」
しかし、やはりそんな返答を貰う。
残念ながらここにもなく、今までと同じ有様となってしまった。
「なら、仕方ないな。施設を貸しては貰えないだろうか?」
「施設を、ですか?何故ですか?」
「自分で作るからだ」
店員の質問に当たり前のように答える。
何処にもないのなら自分で作るしかないだろう。
「えぇ??!!!!!」
この場にいた全員が悲鳴にも似た声を上げたがどうしてだろう。
※
結局少し無理を言い厨房と窯を使わせて貰えるようになった。
「本当にするんですか?」
「本当だ。俺に二言はない」
「流石エース様です!お料理も出来ちゃうのですか?」
「初めてだがな」
料理をするのはこれが初めてだが問題ないだろう。
そう思ってとりあえずスキルを使ってみた。その時。
「うぉぉぉ?!!!何だこれは!!!」
「ど、どうしたんですか?!」
サーシャが慌てて俺の隣に来た。
「何処か痛いんですか?何処か切りましたか?舐めますから部位を!」
「違う!そうじゃない!」
「違ったんですね。なら良かったです」
天使のように微笑むサーシャ。
しかしそれどころではない。
「これを見よ、って俺しか見れないんだったな」
首を捻っているサーシャだが言ってから思い出した。
この視界にあるウィンドウは俺にしか見えないことを。
「いや、何気なくスキルを使ったんだがな」
「はい」
「この小麦粉を見たんだがな。説明欄にピザの材料にすることが出来ると書いてあるのだ」
このように俺のスキルは何が何に使えるのかを教えてくれる。
「本当ですか?!ピザは本当にあったんですか?!」
「あるんだよ。ピザは」
そんなことを話していたらウィンドウに変化が起きた。
「ん?」
視界の端にある単語の【ピザ】をより詳細に見られるようになっていた。
ので何となく直感で更にウィンドウを開いた。
すると
「これは………分かったぞ作り方が!」
「ほんとに?」
ようやく俺の横に来たルーナ。
すごいぞこのスキル。自動で作り方を教えてくれている。
若返りの薬も教えてくれたから実はそうではないかと思ったが本当に教えてくれるとは。
「あぁ。そこに器があるだろ?それとこれとこれとこれだ。これを入れてその後に混ぜ合わせてくれ」
材料を適当に取るとルーナに押し付けた。
「ま、任せて」
いきなりのことに驚いているようだがちゃんと受け止めてかき混ぜ始めている。
「シエル暇か?」
「はい?」
暇なようだな。
「そこの窯に火をつけてくれ」
このパン屋に元から備え付けの窯を指さす。
「何だか分かりませんが分かりました!」
一応言うことを聞いて付けてくれている。
「サーシャ。野菜はあるか?」
「はい。どうぞ!」
元々頭の中で覚えていた材料は既に調達しておいたのでそれを受け取るとソースを作り始める。
「完璧だ………」
暫くして出来上がったソースを眺めて呟く。
これ以上ないソースが完成した。
「こっちも終わったよ」
そう言ってルーナが手渡してくる器を受け取ると中の物体を取り出して平にしていく。
そうしてから適当に具材を乗せる。
チーズ、野菜、あと適当に色々。それからソースをかけるとそれを急いで窯に入れた。
「ふぅ………任務完了だ」
一仕事終えた。後は結果が出るのを待とう。