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十七話 勝負の行方

 シドに案内され闘技場まで来ていた。

 普段は騎士団の訓練に使われる場所。

 そこの隅でルーナ達と話をしていた。


「エース様!エース様!勝ってくださいね!」

「何を言ってるのよエースが負けるわけないよ。それより敵の心配をしてあげないと」


 サーシャの言葉に何故かそんなことを言っているルーナ。

 しかし今回ばかりは俺の心配をして欲しいかもしれない。


「今回は少し厳しい試合になりそうだがな」

「どうしてなんですか?」

「俺は今回モンクではなく、ナイトとして戦うからだ」

「えぇ?!」


 そう答えると3人が驚いた。


「どうしてなんですか?」

「考えてもみろ」


 シエルの質問。

 ちゃんと説明したから分かってくれると思ったのだが無理か。貴族たちの集まる方を指さした。


「あそこにはルクスブルク、つまり俺の親父もいる。俺は剣技がダメだと言ったよな?だから格闘術に逃げた」

「?」


 それでもみんな分からなさそうなので続きを口にする。


「俺の剣技を親父は覚えていないはずだが、俺の格闘術をあいつは覚えている可能性がある。いくら高速戦闘を行うとは言え、奴はその道のプロ。俺の動きの癖を覚えている可能性もあるしそれから正体がバレるかもしれない」


 多少は誤魔化せるだろうがどこまで誤魔化せるかは分からない。

 ならば安全性を選択してナイトが賢いだろう。


「今バレるのはつまらない」


 そう理由を説明した時だった。


「我が剣!始めるぞ!」

「と、まぁそういうわけだ。たまには俺の応援でもしてくれ」


 王に言われて駆け寄ることにした。

 開始位置には既にシルバとペルセウスの2人が立っていた

 シルバは何も持たずペルセウスは剣を持っている。


「今日はモンクではないのですね」

「あぁ。ルシフェルスらしく剣でな」


 ペルセウスと小さな声で短く会話を交わす。

 シルバは無言だ。

 何となくこの人らしいといえばこの人らしい。

 初対面の印象が寡黙そうな人だというものだから不思議な事は全くない。


「3人とも準備はいいか?」


 審判であるシドが俺たちにそう問いかけてきた。が、誰も何も言わない。

 それから準備は出来ているということだろう。


「なら試合開始だ!」


 多くの貴族達が見守る中御前試合は始まった。


「せい!」


 一番最初に動いたのはペルセウス。

 キンキンキンキンキンキン!!

 俺の剣でペルセウスの一撃を防ぐ。

 そんなことが何度も行われていた。


「中々やりますね!ルシフェルス様?!モンクだけかと思っていましたがこれは」


 褒めてくるペルセウスの剣を流す。


「その時」

「凍れ」


 今まで何もしてこなかったシルバの遠距離攻撃。


「そこだ」


 相手の位置に攻撃を発生させる氷魔法だった。

 ガシャーン!そんな音が鳴り響きながら魔法が霧散する。

 魔法が発動する前に打ち砕いたのだ。


「何?」


 それを見て動揺を隠せないらしいシルバ。

 ガキン!

 その後に援護を前提として切り込んできたペルセウスの刃を盾で受け止めるとよろめいたのでその隙を逃さず剣を突き入れる。


「我が刃を刻め!」

「ぐぅぅ!!!!」


 いくら鎧の上からと言っても思い切り突いたのだ。

 その衝撃で地に足をつけた。

 あとはシルバだ。


「燃えろ」


 シルバが飛ばしてくる炎弾それは発動前には潰せなかったため、しっかりと形を保ったまま俺に向かってただ真っ直ぐに突き進んでくる。


「そこだ」


 しかし、それも弱点を突くことで弾を殺す。


「馬鹿な………完成した魔法にすら手を出せるのか?」


 呟くシルバ。

 そのまま懐に入ると剣の切っ先をシルバの喉元に突き付けた。


「勝負あったな!よくやった我が剣よ!」


 シドが1人大はしゃぎしている。

 どうやら俺が勝ったことがそんなに嬉しいことらしい。

 それにしても剣を使うのは久しぶりだが何とかなって良かった。


「あのシルバ様、ペルセウス様の二人がかりでも一方的にやられるだと?流石ルシフェルス卿と言うべきなのか?」


 今の試合を見た貴族達がざわめいている。

 それにしてもペルセウス達はそれだけのことを言われるくらいに強かったらしいな。


 そんなことを思いながら自然な動作でギルバートとハンニバルの方を見たがどちらも先程見せていた顔と変わらないものだった。

 どうやら気付かれてはいないように思える、よかった。


「ルシフェルス様。手合わせ頂きありがとうございました」


 俺が王の近くに寄ろうとしていたらペルセウスがそう声をかけてきた。

 にしても戦ったことで感謝されるなんて今までになかったな。


「こんな俺でよければまた相手になるから声をかけてくれ」

「宜しいのですか?」

「いいよ」

「では、また声をかけさせて頂くと思います」


 そう言いペルセウスは下がっていった。


「流石はルシフェルスと言ったところか」


 入れ替わるようにやってきたシルバ。


「正直な話をするなら手も足も出なかった。予想していたとはいえ、ここまでやられると悔しさはある」


 そう言ってからシドに視線を向けた。


「申し訳ございません。手も足も出せませんでした」

「別に構わんよ。お前が我が剣に勝てるとは思っていなかったからな」

「では………俺はもう必要ないですね」


 そう言い去っていこうとするシルバ。


「おい、待てどこへ行くつもりだ」

「貴方の傍に俺は不要でしょう」

「初めからお前に戦闘面で期待はしていない」

「え?」


 そう言うとシルバは立ち止まった。


「お前は俺の右腕だろう。手となり足となり動くのがお前だ。剣や盾になるのはお前ではない」

「それは………」

「残れということだ。マヌケ何を勝手に職務を放棄しようとしている」

「シド王………ありがとうございます」


 涙を流して頭を下げるシルバ。

 兎に角俺のせいで2人の関係は壊れなかっただけよしとしようか。



 御前試合を終えて会議室に戻ってきた俺たち。


「というわけで今回の会議はこれにて終わりとする」


 シドの言葉によって今日の会議は終わりを告げた。


「何か質問がある者はいるか?」


 特にはないらしい。

 暫くは俺も貴族たちを見ていたが誰も声も手も上げない。

 予定通り会議はこれで終了となった。

 貴族達が部屋を出ていく。それを見送り俺と王だけがこの部屋に残った。


「エース」


 そんなことを考えていると声をかけられた。


「良からぬ虫が我がシュノーレを徘徊しているようでな」

「虫と言いますと?」

「虫は虫だ」


 ギルバート達の事だろうか。

 奴らがロクでもないことをしでかそうとしていることは分かる。


「その調査をお前に任せたいのだが引き受けてくれるか?」

「勿論」

「流石だな。だがくれぐれも気をつけてくれ。虫は虫だが手強そうなのでな。相手が誰であろうと遠慮はいらない。叩き潰してやれ」

「分かった」

「何かあれば力を貸す。言ってくれ。俺はお前を高く評価しているのだ。頼むぞ」


 その時扉の向こうから声が聞こえた。


「シド王そろそろお時間です」

「やれやれ、休ませてはくれないようだな。お前も今日はもう帰っていいぞ」


 その言葉に頷いて俺も彼に続く。


新作を書き溜めています。

準備ができたら投稿するつもりなのでよろしければそちらも楽しんでいただければと思います。

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